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神様はそこにいる  作者: 村崎羯諦
第二章
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「嘘発見」の魔術

 半ば強引に先導されながら、俺は平島と黒服二人組の拠点だとかいうアパートにやってきた。そのアパートはどこにでもあるような外見をしており、俺の家から意外と近い場所にあった。なんでも、このアパートのうち二室を組織が拠点兼住まいとして借りてくれているらしい。一室が黒服二人組の住まい兼会議室、もう一室が平島の住まいということらしい。

 平島はそのまま俺を黒服二人組が住むアパートの一室へ案内した。玄関チャイムを鳴らし、平島はインターホン越しに俺が来ていることを手短に説明した。少しだけ沈黙が流れた後、部屋の玄関が開き、中から黒服の男のうちの一人が出てきた。その男と平島に続き俺も部屋の中に入る。


「フフフ、どうですか、あっくん。赤川さん。初任務ながら、これほど早く成果を挙げてやりましたよ。どうです、重要参考人である水前寺愁斗をここに連れてきました」


 六畳ほどの狭い部屋に俺たちが入るとすぐに、平島は玄関を開けた男、そして部屋の隅で壁に寄り掛かりながら座っていた男たちに誇らしげに話しかけた。

 しかし、先ほど玄関を開けた男は軽く頭を押さえながら大きくため息をついた。


「確かになぁ、俺たちはまずこいつを足掛かりに調査を進めるって言ったよ。そして、これだけ早く接触できたこともまあ、良しとしよう。……だけどな、ほのか。わざわざこいつを俺たちの拠点に連れてくる必要はないだろ? 逆に俺が学校近くの公園にでも行って、そこで会えばいいだけの話だろうが。こいつはひょっとしたら牧場の協力者なのかもしれないんだぜ」


 予想だにしなかった返答に対し、平島は目を見開きながら答える。


「た、確かに。あっくんの言う通りかも」


 平島の言葉に男はさっきより大きなため息をついた。どうやらこいつが噂のあっくんというらしい。平島から呼ばれているかわいらしいニックネームには似つかわしくない、少し怖そうな雰囲気を醸し出してはいるが。

 そして、壁によりかかっているもう一人の男が赤川か。赤川は不愛想な表情でさっきから俺をにらみ続けている。


「とにかく、今さらこいつのドジをどうのこうの言う暇はない。経緯はどうあれ、お前は俺たちが追う牧場の重要参考人だ。とりあえず、話を聞こうか。おい、ほのか。こいつに座布団を出してやれ」


 そう言われると平島は奥の部屋に入っていった。座布団を取ってくるのだろう。

 目の前の男、あっくんは床に腰かけ、俺にも座るように言った。言葉遣いは悪いが日頃からこういう口調なのだろう。しかし、不思議と悪意や高圧さは感じられなかった。立ちっぱなしもなんなので、俺も言われるがままにとりあえず床に座ることにした。


「それにしても、よくここに来たな。俺たちが敵かもしれないのに」

「……平島が勝手に話を進めて、ここに連れてきただけだ」


 俺の言葉にあっくんは静かに笑った。おそらく平島は仲間内でもあの性格のままなのだろう。


「紹介が遅れたな。俺は嵐田、そしてあっちでしかめっ面してんのが赤川だ。お前のことは承知済みだから、お前の自己紹介はいらない。それに、親睦を深めるための雑談もするつもりもない。早速本題に入らせてもらおう。水前寺愁斗、お前は牧場風太郎を知っているな?」


 俺はうなづく。

 嵐田は俺に具体的に牧場との出会いを尋ねた。俺は神力のことは伏せつつ、できるだけ正直に牧場との関係を話した。嵐田と赤川は所々細かい点を確認するだけで、基本的には黙って俺の話を聞いていた。俺は霧島神社での死闘の手前まで話し終えた。


「そのあと、牧場の行方は知らない。俺が家に帰った時にはもうどこかに行ってしまってたし、その後になにか連絡があったわけではない。……そもそもどうして牧場が俺とあそこまで親しくしようとしていた理由もわからない」

「なるほどな。他に言い残したことはないか」


 俺は首を横に振る。すると、ちょうどその時平島が座布団を持ってこっちの部屋に戻ってきた。俺は平島から座布団を受け取り、下に敷く。

 平島は座布団を渡し終えると、嵐田の右斜め後ろにちょこんと腰かけた。どうやら、平島も俺に対する尋問を一緒に聞くつもりらしい。


「な、なにかわかりましたか、あっくん?」

「まだ、尋問の途中だ。……それとほのか、俺のことをあっくんて呼ぶのはやめろ。とにかくだ、ほのかも戻ってきたことだし、もう一度聞いておこう。嘘をついている可能性だってあるしな。水前寺愁斗、お前は牧場の協力者じゃないんだな?」


 その質問はもっと最初のほうでしておくべきものじゃないのかと疑問に思いつつも、俺はそれはない、と簡潔に言い放った。


「水前寺くんは嘘なんかいっていませんよ!」

 平島は自信満々に言う。いったいどんな根拠を持って、そうきっぱりと断言するのだろうか。

 しかし、嵐田も俺のきっぱりとした態度か平島の自信ありげな態度かどちらを信用したかはわからないが、嵐田はこれ以上俺のことを牧場の協力者として疑うつもりはないようだ。


「まあいい。牧場とのことはこれくらいにして、だ。俺たち、特に俺と赤川はお前にもっと聞きたいことがある。なんとなく察しはつくよな。一か月前、俺と赤川が突然お前の目の前に瞬間移動しちまったあの出来事のことだ」


 嵐田は俺の顔を鋭く覗き込む。隅で黙っていた赤川も、俺に話しかけてきた。


「俺たちは牧場風太郎とその直前まで行動していた。しかし、気が付けば牧場とはぐれ、俺たちはまったく違う場所に一瞬のうちに移動していた。そして、そのすぐ近くにいたのが水前寺愁斗、お前だ。ただ、近くにいただけならまだいい。そのあとが問題だ。

 俺たちがお前にここがどこか尋ねようと近づいて行った時、お前はそばで倒れていた女の子の手を取り、一目散に逃げていった。そして、俺たちも自分でもなぜそのような行動をとったのかわからないが、無意識にお前を追いかけていた。まあ、結局まかれてしまったがな」

「あの時のことはよーく覚えてるぜ。いくら重い荷物を持ってたとはいえ、俺たちがいとも簡単にガキどもにまかれちまうなんてな。あの時はいろんなことがおかしかった。お前も、俺たちも。そして、牧場風太郎もだ」


 嵐田の言葉にうなづきながら、赤川は話を続ける。


「俺がその時、牧場と電話で話していたが、牧場は俺たちのことなんてお構いなしに、ひたすらお前と女の子のことについてしつこく聞いてきた。そして、俺から話を聞き終えると同時に音信不通だ。やつが俺たちのことを邪魔だと思っているのは見え見えだったがな」


 いくつか新しく判明したこともあったが、基本的に牧場が一か月前に話した内容と合致していた。この二人はわけがわからぬまま、俺たちがいたあの場所に瞬間移動させられたのだ。


「まあ、俺たちの話はこれくらいにしてだ。お前に質問がある。なぜ俺たちがお前がいる場所に瞬間移動したのか、お前はその理由を知ってんのか?」


 俺は一瞬言葉に詰まった。しかし、返事は決まっている。

 今、こいつらを含む組織の人間は、牧場が追う神力の価値を知らない。もし俺がここでそれは神力のせいなんですと答えれば、最悪の場合、牧場探しなんかほったらかしで、組織は神力探しに総力をつぎ込むことになるかもしれない。

 こいつらに、神力の情報を与えることは絶対に避けなければならない。


「残念だが、嵐田。俺は理由なんて知らない。勝手にお前らが目の前に現れただけなんだ」

「あっ!!」


 俺の言葉が言い終わるやいなや、霧島が突然声を発しながら立ち上がった。


「ど、どうしたんだ、平島。いきなり立ち上がって」

「う、嘘です! 水前寺くん、嘘ついてます」

「なっ!?」


 平島の唐突な指摘に俺は思わずたじろいでしまった。そんな馬鹿な。いったい何の根拠があってそう言ってるんだ。

 俺は何とかして平静を取り戻そうとしたが、すでに嵐田は俺の動揺ぶりをしっかりと見抜いていたようだった。


「なるほど、嘘か」


 俺は苦しいと思いつつ、慌てて否定する。


「ち、違う。理由なんて知らない!」

「あーーっ!! やっぱり嘘ついてます、水前寺くん!!」


 平島が俺を指さしつつ、再び叫んだ。

おかしい。何の根拠があって平島は俺の言葉を嘘だと断言するんだ。


「フフフ、動揺してますね、水前寺くん。私はまだ先ほどの件を忘れたわけではないですからね。あの時の恨み、たっぷり晴らさせてもらいますよ」


 平島は混乱極まる俺をあざ笑うかのような表情を浮かべた。


「先ほどの件とやらがいったい何なのかは知らないが、とにかく質問を続けさせてもらう。お前は俺たちが瞬間移動した理由を知っている。その理由とやらには、牧場風太郎が探していた神力が関わっているのか?」


 嵐田は俺を強く睨み付ける。俺は一瞬たじろいだが、これ以上へまをやらかすわけにはいかない。


「も、黙秘権を行使する!」

「ず、ずるい! そんなの卑怯ですよ、水前寺くん! 正々堂々とイェスかノーかで答えてください!」


 嘘を見抜かれるっていうのに、ずるいも卑怯もあるか。俺がそう平島に食って掛かろうとしたその時、玄関のチャイムが突然鳴った。「新聞かなんかの勧誘だろう」と嵐田が言うと、平島が率先して立ち上がり玄関に駆けていく。

 なんだかわからないがとりあえず助かった。


「ちゃんと、質問に答えてくれなきゃ困るぜ、水前寺くん」

「俺は牧場風太郎について話に来たんだ。それ以外の質問には答えない。それと、さっきの平島が俺の嘘を見抜いたこと。もしかして魔術を使ったのか?」

「さあ、どうかねぇ」


 嵐田は声を押し殺しながら笑った。どうやら、正解らしい。

 しかし、すると妙だ。平島が嘘を見抜く魔術を使えるのなら、なぜもっと早く使わなかったのだろう。

 俺が平島と体育館横の踊り場で話をした時にも俺は嘘をついたが、その時平島は俺の嘘を見抜けなかった。魔力の消費とやらが関係して、ずっと使い続けることができず、大事な場面でしか使わなかったからか。いや、大事な場面ならもっと他にもあっただろう。体育館横での会話の時や、ついさっきの牧場に関して話した時とか。

 しかし、俺の考えはある聞き覚えのある声によって中断されてしまった。


「ねぇ、ここに水前寺愁斗って男の子来てない?」

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