不思議な少女
「行ってきます!」
俺は家にいる親父にそう言うと、慌てて玄関から外へ飛び出した。
急がなければ遅刻してしまう。
いつも通りの時間に起き朝食も同じ時間に食べ終わったのだが、机の引き出しに入れておいたはずの進路調査票が今朝になって突然消えてしまっていることに気付いたのだ。調査票は今日までの提出だったため、俺は死にもの狂いで探す羽目になり、結局違う引き出しの奥に突っ込まれていたのを見つけることができたものの、家を出る時間が大幅に遅れてしまった。
全力で走ってぎりぎり間に合うかどうかといったライン。俺は見慣れた通学路を全力で走っていく。高校まであと半分といったところで、俺は赤信号に捕まった。俺はポケットからスマホを取り出し、時間を確認した。しかし、表示された時刻を見て思わず言葉を失う。まずい、このままでは絶対に時間内にたどり着けない。
最近運動をしていなかったからか、以前よりも自分の足が重く感じ、これ以上速く走ることもできなさそうだ。
仕方がない。
俺はすぐ横にあった路地を通り、いつもの通学路からは外れた、さらに大きな通りへ出た。知っている人は少ないのだが、実はこの大通りを使うことで学校までの道のりを大幅に短縮することができるのだ。人通りの多さから俺もいつもはさっきの道を利用しているが、今日は四の五も言ってられない。
通勤通学中の人々の間を這うように進み、俺は一直線に学校を目指した。
しかし、その大通りを行く途中俺はある奇妙な光景を目にし、思わず走る足を止めてしまう。
向かい側の歩道にある自販機のすぐそばで、一人の女の子がしゃがみ込みこんでいたのだ。遠くからなのではっきりとしないが、その女の子は俺と同い年でこの通勤通学の時間帯には珍しく私服を着ていた。それだけでも十分に奇妙だが、さらにその女の子は、何かチョークのようなものを使い一心不乱にコンクリートの地面に何かを書きつけていた。
人通りの多い、時間帯にいったい何をやっているんだろう。その上、俺と同い年くらいのくせして地面に落書きだなんて。誰かに通報されても全くおかしくない。
変わった人間もいるものだとのんきに考えたが、すぐに自分が遅刻ぎりぎりであることを思い出し、再び学校に向かって走り出す。俺は大通りを走りながら、途中一瞬だけ後ろを振り返ってみた。その女の子はその時もまだ地面に何かを一生懸命書き続けていた。




