二章終了時点での登場人物と用語集
表記の意味
◯←大項目
▶︎←個々の小項目
▷←上記の▶︎に従属する項目
◯設定用語
▶︎十三王会議
天界における最高意思決定機関。
その人員は全天使の中で最も格が高い王称の天使によって構成される。
天界開闢当初は十三人の王がいたが、人類王を初めとする四王が天界に対する抑止力として地上に降りてからは九人、百四十五年前に鎮魂王が簒奪王に殺害されたのちには八人に数を減らし、先日に発生した泰然王の変によって泰然王と落陽王以外の王は悉く殺害された。
その後、泰然王直属の卿天使が王に格上げされたため、現在の十三王会議は総勢七柱で構成されている。
▶︎私立綾媛女子学園
設立2005年、総敷地面積65ha。大体東京ディヅニーランドと同じ大きさ。
東京湾上のとある人工島上に建設された小学校、中学校、高等学校、大学などの教育機関及び諸研究機関の総称。戦前戦後の日本経済を牛耳る興天財閥が諸経費を全負担しているため、当学に通う学生は例外なく無償で教育を受けることが出来る。
▶︎統合学僚長
綾媛女子学園の内部におけて児童会、中高生徒会、学生自治会の四組織を統括し、理事にも匹敵するほどの強大な権限を持つ実質的な学園の支配者。『綾媛百羽』による作戦行動も含め、学園内におけるありとあらゆる活動は、その認可なしに行うことは出来ない。
現在の統合学僚長は高等部三年の陶南萩乃で、五年前から理事推薦による再選を続けている。
▶︎止まり木
綾媛女子学園の広大な敷地のうち、北側四分の一を有する巨大なレジャーエリアの俗称。カラオケやショッピングモールといったちょっとした娯楽施設は当然のこと、ゲーセンや大学生用の居酒屋といった本来教育とは相入れそうにない施設も充実している。
学費のように無料とまではいかないが、これらの施設利用にかかる費用も一般のそれと比べれば低価格に抑えられているため、学内に寮室を持つ生徒はほとんど島の外へ出ることがない。
▶︎『綾媛百羽』
人類王直属の戦力として使役される元綾媛生の隻翼達。
百羽はそれだけ構成員の人数が多いことから付けられた名称であり、実際の数は売り文句の百羽を遥かに超えた数であるとされる。
第一位から第五位までのヒスカルト=ジュークレイ、陶南萩乃、執行麗、秦漢華、松下希子のそれぞれが自我を持つ一方、その他の隻翼達は人類王によって入力された命令に黙って従うのみであり、自身が便利な手駒として利用されていることにも気付いていない。
また上記の五人以外は権能を有しておらず、戦闘には性能が著しく劣化させられた北欧由来の擬似聖創を用いる者が多い。
▶︎『叡智の塔』
綾媛学園のほぼ中心に位置する巨大な塔。
その内部は人類王の手により、外見上の体積を遥かに越える広大な異界と化している。またその内部には、敷地内の人間に洗脳を行うための鐘や、生徒を天使化させることを目的とした実験室など、人類王が学園を支配するために重要な機構が多く内在している。
▶︎天使創生術式『Sophia』
綾媛学園が所有する大規模な術式で、『天骸』への適性を持つ綾媛生を天使化させるために用いられる。
原則として天使化した少女の多くは、ろくに権能を発現することも出来ない隻翼どまりである。しかし、一部の特に適性が高い者には、人類王から六大天使の因子が付与されるため、卿天使に匹敵する強大な力を得ることができる。
術式を構成する記号の核は預言者イリヤによる火の戦車の故事であり、その構造は天界における量産天使創生機関のそれと非常に酷似している。
▶︎『火の戦車』
旧約聖書に登場する預言者エリヤが、火の戦車に乗って天へ昇り、大天使サンダルフォンとなった故事を記号化したもの。
この記号は人を天使に変える術式を組む際には最早必須の概念となっており、実際綾媛女子学園の有する天使創生システム『Sophia』においても術式の中核を為している。
▶︎黒星
樋田と筆坂が普段使っている拳銃。
旧ソ連開発のトカレフTT-33を国産化しようとした中国によって製造され、暴力団を中心に日本国内にも広く普及している。
正式名称は黒星54式、装弾数は八発。
構造が単純で耐久性に優れる一方、精度は劣悪。また安全装置が省略されているため、銃自体が常に暴発の危険性を孕んでいる。
◯登場人物
▶︎樋田可成
目が細すぎる卑屈陰険短気のツンデレヤンキー。
東京都三鷹市出身の十七歳。176cm・70kg。
▶︎筆坂晴(アロイゼ=シークレンズ)
顔だけなら100点のポンコツ鬼畜ロリ(合法)。
天界出身の百四十五歳。143cm・39kg。
▶︎松下希子
天パで守銭奴でサイコレズなゲスロリ(違法)。
福島県三春町出身の十二歳。148cm・42kg。
やる気のないジト目に覇気のない喋り方とどこかダウナーな印象が強い少女で、実際そのつっけんどんな性格からか隼志以外に友達は一人もいない。趣味は野球観戦と釣りというJCの皮を被ったおっさん。
一人称は松下。基本的にですます調の敬語で話すが、言葉の節々は結構口汚かったりする。
また人類王の率いる『綾媛百羽』の第五位であり、大天使サンダルフォンの因子をその身に宿す。所有する術式は権能の『我が主は神なり』と、聖創の『虚空』。
▶︎隼志紗織
松下の幼馴染で親友。車椅子で生活している。
福島県三春町出身の一二歳。152cm・44kg。
可愛いリボンが可愛く、髪もサラサラで可愛い。心優しく温和で常識的な性格であるためか、筆坂や松下といった畜生共に振り回されることが多い(可愛い)。しかし、辛い過去を乗り越えた経験からか芯は強く、実際いつも姉貴分ぶってる松下よりも精神年齢は高いと思われる。
▶︎秦漢華
赤髪赤眼のメンヘラチャイナ娘。
長崎県長崎市出身の十六歳。169cm・62kg。
基本的に根暗かつ攻撃的な性格だが、人を殺すことが出来ないなど一応人として最低限の道徳は弁えている模様。
古今東西を問わない数多くの武術を修めており、こと近接格闘においては、かなり喧嘩慣れしている樋田に引けを取らない程である。女性にしてはかなりの筋肉質で、服の下にゴリラを隠し持つ。
大天使ウリエルの因子を宿し、『綾媛百羽』内における序列は第四位。所有術式は権能の『殲戮』に、聖創の『盾装不動』と『鎧装不動』。
▶︎陶南萩乃
感情の薄い冷血ロボット女。
山口県山口市出身の十七歳。
淡々と喋り、淡々と行動し、淡々と任務を遂行する。ただそれだけの存在。
最早人類王に対する絶対的な忠誠心くらいしか人間らしい心はなく、本来は判断力に優れた聡明な人物であるにも関わらず、自らでモノを考えることはほとんどない。
『綾媛百羽』内における序列は第二位、所有術式は不明。
▶︎ヒスカルト=ジュークレイ
未登場。『綾媛百羽』第一位。
▶︎執行麗
未登場。『綾媛百羽』第三位。
松下が名前を挙げた『絶対に逆らってはいけない四人の一人。松下曰く綾媛で一番危険な女。
▶︎里浦響子
筆坂・松下・隼志の所属する中等部普通科一年Q組の担任教師。
明るい性格で生徒からはそこそこ人気があるが、空気の読めなさと頭の悪さのせいか同僚からは嫌われている。
▶︎樋田可英
樋田可成の父。戦前戦後の日本経済を牛耳る興天財閥の代表取締役会長。半月前に首を切り落とされた状態で、死亡しているのが発見された。
顔は可成にかなり似ているらしい。
▶︎人類王
天界開闢の折、天界に対する抑止力として地上に残った四人の王のうちの一人。自称教え導く者。綾媛学園で起きた悲劇・惨劇は全てコイツのせい。
まず間違いなく悪人側に属する存在であるが、天界の大勢力に対抗するため樋田達とは一時的な協力関係にある。
◯劇中で使用された術式
▶︎『統天指標』
樋田がその身に宿す特殊体質。
己の『天骸』を上書きすることで、他者の術式の制御権を乗っ取ることが出来る。しかし、基本的に他人に奪った術式は、一度使い切った時点で即座に崩壊してしまう。
▶︎『顕理鏡』
『天骸』の観測・解析・再現を目的とした聖創。量産天使のアロイゼですら習得出来ているように、極一般的で初歩的な術式であるといえる。
▷『百識幻浪舞鏡』
晴の得意とする『顕理鏡』の応用技。
自らの映像を数十体から数百体まで大量に生み出し、その無数の瞳によって対象を多角的に観察することで、敵の弱点や戦闘時の癖などを暴き出すことを目的とする。
▶︎『殲戮』
秦漢華が有する権能。業火を以って神の冒涜者を裁くというウリエルの役割を術式化している。
その能力は距離方角に関わらず、世界中のありとあらゆる座標に爆破の術式を設置することが出来るというもので、理論上は国内にいながらブラジルを爆撃することすらも可能である。
しかし、実際のところ視界の範囲外や遠距離を正確に爆撃することはほぼ不可能で、優秀な観測手の誘導なしには大いに狙いが逸れてしまう。
また手で触れ直接『天骸』を流し込むことにより、個体液体気体を問わずありとあらゆる物質を爆発物に変換することが出来る。
▷無偏差座標爆撃
ありとあらゆる座標を爆撃出来る秦の『殲戮』と、音を司る松下の『我が主は神なり』を組み合わせた戦法。
松下がその異常聴覚で対象の座標を正確に把握することにより、秦は上記のような弱点を無視したミリ単位で精密な爆撃を行うことが出来る。
▶︎霊肉不二
秦漢華の変則高速体術の根幹となる特殊技能。
特殊な呼吸法と練丹術により、本来独立している精神と肉体を一つに統合することで、反射神経や動体視力を本来人では届かない高い領域にまで底上げする。概して何かに例えるならば一種のトランス状態。
▶︎『盾装不動』
圧縮させた『天骸』をバリア状の盾ととして展開する単純な術式。
習得が容易なため使用者もかなり多く、聖創の中では最もありふれたものうちの一つであるも言える。本来は銃弾を弾く程度の機能を念頭に置いた術式であるが、実力者が用いればありとあらゆる攻撃を防ぎ切る無敵の盾にもなり得る。
▶︎『鎧装不動』
圧縮させた『天骸』で全身を膜のように覆うことで、肉体そのものの防御力を高める聖創。『盾装不動』よりかはいくらか『天骸』の使い方が複雑であるが、こちらも極一般的な術式として異能と関わる人間の間には広く普及している。
▶︎『我が主は神なり』
松下希子が有する権能。天国の歌を司るという大天使サンダルフォンの役割を術式化している。
権能の発動中は数百メートル先にいる人間の足音を聞いただけで、その人物の居場所や体格、姿勢などをほぼ正確に捉えられるほどの異常聴覚を発現する。
またありとあらゆる音を操ることが出来るため、他人に聞かれたくない任意の音だけを消去したり、自らの声帯から他人の声を出すことなども可能である。
▷無音殺傷法
松下の得意とする暗殺術。
『我が主は神なり』による動作音の無音化と、『虚空』の瞬間移動能力を併用することで、敵に自らの動きを一切悟らせないまま急所を刈り取ることが可能。
しかし、再出現の際には『虚空』の発動により微量の『天骸』が発生してしまうため、『天骸』の感知に優れた使い手にはあまり通用しないといえる。
▷『踊り狂う音劇波』
『我が主は神なり』の力によって周囲の音を集積、増幅させることで強力なソニックブームを引き起こす技。元はただの音とはいえ、その火力はかなり高く、コンクリート程度のものなら容易に粉砕することが出来る。
▷『濡れ湿る水劇波』
上記のソニックブームによって極度に加圧した水を、ウォーターカッターの要領で打ち出す技。その射出速度は軽くマッハ2を超え、金属すら軽く切り裂くほどの凄まじい威力を発揮する。
▷『奏で殺す惨劇波――暗い日曜日』
対象の精神状態に最も適した陰鬱なメロディを聞かせることで、その死の欲動を爆発的に煽り、半ば強制的に自殺へと追い込む一種の精神攻撃。しかし、死の欲動を正しく増幅させるためには、メロディを最適の角度から最適の音量で最適の時間だけ聞かせる必要があるため、戦闘中常に動き回っているような相手にはほとんど効果を発することが出来ない。
▶︎『虚空』
松下が習得している聖創。俗に言う瞬間移動能力で、自分の体以外も手で触れていれば共に転移することが可能。一度の転移で移動出来る距離、共に転移出来る物質の質量、転移から次の転移までのクールタイムなどは、術者の力量によって大きく左右する。
不動系の聖創ほどではないが、こちらも異能と関わる世界の人間の中にはそれなりに広く普及している。
▶︎『擬似聖創:絶貫天槍』
綾媛百羽の隻翼が使用していた聖創。
北欧神話の主神オーディンのグングニルをベースにしつつ、グングニルが本来有する必中と必勝の属性を省略することで、低コストでの大量生産を可能としている。
即ち、投げたあと手元に戻ってくる機能以外は、普通の手投げ槍とほとんど変わらない。
▶︎『擬似聖創:破滅の枝』
綾媛百羽の隻翼達が使用していた聖創。
グングニルと同じくレーヴァテインは北欧神話に登場する兵装であるが、実際にレーヴァテインがどのような武器であったかは神話内に一切の記述がない。
そのため神話再現の術式と雖も、レーヴァテインの名称が本来杖を意味することと、世間一般に流布する炎と関わりが深いイメージを統合しただけのかなり雑な構造となってきる。
当然神話の再現性は著しく低く、とにかくめちゃくちゃ炎を出す杖以外の能力はないと言っていい。
▶︎『鷲獅子の道』
綾媛百羽の隻翼達が使っていた召喚術式。
『虚空』と似た時空間系の術式をもって、異なる地点にいる使い魔を呼び出すことが出来る。
呼び出される使い魔の正体は、西洋世界に伝わるグリフォン――――ではなく数多の動物の在り方を『天骸』で歪め、天使化したそれらを原子レベルで融合させることにより生み出された一種のキメラである。
▶︎『牛王の道』
綾媛百羽の隻翼達が使っていた召喚術式。
呼び出される使い魔の正体は、西洋世界に伝わるミノタウロス――――ではなく、グリフォン同様天使化させられた動物のキメラ体である。




