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1 転校生という名のフラグ

新たに(といっても、投稿して消しての繰り返しですが、)書き始めました。ルールとかもしっかりしていなくて、拙い文書ですが、よろしくお願いします

第1話 転校生という名のフラグ


【深夜に謎の幻覚が発生。目撃者多数】

 今朝の朝刊の1面である。昨日の深夜に街中で巨大な蛇が目撃されたらしい。目撃者も一人ではなく、数十人単位で目撃されているとのことだ。

 これは尋常ではないとして、学者や警察、マスコミなどが騒ぎ立てていることが記されている。そのせいか、現場周辺に多数の人が集まって居るため近所迷惑だと書いてある。

 同じマスコミなのにマスコミを批判するように書かれていることに苦笑いする。この新聞社はマスコミでありながらマスコミを批判するという真逆なことをしていることで有名だ。そのせいか、読んでいる人も多いと聞いている。


  新聞をめくり次の面へ行こうとした時に、ちょうどホームルームのチャイムが鳴り響いた。辺りを見渡すと喋っていた人は席に戻り、ケータイを弄っていた人はカバンにしまっている。そういう俺も読んでいた新聞をたたむとカバンにしまう。

 やがて、担任の先生が教室に入ってきた。いつもならもう少し早く来るのだが、今日は遅いな。会議が長引いたのだろうか?

 なんだか、いつもと違う雰囲気である。


「起立。礼」


「「「おはようございます」」」


 いつも通り挨拶をする。そういえば、挨拶で立つ時って立ち方がそれぞれ違う。丁寧に椅子をしまって立つ人もいるし、椅子を引いてそのまま立つ人もいる。椅子の横に立つ人もいる。おいおい、そこは通路だ。


「着席」


 挨拶が終わり座りだす。クラス全員で一斉に座るため、音が大きい。まぁ、いつもの光景だ。見た感じではだけど。


「はいおはよう。今日、お前らのクラスに転校生が一人来た。何で馬鹿しかいないお前らなのかは知らないが、気を使って接するように。それじゃあ坂原。入ってくれ」


 若干小馬鹿にされたような話だったが、転校生という言葉でクラスメイト達は驚いたようで騒がしくなっている。

 それは、そうだ。今は6月でタイミング的には少しおかしい。また、新たなクラスの仲間と聞いて、盛り上がってもいるようだ。


 扉が開く音と共に転校生が教室に入ってくる。クラスの全員が注目するなか、入ってきた人物に俺らは目を奪われた。

 入ってきたのは美少女だった。長い銀髪と透き通った青い瞳。巨乳ではないが、貧乳でもない胸。綺麗な体のライン。まるでアニメの世界からきたような彼女に目を奪われる。慌てて周りを見回すと、そこには女子を含めて全員が彼女に注目しているという状況が出来ていた。


「は、はじめまして。坂原さかはら愛里寿ありす……と言います!外国から帰ってきたばかりでふなれな点がありますが、宜しくお願いします!」


 彼女は深くお辞儀をして挨拶する。結構緊張しているようだ。考えてみれば、クラス全員に凝視されているのだ。誰でも緊張するはずだ。だが、挨拶をしても未だにクラス全員が彼女に目を向けている。

 お辞儀を終えて頭を上げた坂原さんは自分に視線が集まっていることに驚き、オロオロし始めた。そんな状況を見かねたのか先生の手が入る。


「幾ら何でも見すぎだ。彼女はハーフだそうだ。確かに名前と違い日本人離れした容姿なのはわかるが、困っているからやめろ。

……まぁ、ともかく仲良くしてやってくれ。じゃあ、坂原は窓際の後ろの席……そうあそこだ。その席に座ってくれ」


 坂原さんは荷物を持つとその席に向けて移動を始める。その席……俺の隣なんですが。そこでやっとクラスの視線が先生に戻った。まだ坂原さんは座っていないが、先生が連絡事項を伝えてくる。


「保健委員は昼休みにごみ捨て場。体育委員は授業前に第一倉庫へ行ってくれ。あと、選択教科説明会の出席確認書類の締切が近い。早くもってこい。以上」


 やや早口に伝えるとさっさと教室を出ていってしまった。それはホームルームの終わりを合図していた。それを待っていたと言わんばかりに坂原さんの机にクラスメイトが集まり出す。


「ねえねえ、どこから来たの?」


「帰国子女ってことだよね?英語ペラペラだったりする?」


「可愛いね!今度遊ばない?」

 いろいろな質問がかけられている。もちろん坂原さん本人はどうすればいいかわからなくてオロオロしてしまっている。この状況では話すのは無理かと思い、俺は諦める。1限の教科の準備を手早く終えると、カバンから新聞を取り出し続きを読み始める。だが、人だかりが邪魔で読みにくい。ため息をつきながら我慢して読み進める。

 クラスはいつも以上に騒がしかった。


◇◆◇◆◇


「……であるからして、始皇帝が万里の長城を築いた理由には様々なものがあります。では、教科書の23ページを開いてみ……」


 4限になり、教科は世界史だ。3限まで坂原さん関連のことで騒いでいた教室も4限になると落ち着きを取り戻していた。

 当の隣の坂原さんはというと、ほとんどやったことない世界史の問題に頭を悩ませていた。それは仕方が無い。最初からやるならまだしも、いまは途中だ。習っていない単語などが出てきて困っているようだ。

 俺はというと、別に困ることは無い。内容的にはまだまだ序の口だし、内容も殆どが頭に入っている。


「うーん……うーん……」


 真剣に悩んでいる坂原さん。世界史は殆どが記憶する教科なので、彼女が努力して記憶するしかない。だが、彼女のノートにはどこを記憶するのかも。授業でしかやらない内容も何も書いていないはずだ。

 幸い、俺はノートを後でも書ける。抜けている内容がないかどうか自分のノートを軽く見たあと、それを坂原さんに見せることにした。


「坂原さん。とりあえず授業中はこれ見てください」


 そう言ってノートを渡す。坂原さんは驚いたような表情をしたかと思うと、それを申し訳なさそうに受け取った。やはり、分からない所が多くて困っていたようだ。


「すみません……ありがとうございます」


「いえ、気にしないでください。困った時はお互い様です」


 坂原さんは軽くお辞儀をするとノートを開き再び授業を受け始めた。分からない所が少なくなったのか、さっきほど困った顔はしていなかった。俺も前を向き直し、教科書を開く。先生の話を教科書に照らし合わせながら頭にいれる。


「はい。では、問題演習をしましょう。プリントを配るので周りと相談しながらでも解いてください。後の時間はこの時間に当てます。あまりうるさくしないでくださいね」


 その言葉とともに先生はプリントを配り始めた。受け取った人達は誰と解くか周りを見回し始める。たいていの人は友人と解くか、一人で解くかだ。一部、坂原さんの机に集まって解く人たちもいる。

 この時間は自由に話すことが出来る。先生はひとりなので関係ない話をしている人たちのことをあまり注意できない。そのためか、自然と喋り声で教室内がうるさくなっていった。

 俺もシャープペンシルを持つと解き始める。問題の内容としては今までの復習のようなものなので、スラスラ解ける。

 全部解き終わりあたりを見回す。大体の人がまだ終わっていないようだ。先生は、教室を回ってわからない人に教えたりしているようだ。すごい早く終わりすぎてしまったか。過ぎた事は仕方ない、教科書を開くと適当に読み始める。

 基本的に俺は教科書が好きである。中身は面白い情報の塊。授業中に暇になるとよく読んでいる。何回見ても飽きない。このことをいうとよく変態と呼ばれる。なぜだ……こんなに面白いのに……


「キーンコーンカーンコーン」


「あ、じゃあそのままおしまい。プリントは次の授業までにしっかりと空欄を埋めておいてくれ」


 チャイムが鳴り響き、4限が終了する。先生は教卓に戻ると教科書やノートなどをまとめてさっさと出ていってしまった。何か用事でもあるのだろう。俺も教科書とノートを机の中にしまうと、カバンの中から弁当を取り出す。


「相川君、ノート貸してくれてありがとうございます。おかげで助かりました」


 不意に目の前にノートが現れた。目線を上げると、坂原さんがいた。


「いえ、ここは進学校で授業が速いから。大変でしょう?お互い様です」


 ノートを受け取ると、鞄の中にしまう。ここは進学校で授業が早い。転校生の彼女には辛いだろう。改めて、昼食を食べようとお弁当に手をかける


「あの相川君。よければお昼一緒してもいいですか?」


 思わず弁当を開けようとした手を止めて坂原さんを見上げた。この俺と?なぜ?


「あ、いや……嫌なら大丈夫です」


 そんな心の声が顔に出ていたのか、坂原さんが、慌てたように付け足した。

 俺は慌てて訂正する。


「いやいや!そんなことは無いです。ただ、驚いただけです」


「む……私が相川君に声をかけるのが意外ですか?心外です」


 ムッとした顔をする。ただの女子ならあざといと思ってしまうが、彼女の場合だと絵になってしまう。一瞬心臓の鼓動が早くなるがすぐに収まる。考えてみれば、こんなのはよくある話だ。


「いえ……自分から話しかけたりしていなかったので」


「そういうことでしたか。でも、相川君は私にノートを貸してくれましたし」


 あのノートに関しては自己満足的なものだ。困っている人を見ると何かをしたくなってしまう。


「ですが、他にもクラスメイトがいっぱいいますよ?自分みたいな地味な人と話してもつまらないだけです。」


「……そんなに私と食べたくないのですか?」


 そんな泣きそうな顔をしないでもらいたい。まるで、転校生の美少女を泣かせようとしている人のように見えてしまうだろう。実際、周りからの目線が悪くなっているのを感じる。

 俺、悪くないよな?


「そんなことは無いです!わかりました、一緒に食べましょう!」


「はい!」


 小さく息をつく。彼女が嬉しそうに自分の席から椅子を持ってくる。周りからの視線もだいぶ弱まった……が、今度は羨望の視線が集まってきている。

 内心ではめんどくさいと思いつつも、弁当を食べることにした。



「そういえば、相川君のノートはすごい見やすかったです。重要な部分はわかりやすく書いてあったので、読むのがすごい簡単でした」


「そうですか。お役に立てたならいいです」


 目の前には可愛らしいお弁当を広げて食べている美少女。周りからは憎しみのこもった目線。俺はいつもお弁当を食べる時には新聞を読むと決めていたのだが……できそうもない。


「相川君のお弁当、なんか色のバランスがあって美味しそうですね」


「そうですか?」


 改めて自分の弁当を見る。栄養バランスを考えた弁当。色とかは別に考えて作ってはいないが、そう見えるのだろうか。


「はい。お母さんに健康に気を使われてますね」


「いや……母はいないので自分で作ってます」


「えぇ!?そうなんですか?」


 俺に両親はいない。家事全般は俺一人で行っている。


「す……すごい……」


「そうでもないですよ」


改めて家のことを考える。


「料理なんて結局はいつかできるようになる必要があるわけです。掃除と洗濯も一緒です」


「女子力が高い……」


 目に見えて坂原さんが落ち込んでいる。何か変なことを言ったのだろうか。一人暮らしする時には誰でも必要になることなのに。

 女子ってよくわからないと考えながら弁当に箸をのばすと、いつの間にか中身は食べ尽くしたようで空になっていた。坂原さんを見るとちょうど食べ終わった頃だった。

 食べ終わった弁当を風呂敷で包み、カバンの中にしまう。坂原さんも弁当を袋の中に入れていた。


「じゃあ相川君……一緒に食べてくれてありがとうございます!」


「いえいえ、こちらも楽しかったですから。」


 坂原さんは笑顔でそう言うと席に戻っていった。それを機会とばかりに、一気に人が集まっていく。思わず苦笑いしてしまった。

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