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第9章:告白

隼人は“Dwarfs”で開店準備をしながら、未来の事を考えていた。


なぜ、あんな事をしたのか……。


やけ酒を飲んでいた未来に付き合うように飲んでいたが、あんな風に抱きしめるような事までした自分に驚いていた。


未来に村木の事で忠告したのもそうだ。


いつもなら他人の恋愛なんかに興味などないし、首を突っ込む気などさらさらない。


二股をかけられてるなんて、男を見る目のない方が悪いと隼人は思っていたし、 普段未来の事を煩わしいとしか思っていなかったが、あの時だけは優しく抱きしめてやりたい気分になったのだ。


そんな自分の行動に理由を見つけることができないでいた。


酒を飲んだせいかなと考えていると、店の扉が開き美香が入って来た。


「隆さんいるかな」


美香は辺りを見渡しながら言った。


「隆さんなら今、店の裏にいますよ」


「そう、ありがとう」


それだけを言うと美香は店を出ていった。


しばらくして隆が店に入ってくると、隼人の肩をポンと叩き


「まだ、店の裏にいるぜ。行ってやれよ」


隼人は促されるように店の裏に行くと、そこでは美香が下を向いて泣いていた。


「……美香さん」


隼人が遠慮がちに声をかけると美香はゆっくりと顔を上げた。


「……振られちゃた……」


声を掛けたのが隼人だとわかると、小さく微笑みながら言った。


その笑顔はとても切なげで、隼人は思わず美香を抱きしめた。


「は、隼人君……?」


「俺じゃ、ダメですか?」


「えっ……?」


「俺、ずっと美香さんの事好きでした」


隼人の思いがけない告白に美香は驚いて言葉が出ない。


「俺じゃ、隆さんの代わりにはなれないですか?」


「……隼人君……」


美香はそっと隼人の胸を押すと、隼人を見上げたその顔はどうしていいかわからないという顔をしている。


「隼人君を隆さんの代わりになんて出来ないよ。それに、そんなすぐに隆さんの事忘れられる訳じゃないし……」


「俺は、それでもかまいません。美香さんが隆さんの事を忘れられるまで待ちますから。俺が側にいたら、迷惑ですか?」


隼人の真剣な態度に美香は笑って答えた。


「ありがとう」





未来は夕食の用意をしていた。


やけ酒を飲んだ日から未来は隼人を見る目が少し変わっていた。


嫌みしか言わないヤツだと思っていたけど、意外と優しい所もあるんだな。


まさか、泣いている間ずっと抱きしめていてくれるなんて思わなかった。


今までが冷たい態度だっただけに、その分隼人の優しさが心に染みていた。


夕食を作り終えた頃に隼人が帰って来た。


「おかえり、ちょうど今ご飯が出来た所だから一緒に食べるでしょ?」


「ああ、ありがと」


隼人がとても機嫌良く返事をしたのに驚いて、未来は隼人を見た。


「なんか、ご機嫌だね。いいことでもあったの?」


夕飯をテーブルにセッティングしながら聞くと


「まぁね」


ホントにどうしたんだろう。


一緒に暮らし始めてこんなに機嫌のいい隼人を見たのは初めてだった。


夕食を食べている間もずっと隼人は機嫌が良く、機嫌が良すぎて気持ち悪いなぁとさえ思えてきた。


「よっぽどいいことがあったんだ。もしかして……、彼女ができたとか!」


ほんの冗談のつもりで言ったのだが


「まぁ、そんなとこ」


隼人は言葉少なげだったがあきらかに嬉しそうに答えた。


「あっ……、そっ、そうなんだ……」


隼人の答えに未来はなぜか動揺してしまっている。


こんなにカッコいいんだもん、彼女がいないほうが不思議だよね……。


何だろう、この晴れない気持ちは……。


彼女が出来たということに、なんとなく寂しさみたいなものが込み上げてきた。


その後は、結局いつものように沈黙のまま夕食を終えた。

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