第21章:ふたりの想い
「隼人! いい加減どうゆう事か説明しなさいよ!」
未来は家のリビングで、持っていたバッグをソファに置くと、隼人を問詰めた。
隼人に腕を掴まれタクシーに乗って帰って来たが、タクシーの中で隼人は未来の質問には一切答える事なく黙ったままだった。
今も未来を無視して、冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを取り出し飲んでいる。
「隼人!」
今までなら、嫌みを言いながらも一言二言は返ってくるのに……。
なかなか答えようとしない隼人の態度に、未来は呆れ始めていた。
未来が溜息をつくと
「いい加減気付けよ。この鈍感女!」
持っていたミネラルウォーターをテーブルに置くと、隼人は未来に近付き睨んでいる。
「あたしの何処が鈍感女なのよ!」
未来は隼人を睨み返した。
すると、隼人は大きく溜息をついた。
「もういい。ハッキリ言わないとわからないそうする」
隼人をジッと未来を見たかと思うとゆっくりと近付いて来た。
「な、何?」
そのいつもと違う様子に未来は、隼人が近付いた分だけ後退るが、隼人腕を掴まれたその瞬間、隼人に抱きしめられていた。
何が起こったのかわからず、未来は隼人に抱きしめられたまま、抵抗することすら忘れていた。
いやそれどころか、隼人鼓動が直接未来の耳に聞こえてきて、未来は自分の心臓が高鳴り出しているのを感じた。
「心配……したんだ……。お前がアイツに騙されてるんじゃないかって……」
ああ、そうか。
村木さんの事があったから、隼人なりに心配してくれていたんだ。
「斉藤さんの事なら隼人が心配するような人じゃないから、だから……」
隼人は腕の力を緩めると、未来の顔を覗き込むように見た。
あまりに隼人の顔が近づけてきた為、未来は最後まで言う事が出来なかった。
「ここまで言ってもまだわかんない? お前ってホント超鈍感女だな」
「…………?」
「心配したのは……、お前の事が好きだからだよ」
えっ……?
今、なんて言った……?
未来は予想外の言葉を聞いて、一瞬誰の事を言っているのかわからなかった。
「お前がアイツと付き合うんじゃないかと思ったら、とてもじゃないけど冷静でいられなかった」
まさか……、隼人が……、あたしの事……、好き……?
未来はまるで外国語を聞いている気分だった。
「だって、あの日曜に会ってた女の子は……」
「優香が付き合っているのは、俺の親友の木戸だよ。木戸の誕生日に告白したいから、プレゼントを一緒に選んで欲しいって頼まれてあの日一緒にいたんだ」
そう……、だったんだ……。
隼人が未来の左頬に隼人の手が包むように触れた。
その瞬間に心臓がうるさいぐらい高鳴り、絡まった隼人との視線を外す事が出来ない。
そして、目の前が暗くなったと同時に唇に暖かい体温が伝わり、隼人の唇が重なった事がわかった。
軽く重なった唇が少し離れると、角度を変えもう一度重なり、舌で未来の唇を押し広げ深いキスと落としていく。
唇が離れると隼人はもう一度未来を抱きしめた。
「あんな男、やめておけよ」
ん?
あれ?
もしかして隼人はあたしが斉藤さんの事好きだと思ってない?
そう思ったらなんだか可笑しくなってきた。
「何、笑ってんだよ」
未来の笑いに隼人は不機嫌そうに言った。
「だって……、人の事鈍感とか言っておきながら、自分だってそうじゃない」
未来は隼人の胸から顔を上げ、隼人を見た。
「鈍感なヤツに鈍感だなんて言われたくない」
まだクスクスと笑っている未来を、ムッとした様子で隼人は見下ろしている。
その様子がなんだか拗ねている子供のようでかわいかった。
隼人って大人っぽく見えるけど、ホントはすごく子供っぽいのかもしれない。
「好きだよ、隼人」
未来は、少し背伸びをしてそっと隼人の唇にキスをした。
−− 完 −−
最後までご愛読していただきまして、ありがとうございました。
楽しんでいただけましたでしょうか?
小説を書き始めてまだ2作品目ということもあり、まだまだ勉強すべき点も多く、読者の皆様には最後まで読んでいただけた事を、本当にうれしく思っております。
次回作はまだ考えておりませんが、また皆様とお会いできれば幸いです。
花桃




