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第12章:気づいた気持ち

未来は夕食を作りながら、さっき隼人を訪ねてきた女性を思い出していた。


あの人が隼人の彼女なんだろうか。


大学生ぐらいに見えたけど、綺麗な人だったな。


今日はふたりで夕食を食べて帰ってくるのかな。


隼人の分、作っても無駄になっちゃうかも。


未来は小さく溜息をついた。


あたしは何を残念に思っているんだろう。


せっかく作った夕食が無駄になる事?


それとも……。


ここ数日、未来は隼人への気持ちになんとも言えない気分でいた。


いや、わかっていてわざと自分の気持ちに目を逸らしていたし、認めたくなかった。


しかし、今日訪ねてきたあの女性を見て、いやでも自分の気持ちを再確認させられた。


あたし隼人の事……。


こんな気持ち隼人に知れたら、何を言われるかわかったもんじゃない。


未来は出来上がった夕食を見ながら、もう一度溜息をついた。


待っていてもきっと帰ってこないだろうな。


しかたなく未来はひとりで食べようと用意し始めた時、玄関の開く音がして、 少ししてからリビングに隼人が入ってきた。


「ただいま」


まさかこんなに早く帰ってくると思っていなかった未来は驚いて隼人を見た。


「なにバカみたいに突っ立てるんだよ」


隼人を見たまま動かなくなった未来を見て隼人は言った。


「え、あ……、ご飯どうする?」


未来は慌てて取り繕うように言った。


隼人は未来の態度に怪訝そうな顔をしたが


「食べるよ」


それだけを言って、未来が用意しかけていた夕食の準備を始めた。


ふたりで食べる夕食はやはり沈黙だった。


夕食を食べ終わると隼人は自室に戻り、未来はお風呂に入った後、 リビングのソファでいつものようにビールを飲みながらテレビを観ていたが、頭には入ってきていない。


しばらくすると、リビングの扉が開き隼人が入ってきた。


お風呂に入ったのだろう、髪が濡れていていつもより艶やかに見え、それだけで動揺している自分に未来は驚いた。


あたし、いつのまにこんなに好きになってしまったんだろうか。


そんな事を思っていると、ビール缶を持った隼人が未来の隣に座り、プルタップを開けビールを一口飲んだ。


急に隣に座られドキッとしたが、ビールを飲んでいる隼人を見て保護意識の方が勝ち


「あんたさ、いいかげん未成年なんだから飲酒はやめなよ」


隼人は未来を一瞥し、また一口ビールを飲んだ。


「未成年でも、飲みたい時もあるんだよ」


「なによ、その変な言い訳」


未来の言葉に気にする様子も無くビールを飲み続けている隼人を見て、未来は言う気が失せてしまった。


これ以上言った所で、毎日自室でビールを飲んでいるのを知っていたからだ。


しかし、いつも自室でビールを飲んでいる隼人が、今日に限ってなぜ未来と一緒に飲む気になったのだろうか。


未来と隼人が暮らし始めて一緒に飲んだのは今日で二度目だ。


一度目は未来が村木とのことがあってやけ酒した時。


もしかして彼女と何かあったのかな。


隼人が彼女と仲良くしている所は見たくないと思ったが、それでも何か隼人の役に立ちたいと思い、 未来は思い切って隼人に聞いてみた。


「彼女と何かあったの?」


隼人は飲んでいたビールの手を止め、未来を見た。


「お前のせいで振られた」


「えっ!」


振られたって……。


「どうゆうことよ、しかもあたしのせいって……」


隼人は質問に答えようとはせず、未来をジッと見ている。


「なっ、何よ」


理解の出来ない隼人の行動に未来は戸惑った。


「慰めてよ」


「はぁ?」


「お前が失恋した時、俺慰めてやったじゃん。今度は未来が慰めてよ」


そう言って隼人は未来に近付いてきた。


未来は隼人が近付いてきた分、少し後退りした。


そりゃあたしが失恋した時、隼人は慰めてくれたけど……。


よく見ると隼人が飲んでいるビールは四本目に突入していた。


「隼人、あんたちょっと酔ってない?」


「この程度で酔う程、酒に弱くねぇよ」


そう言うと隼人は未来を抱きしめた。


いきなり抱きしめられた未来は、隼人の力強い腕を振り解く事もできず、心臓が飛び出る程ドキドキしていた。


「は、離して……」


「やだね。未来のせいで振られたんだ。慰めてくれるまで離さない」


「だから、なんであたしのせいなのよ! あたしが何したってゆうの?」


「俺に抱きしめられるのはイヤ?」


隼人は未来の質問に答えようとせず、少しだけ腕の力を緩め、未来の顔を覗き込むように聞いた。


隼人の顔がまじかに迫っていて、未来はますます心臓の音が高鳴り出す。


絶対酔っぱらってる。


いつもと違う隼人に未来は、必死に隼人の腕の中から逃げようとしていた。


でないと、心臓の高鳴りが隼人に聞こえてしまうのではないかと思えた。


それでも、隼人は容赦なく未来に迫ってくる。


「そんなに俺に抱きしめられるのは、イヤなの?」


真剣な眼差しで見つめられ、もはや未来は隼人から逃げる事が出来なくなってしまった。


「未来」


隼人は優しく未来の名前を呼ぶと、未来の頬にそっと手を添えた。


あぁ、もうダメだ。


こんなに優しくされたら、隼人を好きだって気持ちが抑えられなくなる。


その時、隼人の唇がそっと未来の唇に被さった。


驚いて未来は隼人から離れようとしたが、隼人は腕に力を込め未来を離そうとしない。


隼人のとても優しいキスに、いつのまにか未来は抵抗する事を止めていた。


やっぱり、あたし隼人の事好きだ。


次第に深くなっていくキス。


そして、未来はソファの上に押し倒されていた。


そこで、ハッと我に返る。


いくらなんでも、酔った勢いっていうのはイヤだ。


隼人だって振られたばかりで、きっとやけになってこんなことをしているに違いない。


このまま体を重ねたら、酔いが醒めた時きっとお互い気まずい思いをするだけだ。


そんな事だけは絶対避けたい。


「イヤ!」


未来は隼人の唇が離れたその時、精一杯の力を出し隼人の胸を押した。


一瞬、お互いの視線が合ったが、隼人は瞼を閉じ小さく溜息をつくと、隼人は未来の腕を引っぱり起こした。


「ごめん……」


そう言うと、隼人は立ち上がり自室へと戻っていった。

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