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第10章:偽りの恋人

未来は家の前まで来ると一台の車が止まっていた。


車の横を通り過ぎようとした時、運転席から男性が降りてきた。


村木さん……。


「未来」


未来の名前を呼びながら近付いてきた村木を、未来はキッと睨んだ。


ホテルでの一件以来、村木と会うのは初めてだ。


「なにか、ご用ですか?」


「……悪かったな。騙すつもりじゃなかったんだ」


村木は少し俯きがちに言った。


「未来と付き合い始めた時、里枝とはうまくいってなくて会ってなかったんだ」


里枝ってあのお嬢様風の女性のことかな。


「少し前に道で偶然会って……」


「だからって、二股をかけていいわけじゃないでしょ」


「未来……」


「あたし、これ以上村木さんと話す事ないから」


未来が玄関の方に歩き出すと、村木は未来の手首を掴んだ。


「待ってくれ未来。俺、まだ未来の事……」


「離して!」


捕まれた腕を振りほどこうとしたが、強く握られて振りほどく事が出来なかった。


「いいかげんにしろよ、オッサン!」


急に声がして、未来と村木は振り返った。


振り返った先には隼人が立っていた。


「人ん家の前で何やってんだよ」


隼人は歩き出すと、未来の隣に立った。


「なんだよ、お前には関係ないだろ!」


急に現れた隼人に村木はムッとした様子だ。


「関係ない事ないね。俺達、付き合ってるから」


そう言うと、隼人は未来の肩を抱いて自分の方に引き寄せた。


隼人の行動と言葉に未来は驚いて隼人を見たが、隼人は真っすぐ村木の方を見据えている。


そして、場違いにも隼人に肩を抱かれドキッとしている自分に気がつく。


なんだろう、隼人の手が置かれている肩が熱く感じる。


「付き合ってるって……、未来、お前……」


村木は驚いて未来を見た。


未来のその言葉にハッと我に返ったが、村木の質問に未来も答えられないし、未来の方が聞きたいぐらいだ。


一体、どこをどうしたら隼人と付き合ってるって話になるんだろうか……。


「勘違いするなよ。未来が二股かけてたわけじゃない。あんたが他の女と一緒に居る所を見た日に、俺が慰めてやったんだよ。男と女がひとつ屋根の下にいれば……、それ以上は言わなくてもわかるだろ」


村木は困惑した顔をしながら未来を見ている。


「未来……、本当なのか……」


もちろん隼人と未来が男と女の関係になっているわけではない。


村木に問われ未来はどうしようかと思ったが、隼人が自分に助け舟を出してくれているのだろう。


せっかくの隼人の気持ちを無駄にするわけにはいかない。


「えぇ……、本当よ」


「そうゆうことだから、二度と未来に手を出さないでくれ」


隼人は未来の肩を抱いたまま家の中へと入った。


玄関の鍵を閉めると隼人は肩に置いていた手を下ろし未来を見下ろした。


未来はまだ心臓がドキドキしていている。


「お前、隙あり過ぎ」


「そんな事言ったって、勝手に家に来てたんだからしょうがないでしょ」


未来は隼人に助けてもらった事も忘れて、未来は隼人の方を向いて言い返した。


「お前に隙があるからあんな男にしつこくつきまとわれるんだよ」


「しつこくって、あれ以来会ったのは今日が初めてで……」


「そうゆう問題じゃないだろ!」


なぜか隼人は苛立っているように見えた。


「そんなに怒らなくたっていいじゃない」


「別に怒ってねぇーよ!」


「それが怒ってるっていうの!」


だんだん言い合いになってきている事に未来も隼人も気づいたのか、そこで言葉が止まりお互い目線を逸らした。


しばらくの沈黙の中、未来はまだ隼人にお礼を言っていなかった事に気づいた。


あの時、隼人に助けてもらったのには変わりない。


お礼ぐらい言っておいた方がいいよね。


「……ありがとう」


思いがけない言葉に隼人は未来を見た。


「まだ……、助けてもらったお礼、言ってなかったでしょ」


未来は隼人と目線を合わせずに言った。


隼人はハァーと息をはいた。


「これからは、もっと気をつけろよ」


「……うん」


隼人はそれだけを言うと、玄関を上がり自室へと戻っていった。


それにしても、なぜあんなに苛ついていたんだろう……。


家の前であんな事があって、近所迷惑だと思ったからだろうか……。


未来は隼人の行動がいまいち理解できないでいた。


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