俺の家の天井裏に、何か居るようだが?
毎度お馴染み通常運転、徹夜明け☆の為、誤字脱字は許してつかぁ~さいませOrz
ガサガサゴソゴソ……。カチャカチャ、トントン。
今日も何時もの如く何者かが、俺の家の天井裏に居るようだ…。
俺の家は古い一軒家で1階立てだ。ひい祖父さんが若い頃に建てた家だ。ひい祖父さんが亡くなってずっと空き家だったのだが、俺が大学進学を期に独り暮らしをする事になった為、ここに引っ越して来たのだ。
引っ越してきた当初は特に何も無く、普通に過ごしていたのだが、住みはじめて1ヶ月程経った頃からだろうか?最初は寝る前にカタッとか、ピシッとか、小さな音が鳴る程度だった。
古い家だから家鳴りか?位にしか考えて無かったのだが、2ヶ月後にはカタカタ…。3ヶ月後にはギシギシ…。半年程経った現在では、冒頭の用な音が常時するようになった。
いや、隠れる気無いだろ…。それで隠れてるつもりだったらある意味凄いな。(ヤバい意味で)
昔の人は言っている。好奇心は猫をも殺す……と。たが、その時の俺にはそこまで深刻な事態だとは考えが至らなかった。だって、やっぱり気になるだろう?
好奇心に負けた俺は、天井裏に行く為に探し当てた押入れの天板を、ひと1人通り抜けられる程度にずらして天井裏に登った。
天井裏は暗いと分かっていたので、登った直後に懐中電灯を点けた。
懐中電灯の光に照らされた、天井裏の光景に俺は目を疑った。灯りを点けたら其処は別世界……とまではいかないまでも、埃ひとつ無く、そして明らかに何者かの生活用品などが置いてある。
寝袋にタオル……コップと…何だこりゃ?巻物に、手裏剣…縄ばしごまで置いてあるぞ?
ああ、ご丁寧にも壁に忍の心得とか貼ってあるな。
何々?ひとぉーつ、主君への愛と忠節。ふたぁーつ、主君への愛と忠節。みぃーつ、主君への愛と忠節……って、全部同じ事しか書いてないな。こいつはとんだ忍者道だな。
というか、それしか無いならワザワザ壁に書かなくても良いんじゃなかろうか?
俺が暫くその場で唖然としていると、突然壁がガタガタ震動し始めた。音がする方に視線を向けると、如何にもTHE忍者!!みたいな格好をした、男?が入ってきた。
「きっ…貴様、なな…何奴じゃっ!!!」
忍者?が、もの凄く驚いている。いや……ちょっと待て!お前は仮にも忍者だろ?気配とかには敏感な筈なのに、何故天井裏に入って来るまで他人が居るのに気が付かないんだよ…入る前に気付けよ!
「お前……忍者失格だな」
つい、ポロリと口から言葉が出ていた。俺にしては珍しく、初対面の他人にかなり失礼な事を言ってしまったとは思う…。だが、しょうがないと思う。だって突っ込み所が満載なんだよ。不可抗力ってやつだよ。うん。
ん?こいつ…あれか?なんちゃって忍者ってやつか?それともコスプレとかか?と、俺が考えていると、忍者?がブルブル震えながら勢いよく喋り始めた。
「失格とは何なんじゃっ!無礼者めっ!!そもそもお主の方こそ、一体何者なのじゃ?ここは拙者の隠れ家じゃぞっ!!主君をお守りいたす、大事な場所じゃ……が……………」
最初はワアワアまくし立てて来ていたのが、いきなり途中でピタリと声が止まった。
流石の俺もどうしたのか気になって、こちらから忍者?に声を掛けてみる。
「ん?どうした?具合でも悪くなったのか?」
返事が無い……只の屍のようだ。
何度か声を掛けてみたが、ピクリともしない忍者に次第に飽きて来たので、俺は自分の部屋に戻ろうと忍者?に背を向ける。
すると忍者?がやっと動き出したのだが、何故か俺に向かって土下座しだした。
ジャパニーズアイムソーリーだ。いや、スマン……若干混乱している。
「たっ大変…も…申し訳ございませぬ。貴方様は……もっ…もしや川澄黎明様では御座いませぬか?」
この忍者?……何故俺の名前を知っているのだろうか?この家の表札は、未だにひい祖父さんの名字で天座だし、忍者?では無く、もしやこいつはストーカーか?忍者のコスプレをしたストーカー……うげっ……そりゃあいくらなんでもマニアック過ぎるだろ。
ここはやはり警察に通報すべきだろうか……。
俺が遠い目をしているのにも係わらず忍者?は更に言いつのってくる。
「某、霧島の細雪と申します。古き盟約に従って殿の……天座家の血を継ぐ黎明様に、某の忠節をお誓い申し上げたく……」
ちょっ、待て待て待て!!何だそりゃ?聞いてないぞ?えっ?ドッキリ?そう思って少し待ったが、一向にドッキリ大成功!と書かれたプラカードを持った人は出てこなかった。ドッキリの気配すら皆無であった。
俺が混乱している間に忍者の誓い?が終わったのか、明らかに俺の方へと、期待に満ちた目を向けて来る忍者に混乱状態から幾分正気に戻った。まぁそれが良いことかどうかは知らんが。
「某のご主君になって頂きたく候!!」
俺がいつまでも返事をしないでいると、忍者は悲しげなションボリした声で、途切れ途切れに切々と訴えてくる。
「某の…ご主君には……なってく……下さり…ませんので……しょう…か?……お仕え出来ぬと…あらば……某…切腹致す…所存で……御座り…ます」
忍者の周りの空気がより一層と重苦しくなり、手にはいつの間にかクナイが握られていたのだが、クナイじゃ切腹は無理だろう。
痛みだけが長時間続き、結局は死にきれないって落ちだな。
だが実に痛そうだ。俺は痛いのは自分でも他人でも味わうのは嫌いなんだよ。
という事は、結局はこの忍者の主君になるしか選択肢は無いみたいだ。
ひっ…卑怯なり、忍者めっ!しかも切腹ってそれが出来るのって武士だろ?お前は忍者だから切腹って関係ないんじゃないか?
う~ん……。こいつちょいちょい言動に残念な子臭が漂うな。
「はぁ~……わかった…わかったから、クナイをスタンバるのは止めろよ、な?」
しかしまだクナイは忍者の腹にスタンバイ中である。
「ご主君に…なって…下さい…ましょう…か?」
どうやら確実な言質を取りに来ているらしい。いや、流石の俺もこの期に及んで主君にはならないとは、実は言いたいが……洒落にならなそうなので我慢する。
「だからわかったって言ってるだろ?なるよ……なれば良いんだろ?お前の主君って奴に。はぁ…」
とんでもなく疲れた……いや、この場合とんでもない奴に憑かれた……なのか?
うげっ……一向に笑えない。
「殺りましたぁっ!あっ…じゃない、やりました~♪落ちこぼれと郷でも名高い拙者が、遂にご主君をGETじゃ~☆ご主君GETだぜっ!なんつって♪」
モシモシ…… 忍者よ…。何か、しゃべり方一番最初に戻ってませんか?いや、それより更にフランクになってませんか?殺りましたってお前……主君殺りに来るタイプなの?しかも俺はポケ〇ンじゃないぞ?いや、確かに無理矢理だがGETはされてしまったんですがね………。ははは。
これで「実はうっそ~♪お前の主君には、絶対になりまっせ~ん★」とか、言ったらどうなんだろ?
「それは無理ですよ~。拙者さっきのご主君になって下さるって下りは、ちゃんと録音してましたし!この、高性能な音声記録機能付きクナイで!」
そう言って忍者が懐からゴソゴソと、取り出したのは先程切腹してやると脅して来た時のクナイであった。
しかも恐ろしい事に俺さっきの、実はうっそ~発言、声に出して言って無くね?何で分かったの?それが主従だって言うつもりか?
忍者……恐ろしい子…………。残念な子だと思っていたのに実は腹黒策士?
俺がショックを受けていると、「ヤッパリ好奇心を刺激する音を出したのが勝利の決め手だったのじゃな?」とか、言ってる……。げっ…俺の好奇心を、分かってて煽ったのか。策士だ。策士がいるぞ…。これからこの先ずっとこの忍者に振り回される将来のビジョンがハッキリ見える。不幸だ。
惨憺たる未来に俺はひとつ大きなため息を落としたのであった。
「はぁ~~~~~~~~~~~」
その後のとある日常の出来事。
プルルルル~♪プルルルル~♪カチャッ。
「もしもし、こちら拙者のご主君、川澄黎明様の御自宅であるぞ!何用じゃ?」
「はっ…はあっ?っと……げふんげふんっ…せっ…拙者………拙者でゴザルよ~☆」
「おおっ、又兵衛か?又兵衛じゃな?そのイカれた語尾は又兵衛以外ありえぬなっ!で、又兵衛如何した?もしやお主も黎明様にお仕えしたいのじゃな?だが黎明様にお仕えするのは、拙者に決まったのだと再三言っておるじゃろ?幾らお主の頼みでも黎明様は譲れんぞ?」
「いっ…いやぁ…そんなんじゃ無いでゴザル…☆実は仕事先の金を横領してしまって、金が大量に必要でゴザル…☆少しの間横領した金額を補填できれば、その間に拙者がどうにか金を作るからバレないでゴザル…。後生でゴザル…ちょいと金を融通して欲しいでゴザル~☆」
「…………………………………………。」
「だ……駄目で…ゴザ…ゴザルか?」
ご……ごくりっ……………。
「あいわかった!で、幾らいるのじゃ?」
「三百万…円程でゴザル……☆」
「承知つかまつった!!それで?待ち合わせは何時もの場所で良いじゃろ?」
「い、いや…今回は俺…げふげふん…。拙者は行けないから、使いの者を送るでゴザル☆そいつに金を渡してくれっ…でゴザル☆」
「わかり申した。で、何時までに金子を用意すればよいのじゃ?」
「金子?金の事か?あっと!なるべく早く…でゴザル~☆そうでゴザルなぁ~明日はだめでゴザルか?」
「本に急ぎじゃな?まぁ、良いわ。明日じゃな?用意して待っておるぞ?」
「ああ、サンキュ…じゃない、か…かたじけ…な…い?」
「うむ。ではな?」
カチャン。
「友が困っているのじゃ、早速約束の明日までに金子の用意を致すかの?」
イソイソと出かけようとする、忍者こと細雪の襟首をグイッと引き止める者が居る。
そう、へっぽこ腹黒忍者こと、細雪の主君であり、先程から電話の会話を隣で聴いていた黎明である。
「お前、本当に面倒くさい奴だな……。何故こんな古典的なオレオレ詐欺に引っ掛かるかなぁ…」
頭が痛い…と言うようなジェスチャーをする、黎明に細雪は強気でこう言った。
「大丈夫です黎明様!流石の拙者もオレオレ詐欺何かには引っ掛かったり致しませぬっ!」
「は、はあっ?たった今、引っ掛かってたくせに何言ってんだ?」
「黎明様こそ何を仰っておるのやら?拙者が話していた者は、拙者拙者~拙者でゴザルと申して下りました。ね?オレオレ詐欺ではござらんじゃろ?」
その細雪の残念な発言に黎明の頭の痛みが、疼痛から激痛に変化した。
黎明は米神を揉みながらひとり呟いた。
「……………拙者拙者詐欺か。はぁ~……斬新すぎてこいつ以外には、まず間違いなく被害は出ねぇだろうな…。多分。はぁ~~…全国的には安心だが、我が家はこれからも不安だな。もういっそ細雪には電話には出ないで貰うのがベストだろか……」
黎明の気苦労は細雪が側にいる限り、これからも続くのであった。
皆さま、過ぎた好奇心は程々にね?
じゃないと黎明みたいな事になるかもしれませんので。
拙者拙者詐欺にも、ご注意下さい…ね?