第一地獄~暗黒太陽~
いじめっ子達に、フドウの裁きが下る!
カッ!
急に空の色が、絵具が入り混じったようなオーロラ上の色に変わる。
そして沈みかけた太陽は、その色をまるで月食のように黒く変えて、再びグイと天上に移動した。
「な、なんだよ!? 太陽がおかしなことになってるぜ?」
「なんだよ、何なんだよ?」
いじめっ子達は、空の上で起こる異常な出来事に驚く。
しかし、これが彼らが地上にいられる最後の時間だった。
「さあ、黒き太陽よ」フドウはニヤッと不敵な笑みを浮かべる。
「この、人でなし達を強く照らしたまえ!」
カァッ!
フドウの言う事に従うように、太陽は暗黒の光を強め、いじめっ子達に彼等に照射した。
「うぎゃ!? うがやぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「熱いぃ! 体が焼けるぅ!」
いじめっ子達は、急に、燃え盛る炎で直に身を焼かれるような痛みを全身に受けはじめた。それは狂わんばかりの凄まじいもので、まともに立ってはいられない。
「た、助けてくれーーー!」
「死ぬ、死ぬぅぅぅ」
苦しみもがくいじめっ子達を、フドウは冷ややかな、氷のような目で見つめた。もっとも、そんな眼差しで見られても彼らの体が冷やされる事はない。焼けつくような痛みがひたすらに続く。
「ふう、何をいまさら。君たちは、今までそこの彼にやってきた事を忘れたのかい」
「えっ!?」
顎の出た少年が、目を見開いてヨシキの方を見る。
ヨシキだけは、その太陽に照らされても何も身体的な変化は起こらず。ただ、いじめられっ子達の様子を茫然と見ていた。
「ち、ちがうだろ!」いじめっ子の1人が慌てふためいて言う。
「俺達は別に何も悪い事した覚えはないぜ!?」
「ほう、まだ非を認めないのか……本当にどうしようもない奴らだな。じゃあ、もっと苦しんでもらおうか!」
「え……ぎゃあっ!」
太陽の黒い光が更に強くなる。
いじめっ子達は、気絶しそうなほどの強烈な痛みで、もはやまともな思考ができなくなり、ただもだえ苦しむ。しかし、決して意識を失うことはなかった。苦しみが、延々と彼等を襲った。彼らの体は、どんどん、その太陽のように黒くなっていく。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「どうしたの? もう、無駄口は終わりかい?」
「たしゅけてぇぇぇ……ごめんなさい……ごめんなさいぃ……」
「ふぅん」いじめっ子達が必死の謝罪を始めたが、フドウの反応はやはり淡白だった。
「そんなに苦しいのかい? じゃあ、そこの川に飛び込んでみなよ」
「はっ……ひゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
いじめっ子達は、フドウの言うとおりに一斉に川に向けて走り出し、その身を水の中にジャバジャバと沈めて行った。そして、暫くすると水面に顔を出したが、再びその黒き太陽の光に照らされると再び絶望的な痛みが体を走り、再び水の中に姿を消した。
フドウとヨシキは、そんな彼等を見に、川岸に歩いて行った。
「……あの、フドウさん」ヨシキがおどおどしながら尋ねる。
「なんだい?」
「あいつらは、これからどうなるの?」
「ああ……」フドウは川の方を見て小さく笑った。
「あいつらは、もう人間じゃ無くなった。これからずっとああやって川の中で生きていくのさ……社会からも抹殺されて、永遠に死ぬこともできずに、黒い太陽と水中の息苦しさを恐れつづける。ずっと、地獄を味わい続けるんだよ……あはははは!」
「……」
ヨシキは、フドウの目の先を見た。
水面にはブクブクといくつかの泡が絶え間なく出続けていた。
彼をいじめていた少年たちは、こうして望み通り、フドウによって地獄に落とされたのだった。
しかし、ヨシキの心が、元に戻った太陽が居る青い空のように晴れ渡る事はなかった。