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ヨシキは、川で溺死しそうになっていたところを謎の少年フドウに助けられる。彼は自らを地獄の使者だと言い、ヨシキに自分がいじめられっ子を地獄に落としてあげる、苦しみから解放してやろうかと言った。それを聞いたヨシキは、迷うことなく彼にいじめっ子討伐を頼んだところ、フドウは翌日いじめっ子グループを河原まで連れてくる事をヨシキに依頼した。
翌日、ヨシキは学校に行った。
正直恐かったが、フドウとの約束の為に勇気を振りしぼったのだ。
いじめっ子達は、ヨシキの登校に少し驚いたようだったが、すぐに開き直り、放課後になるとまたいつものように気弱な少年ににじり寄ってきた。
「あれー? 生きてたんだぁ、ヨシキ君」
「……」
顎の出た人相の悪い少年の1人が、ヨシキの肩に手を回し、舐めまわすように彼の顔を見る。それは、とても気持ちの悪いものだった。周囲を囲む少年隊も悪意のオーラを漂わせ、ヨシキを見下ろし、笑う。
「しぶといねぇ。でも、よかったよ。これで警察沙汰にもならずに済んだしさ…………おい! 絶対にあのこと誰にも言うんじゃねぇぞ。ぶっ殺すからな!」
まるで二重人格のように変わる、人でなしのこの少年は、ヨシキにとっては恐怖そのものであった。いつも、体の震えが止まらなくなり、まるで金縛りにでもかけられたかのように体が動かなくなってしまう。
「じゃあヨシキ君、昨日僕達を困らせたお詫びとして、2万円賠償してくれよ。」
「そんな……!」
「払えよ。絶対払えよ。払わなかったら、どうなるかわかってるだろ? なあ、ヨシキ君がバカでもそれくらいわかるだろ?」
ヨシキは頬をぐしゃりと片手で掴まれる。強い握力が歯に達し歯茎が内側にくぼんでしまいそうで痛かった。いつものようにまた、圧倒されてしまいそうだった。だがしかし、今日は全ての恐怖に耐えようとヨシキは覚悟していた。だから、決して払うなどと言う事は言わない。
「何だよ……その反抗的な目はっ!」
ドガッ
顎の出た少年は彼を殴る。そして他の少年達もヨシキに喰ってかかった。
痛い……
苦しい……
でも、もう、信じるしかない……
「うっ、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ヨシキは今まで出した事も無い程の大声で叫び、いじめっ子の1人を押し倒した。
流石の、いじめっ子達も手が止まる。
「うわっ、こいつ気が狂ったか?」少年の1人が笑いながら言った。
「……お前ら……もう……こんなの終わりだ」
「何だよ、はっきり言ってみろよ、グズ」
「お金は……もう出さない! 昨日みたいに川に行くんだったら連れて行けばいいよ!」
「なにを!?」
トカゲのような少年が、再び殴りかかろうとしたところを、顎の出た少年がなだめた。
そして、目をカッと見開き、裂けるように口を左右に引き延ばし、悪魔のような形相でヨシキの顔をじっと見る。
「いいよ、ヨシキ君。そんなに言うんだったら、『川遊び』に行こうじゃないか。今日は完全に沈めてあげるからねぇ! 昨日より楽しくなるよ!」
ヨシキは、そんな少年の挑発にじっと耐えた。
目をそむけることもしなかった。
昨日会ったばかりのフドウの事を、信じていたからだ。
フドウが最後の希望と悟った彼の、人生最大にして全力の戦いが、今行われているのだった。