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水を飲む少年
ある河川敷で……
ジャバッ
苦痛の中、水を掻く音が聞こえる。
水面に顔を出そうと、必死でもがく手。しかし、その手の力は、頭を押さえつけられる力には及ばない。
苦しい!
助けて!
殺される!
お父さん! お母さん!
死の恐怖が、彼の体を覆った。
死の闇が彼に迫った。
そして、彼は意識を失った。
「やべっ、死んだか!?」
「やべー、やべー。ここにいちゃマズいし、ズラかろうぜ?」
「そうしよ、そうしよ」
「こいつ、明日ゾンビになって学校来るかもな」
「ハハハ」
彼を押さえつけ、水の中に顔を埋めさせていた人相悪い3人の少年は、まるで自らのやっていた事に罪の意識を感じていないかのような軽い言葉を発しながら、笑いながら、その場を後にした。
恐怖に包まれた彼は、水面に顔を沈めたまま、動く事はなかった。本当に死んだかのように。
川は、そんな彼を気に留める事も無く、薄情な程に静かに、ただ下降に向けて流れ続ける。もし彼が死んだって、川はただその顔をふやけさせ、魚のえさにするだけだろう。
世の中もまた、そんな川のように彼に非情であった。