ふたりの昼休み 【月夜譚No.403】
掲載日:2026/05/24
外で食べるおにぎりは美味しい。かといって屋内で食べるのは不味いというわけではないのだが、外で食べるとまるで見えない調味料を加えたかのように美味しく感じるのだ。
偶にはこういうのも悪くはない。彼女はベンチに座る脚を伸ばして、頭上の枝葉を見上げた。ちらちらと落ちてくる木洩れ日が程良く眩しくて、すっかり緑になった葉が揺れるのが心地良い。
数日前まで仕事が立て込んでおり、こうやってのんびり昼食を摂ることもあまりできなかった。今日は思い切って公園まで足を運んだのだが、正解だったようだ。久し振りに時間がゆったりと過ぎていく感覚がする。
ふと視線を感じて顔を下ろすと、彼女の正面の地面に黒猫が一匹ちょこんと座ってこちらを見ていた。
「ごめんね。これはあげられないのよ」
あまりにも見つめてくるので思わずそう言ったが、黒猫は「そんなことはどうでも良い」とでも言いたげに視線を逸らし、そのまま彼女の隣に飛び乗ったかと思うと寝そべってしまった。どうやら、ベンチはこの子の寝床だったらしい。
彼女はふふっと微笑むと、猫とふたり、のんびり昼休みを堪能した。




