2話
信長の目が覚めると、そこには大きな広間が広がっていた。
高い天井、重厚な石の柱。
見たこともない装飾が施されたその空間には、異様な気配が満ちている。
「これが新しい魔王様なのか……?」
大きな広間には、西洋風の衣装をまとい、色とりどりの髪をした者たちが並んでいた。
その光景を一瞥し、信長はふっと笑い、口を開く。
「俺は織田信長。貴様らの新たな魔王だ。話はすでに聞いている。この国の魔王として、この天下を統一してやろう!!」
その一言で、空気が変わった。
圧倒的な威圧感に、周囲にいた人々は息を呑み、驚いた表情を浮かべる。
「なんだ?誰も喋らぬのか?」
信長がそう言うと、近くにいた一人の豪奢な衣をまとった男が前へ進み出た。
「魔王様……私はこの国の大臣、グエッツェルと申します。どうか、我らをお救いください……もはや、我らには手がございませぬ」
その言葉と同時に、周りにいた者すべてが膝まずいた。
「よかろう。現状を話せ」
グエッツェルという男は、一瞬言葉を詰まらせた後、絶望をにじませた表情で語り出す。
「……現在、我が国は敵国の軍勢によって攻め滅ぼされようとしております。すでに王都目前まで侵攻されてきております」
「何だと……?」
信長の目が鋭く光る。
「先代の魔王様は自堕落に生き、後継も残さぬまま急死……それを機に、我が国は“魔王なき国”として他国に狙われるようになったのです……」
静寂が落ちる。
信長は一瞬だけ目を閉じ、思考を巡らせた。
(……面白い)
口元がわずかに歪む。
「このままでは何も変わらん。案内しろ——戦場へ行く」
「は、ははっ!!」
戦場へ向かう道中、信長はグエッツェルからこの世界の成り立ちを聞いていた。
この世界には四つの国が存在し、それぞれに魔王と呼ばれる絶対的支配者がいる。
魔王は単なる王ではなく、強大な力とカリスマで国を統べる存在。
そして四国は、互いに覇を競い、絶えず戦乱を千年以上続けている。
魔王を失った国は、すなわち滅びを意味する——それがこの戦乱の世の理だった。
やがて戦場へと到着する。
そこに広がっていたのは——まさに地獄そのものだった。
数万の兵がぶつかり合い、怒号と悲鳴が渦巻く。
剣と血飛沫が空を裂き、大地はすでに赤黒く染まっていた。
「わが軍は、あの黒き鎧をまとった部隊にございます!わが軍は約五万ほどで敵軍は十万から十一万ほどと推測されます……」
グエッツェルが指差す先。
確かに、統率の乱れた黒い軍勢が押し込まれていた。
敵軍との力の差は明白だ。
「……弱いな」
信長は一言、そう切り捨てる。
だが、その目は笑っていた。
(数も、士気も、指揮も足りぬ……だが——)
ゆっくりと前へ踏み出す。
「だからこそ、面白い。力がないなら、知で戦えばいい」
そう言って、自らの頭を指した。
その瞬間、信長の全身から凄まじい覇気が放たれた。
周囲の兵たちが思わず息を呑む。
「見せてやろう……戦とは何かを」
その声は、戦場の喧騒すら飲み込むほどの重みを帯びていた。
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