8時過ぎの点呼
俺の名前は岡田凪、高校1年生。いつもテロリストが学校に侵入してくる妄想をしている、普通の男子高校生。
眠い目を擦りながらスマホをいじる朝の会前の今日この頃。小鳥の囀りが心地良い。いつからか、かっこつけるために飲み始めたブラックコーヒーをおいしいと感じるようになっていた。
(このソシャゲの新キャラ可愛いな。バイト頑張って石買うか…)
「おはよう!」
担任が教室に入ってきた。こいつの名前は金斗令男。金という苗字から、「脱北者ではないか?」という噂もあるが、本人は否定している。筋トレが趣味らしく、いつも教室でプロテインを飲んでいる。好きな味はチョコレートらしい。この学校に赴任したのは今年度らしく、前の学校で生徒の父親にセクハラをして飛ばされてきたという武勇伝がある。体育会系で悪い人ではないのだが…割とめんどくさい。
「先生見て見て〜、今日のアタシ、アイメイクめっちゃばちばちでしょ?」
「おう、先生はよくわからないけど頑張ったってのは伝わってくるよ!!!マラカス?を使ったんだろ?先生勉強したんだよ!」
「先生〜、それマラカスじゃなくてマスカラ〜!www」
「メンゴメンゴ〜」
「でもわざわざ勉強してくるなんて…先生、やりますねぇ!」
この学校はかなり校則が緩く、メイクも許されている。ただしここまでメイクが濃いのは恋星レミ、こいつだけだ。
「はい、点呼取るよー。藍川亜依ー」
「…」
「どしたー、元気無いのかー?」
「…」
藍川亜依。喋ってるのを見たことがない。AIなんじゃないかと噂されてる。
「体調悪かったら無理すんなよー。次、岡田凪〜」
「うぃ…」
「うぃーっす」
「七紙、俺の代わりに挨拶すんのやめろよ…」
「でも似てるっしょ?www」
「はっはっは、先生どっちが本物か気づかなかったぞ〜」
こいつの名前は七紙無馬。とにかくうざいが、悪い奴ではない。何回か留年しており、実年齢は325歳らしく、上靴は3色全部買ったらしい。こんな校則が緩い高校で何をしたら留年になるのだろうか…ある意味ホラーである。ポケモンが好きすぎて、自分の名前を「ムウマ」に改名したらしい。親が反対しないか聞いたら、親は寿命でくたばったと答えた、その時の目は少し悲しそうだったが。本名は教えてくれないようだ。
「次、恋星レミ〜」
「ちょっと!人の名前間違えるなんて最低ですわね!」
「お姉様の言う通りですわ!レミちゃんの苗字は恋星じゃなくて恋星ですわ!」
「お、すまんすまん。恋星レミ〜」
「わたくしたちじゃなくてレミさんに謝ってくださいまし!」
「ラピちゃん、気持ちは嬉しーけどアタシは怒ってないから大丈夫だよ?」
「左様ですのね…失礼しました。」
「七紙無馬〜」
「はーい」
「氷雨トメ子」
「はい」
…俺はこいつ、氷雨トメ子が大嫌いだ。




