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第3話 装備万端! コーディネート?

 いきなりダンジョンに追いやられ、そのうえ戦わされ、かなり乱暴にダンカの説明を受けたところで、ようやくダンジョンの外に出してもらえた。

 ただ、体はスキルのおかげで案外平気だ。

 どちらかと言うと、精神的疲労の方が大きい。もうヘトヘトだ。


「いやぁ、わたしがいるから大丈夫だと思ったけど、さすがにその格好で探索を続けるのは無理でしょ」


「……、そうですよね……」


 今の僕はと言えば、内側からパツパツに胸やら尻やらが押し上げられて動くのも苦しいような状態だった。

 スキルの覚醒で急成長したら、仕方がないというものだろう。


 そんな中、みふだちゃんの容赦ない視線に対して、胸を隠したり、スカートの裾を伸ばしたりして誤魔化している。

 だが、当然そんなものではなんともならない。

 元の僕がちびすけだったせいもあって、その落差が大きい。

 こんな格好でその辺を歩いていたら襲われてしまうんじゃないだろうか。


 それは嫌だ!


「歴ちゃんって緊張しい?」


「うーん。そうかもだけど……」


 ふと聞かれると、たしかにそうかもしれない。だが、今の緊張は元からの性格じゃない。


「あんまり気を張らなくていいよ。もっと自然体で大丈夫だからね」


「この状態でそれは無理だと思うけど、できるだけ頑張る」


「僕っ子だもんね」


「なんで知ってるの?」


「ふふふ」


 みふだちゃんの反応からは、知ってたのか知ってなかったのかよくわからない。けど、かなり頑張って一人称を矯正していたはずなのに、こんなところも見透かされていた。服装も相まって余計に恥ずかしい。


「探索者試験を受けているところも写真に収められていたし、どういう事?」


「企業秘密」


 いたずらっぽく笑われてしまった。

 自然にそういう表情ができるのはずるいと思う。


「でも、男の子っぽい雰囲気だから、いきなりダンジョンの方が楽しんでもらえると思ってだったけど、成功みたいだね」


「その感覚はよくわからないよ……」


 人の気持ちをよく理解しているのかしていないのか謎だ。

 自慢げに笑っているところを見ると、心底うまくいったと思っているのだろう。


 もっとペースというものを意識してほしいのだけど。


「ところで、今はどこを目指してるの?」


「わたしの区画。ちょうどここからだよ」


「く、区画?」


「そう。家族にもプライベートは必要だからね」


 わかるけどわからない。

 区画って言ったよこの子。部屋じゃなくって区画って。


 人の家にも色々あるらしい。

 その、みふだちゃん区画の建物へ入り、その内一部屋に入ると、横柄さの増したみふだちゃんは両手を打ち鳴らした。


 するとどこからか、メイドさんが召喚された。

 どういう仕組み?


「お呼びでしょうかお嬢様」


「歴ちゃんに、アレを用意してあげて」


「アレ、でございますね」


 アレで通じるらしく、メイドさんは音もなく消えた。

 本当にどういう仕組み? これもスキルなのだろうか。


 それにしても、なんだか嫌な予感がする。とてもとても嫌な予感がする。


 いつの間にか置かれていた紅茶をすすりながら、みふだちゃんはリラックスした様子だ。

 そのまま優雅な表情で僕を見てくる。


「楽しみにしててね」


「あの、アレって何?」


「わたしたちの会社では装備も作ってるの。その最高傑作ってところ」


「装備……」


 さすがにそれはわかる。

 剣とか、鎧とかのアレだろう。ゲームでは色々なものを少しずつ強化して使っていたイメージだ。


 しかし、なんだかすごい話になってきていないか?

 装備も作れるような会社の最高傑作を装備させてもらえるなんて。


 一致していなかっただけで、みふだちゃんは超有名企業のお嬢様だったという事だ。

 となると、普段の変人さは本人だとバレないようにするためだったのだろう……。


 これは深読みしすぎだろうか……。


「でも、どうして僕に?」


「今後も探索を続けてくれるって子には、わたしから装備を提供するって決めていたの」


「いいの? そんな事して」


「当然」


 えっへんとふんぞり返ってるところを見ると、どうやら大丈夫らしい。

 これが娘の権限というものか。


「ただいま戻りました」


「さあ、着せてあげて」


「はい」


 ただ、メイドさんが持ってきたのは、どうにも薄い布にしか見えなかった。


「では、歴様」


「ちょっと待ってください」


「同性ですし、大丈夫かと」


 すぐに着替えさせようとしてくるメイドさんは、当然ながらみふだちゃんサイドらしい。


「うん。わたしは気にしないよ」


「僕が気にするというか……」


 僕っ子という事がバレても、僕が元男という事はバレていない。バレようがない。


 普段は女装しているようなもので、学校でもなければほとんどスカートなんて履かないのだが、メイドさんが持っているものは、どう見ても探索に向いていないような装備だ。

 まるで、ドレスみたいな。


「他になかったの?」


「今最高のものは他にはないかな」


「あんまりヒラヒラしたのは……」


「きっと似合うよ」


「……」


「見てみたいなぁ。歴ちゃんが装備した姿」


 みふだちゃんは期待に満ちた目で見てきた。


 ついでにメイドさんも早く着せたいみたいな感じでソワソワしている。


 なんなんだこの家。


「着るだけ。着るだけね。制服を伸ばしちゃ悪いから」


「やっちゃいなさい!」


「かしこまりました!」


「完全に悪役のノリだよね!」


 見事な早業で、メイドさんは僕の制服をひん剥くと、あっという間にドレス姿に着せ替えて見せた。


 なんだか、制服の時よりも肩やら背中やらが露出している、防御力に不安のある装備だった。

 これで最高傑作とかなんの冗談だろう。スキルとか魔法とかは、僕の常識をぶち壊してくれるもののようだ。

 そういえば、どう見てもサイズ感が合っていないカードの中にスライムが封印されてたしな……。


「ねえ、やっぱり他の」


「かわいいよ! かわいいよ、歴ちゃんかわいい! やっぱり素材がいいからかな」


「そうですね。お嬢様よりお胸もあるので、華があります」


「うるさいうるさい! そこはいいの。わたしはスマートなんだから」


「……」


 胸の大きさは気にしていたらしい。


 そこのところは反応に困る。


「けどまあ? これで一番いいヤツというのなら、しばらく使ってもいいかもしれないかな」


「でしょでしょ! 着ればわかるんだよ!」


「ええ。とてもお似合いですよ」


「あ、ありがとうございます」


 別に、性能が優秀ならデザインは気にしないし。

 そこはゲーム好きな男らしくね。


「あれ? みふだちゃんは?」


「わたし? わたしは同じヤツだよ。ほら」


「わ、わ!」


 急に制服を脱ぎだしたので慌てて目をつぶると、みふだちゃんは制服の下に装備を着ていた。


 全く気づかなかった。


「同じクラスなんだから、着替えの瞬間だって見てるはずなのに、いっつも照れてるよね。歴ちゃんって照れ屋さんなんだね」


「そうじゃないけど……」


 照れ屋さんなんて、言われ方をするものではないのだが、なんだか悔しい。


「そんな水着を着てきたみたいな……」


「いつでも探索できるようにね」


「何故……」


 でも、装備を自分で買わず、いいものまでもらってしまったとなると……、


「これで本格的に探索者だね」


「この装備で本格的とか言っていいの? 怒られない?」

いつも読んでくださりありがとうございます。


「面白い!」


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