第20話 お休み! 3人の女子(?)はどこへ行く?
「つき合って1日記念のデートですね。お姉様、みふだお姉様」
「そうだね」
「つき合ってるだなんて、そんな!」
「あたしたちはつき合ってますよ。ねえ、お姉様」
「そうだね」
正直、何が起きたのか僕もよく覚えていない。
ただ、気づいたら今日がやってきていて、デートという名のダンカ用ブランクカード探しの旅を始めていた。
昨日のイベントより少しはダンカプレイヤーっぽいのだが、両脇を美少女探索者に囲まれているというのはやはり落ち着かない。
そして、微妙にではあるが、距離感が縮まってしまった気がする事に頭を抱えてしまう。
「嬉しそうですね。歴様」
「そう見えるならライラさんが楽観すぎるだけです」
「わたくしは主人の幸せを常に願っていますから」
「そうですか……」
主人の幸せと楽観さのどの辺がつながっているのだろう。
ああ、からかいじゃない何かがほしい。
まあ、こんな状況になっても強く抵抗していないのだから、僕としても悪いと思っていながら辞めたいとは思っていないという事なのだろう。
自分から手遅れに突っ込んでいるともいう訳だ。
とはいえ、千伊香ちゃんに流されている気がしても、千伊香ちゃんの思惑が全てがうまくいくという訳ではない。
「売り切れですね」
「売り切れだ」
「残念、ここも」
ライラさんに車を飛ばしてもらったものの、どこもかしこも売り切れ売り切れ。
ダンカのパックは1パックとして購入できなかった。
別段、神絵師の美麗イラストが描かれている訳でも、人気キャラのレアカードが封入されている訳でもないのにパックは買う事すらできなかったのだ。
「そもそも、捕獲用のアイテムをパック売りしているところからしてどうなの?」
「まあ、高レアのブランクカードを欲しがる人は多いからね。このやり方が定着している以上仕方ないよ」
「これを? 本当に?」
僕からすれば、こんな枠だけ豪華なカードを手にしてもどうしようもないのだけど。
「え!? なんで歴ちゃんが持ってるの?」
横から乗っかるようにみふだちゃんが聞いてきた。
爆死すら許されなかったというのに、とんでもないいい反応をしてくれてちょっと嬉しくなってしまう。
「カードダンジョンで買った時に当たったんだ」
「サーチされてなかったの?」
「されるようなものなの?」
「これはなかなか出ないSRだよ。ばら売りされてるところは大抵こっそりといいものが抜かれているのに、歴ちゃん幸運だなぁ」
「さすがお姉様。審美眼があります」
「残ってたのを買っただけなんだけど……」
そんなにすごいものなのか、この枠が豪華なだけの同じカード。
まあ、他のカードゲームだって効果は同じでもレアなカードを求めて何箱も買っている人がいる訳だし、考えてみれば現象としては同じ、なのか……?
本当か? 違うよな。絶対違う。これは何かがおかしい。
僕は考える事を早々に諦めた。
そして、ダンカのパックを探すのも潔く諦めて、一休みする事にした。
ライラさんは車に残っているとの事で、僕とみふだちゃん、千伊香ちゃんの3人で自販機で飲み物を買ってベンチで休む。
ぼっちの僕からすれば、女子とこんな本当のデートみたいな事ができる日が来るとは思ってもみなかった。
小さい頃から、もっと百合っぽいイベントはあってもよかったと思うんだが、なかったせいで耐性がない。
ま、無理やりで強引ないちゃつきなんですけどね、この人たちは。
「さて、少しは頭冷えた?」
「冷えません。お姉様とデートできるなんて熱が出ます」
「なら帰って早く寝た方がいいね」
「お姉様とですか!?」
「え?」
興奮気味に聞いてきた。
なんだろう。なんだかいつもよりもテンションが高そうに見えるのは気のせいだろうか。
「だ、ダメだよ。そんな、そんなの!」
みふだちゃんも少し語気を荒くして、千伊香ちゃんをにらんでいる。
おや、仲良くなったと思っていたのにどうしてしまったのだろう。
「でも、ここでそんなお誘いなんて」
「違うよ。歴ちゃんはそんな子じゃないから」
「でも、みふだお姉様も……」
僕越しににらみ合っていた2人は僕の膝の上でこそこそと話を始めた。
探索素人だから省かれているのか? 仕方ない。
にしてもこんなに買えないとは思っていなかった。
みふだちゃんが大量に持っていたし、1パックは買えていたからどこかで買えると思っていたが、どうやら甘かったらしい。
「誘ってもらったからって、もらってばかりじゃ気が引けるな」
「買えないものは仕方ないって」
「そう言ってもらえると少しは救われる」
SRが出たとはいえ一度だけ。
何気なくぼーっと周りを見てみると、女の子のグループが多かった。
そして、どういう訳かやたらと距離感バグっている子が多いように見える。
何かに当てられたように、人目もはばからずくっついている。
そういえば、ここに来る前に最後に行ったダンジョンでも女性探索者が多かったような気がする。
あまり見ない光景に自然と目で追ってしまう。
「歴ちゃん、知ってた?」
「何を?」
突然みふだちゃんから真意のわからない質問をされ聞き返したものの、みふだちゃんは目線をそらして答えてくれない。
何かしてしまったのだろうか。
「ちょ、ちょっと飲み物買ってくるね」
「え、みふだちゃん? もうあるよ?」
「いいんですお姉様。みふだお姉様はまだ覚悟が決まっていませんから」
「覚悟? 覚悟って何? ねえ、みふだちゃん?」
僕の呼びかけに答える事なく、みふだちゃんはそそくさ行ってしまった。
これでは千伊香ちゃんと2人きり。とても気まずい。
こんな状況では昨日の事が思い起こされる。スライムまみれになっていたあの時。
自然、目が合って心がそわそわして落ち着かなくなる。
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