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第15話 衝突! 私のヒロインだもん!!

 とんでもない形でとんでもないヤツがやってきてしまった。


 夢野千伊香さん。昨日、ダンジョンでダンカをした相手だ。


 家の車をとんでもない形にぶっ壊されたせいもあって、みふだちゃんがかなりムッとしている。


 僕としても、学校で再会するとは思っていなかった。しかも、車の上から降ってくるなんて考えもしなかった。


「えっと、こちら夢野千伊香さん。ダンカプレイヤーです」


「夢野千伊香です」


「それで、こちらが高見沢みふだちゃん。ダンカプレイヤーで、ぼ……、私の友だちです」


「高見沢みふだです。よろしくね」


 みふだちゃんが少し機嫌を直したかと思ったら、今度は夢野さんの方が不満そうにムッとし出した。

 僕は何かミスをしでかしているのかなぁ……?


 この2人、気まずすぎる……。


「そ、それで、夢野さんは同じ学校だったの?」


「いえ。転校してきました!」


 元気に返事をする夢野さん。

 スカーフの色が緑だから、一年後輩みたいだ。ただ、昨日の今日で転校してきたと……?


「昨日は私、制服じゃなかったと思うけど、どうしてこの学校だってわかったの?」


「愛の力です」


「愛……?」


「……どうせ発信機でもつけてたんでしょ」


「何か言いました?」


「別にー」


 めずらしくみふだちゃんがボソボソと何かをつぶやいた。

 あからさまなほどつまらなそうにそっぽを向いている。


 あんまり知らない相手だし仕方ないと思うけど、僕と2人の時から比べて態度おかしくない?

 昨日のギルドでもそんなんじゃなかったし。


 本当、何かしちゃったかな……。


「えっと。それじゃあ、よろしくね、夢野さん」


「はい! よろしくお願いします。これでおそろいの制服ですね。どうですか? 似合ってますか? お姉様」


「お姉様じゃないから。なんなのその呼び方」


「お姉様はお姉様です。あたしの事を徹底的にめちゃくちゃにするという、初めてを奪った方なんですから」


 とろけたような顔をして僕にベッタリとくっついてきた。

 なんだかウィッチみたいだ。

 僕を姉と慕うのは1人で十分。これ以上増えられては困る。


 どうしよう。変な子とダンカをしてしまい、よくない勝ち方をしてしまったらしい。

 うーん、困った……。困ったなぁ……。


 謎に熱っぽいのか、くっついてくる夢野さんの体が熱い……。


「それで、感想は」


「はいはい。似合ってるから、離れて離れて」


「うふふ。嬉しいです。でも離れません。お姉様とあたしは特別な縁で結ばれているんですよ」


「ですよ、って言われても……」


「知らないみたいなので教えて差し上げました」


「知らないよそんなもの」


 それでも構わずほおずりしてくる。


 助けを求めようとみふだちゃんに視線を送ると、みふだちゃんから放たれているオーラがドス黒いものに変わっている気がした。

 何故だ。この子の態度がぶりっ子みたいだからか。


 僕としても落ち着かせたいけど、ウィッチと違ってカードに戻す事ができない。


「みふだちゃん。ちょっと助けて」


 助けを求めると、みふだちゃんはキラッと輝いた後、さすがの手際で離してくれた。


 今なんか光ったように見えた……?


「お友だちはいいけど、ベタベタしすぎだよ。歴ちゃん嫌がってるでしょ。ダンカしてくれるのはいいとしても、限度があるよ」


「そうそう」


 そういうことじゃ。

 女の子と仲良くできるのは、転生当初に望んでいた事だけど、あんまりベタベタされるのは困る。


 ただ、僕から引き離された夢野さんは、反対側に回るとまたしても僕にくっついてきた。


「嫌です。離れません。お姉様とあたしは特別な関係なんです」


「特別ってどう特別なの?」


「それは……、もう! 言わせないでください!」


 顔を真っ赤にして叩かれた。

 探索者からの攻撃なので普通に痛い。


 くねくねしながら照れたような、恥じらうような仕草をしている。

 うぅ……、違うんだ。僕の求めていた女の子に好かれるって、こういうのじゃないんだよ。

 もうちょっと程よい距離感がいいんだよ。


「ふーん。言えないんだ。そんな脆い関係なんだ」


「言えます。言えますとも。梨野と夢野で、野、野でしょう? こんなもの、運命以外のなんでもありません」


「意外と多いでしょ。野、入ってる人」


「いやん! そんな事ないですって!」


 またしても叩かれた。

 マジで痛い。あざになるんじゃないかな。


 しかし、野って多いよな?

 佐野とか、野原とか、矢野とか、結構いそうだけど。


「しつこい!」


 と、いろいろ考えながら必死に格闘していると、またしてもみふだちゃんが引きはがしてくれた。


「とにかく! あなた学年が違うでしょ。いい加減自分の教室に行った方がいいと思うけど」


「なら休み時間や放課後を一緒に過ごします。いいですよね」


「残念。放課後はわたしと一緒だから。ね、歴ちゃん」


「うん」


 みふだちゃんのテンションがいよいよ夢野さんに引っ張られている気がする。

 とはいえ、今日もダンジョン探索する予定なのでみふだちゃんと一緒だ。


「ならあたしも行きます! くっついていきます!」


「困るんだけど」


「ほら、無理だって」


「行きます! なら、くっつかないで行きます!」


「それがふ、うっ」


 左から夢野さんに引っ張られ、それを見て右からみふだちゃんに引っ張られた。

 左右から同時に僕を引っ張るようにしてくる。


 ああ。悪くない。これは、モテる男みたいで悪くな……、いや、待て、痛い! 2人とも探索者だからかなりに痛い!


「腕が取れるって」


「歴ちゃんはわたしと一緒なの」


「あたしがお姉様と行きます!」


「い、いいじゃん。ダンカしてるんだから一緒に連れてってあげててててて!」


 先に離してくれたのはみふだちゃんだった。


 そのままの勢いで夢野さんに衝突した。


「あーん! お姉様はあたしのところに収まるのがいいのですね」


「違う違う! そうじゃない」


「いいよ。そういう事で」


 静かにみふだちゃんは言った。

 その目には何やら闘志を燃やしているように見える。


「ふん。あたし達の愛が本物だって認めさせてあげるわ」


「みんなで仲良くしたいだけなんだけど……」

いつも読んでくださりありがとうございます。


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