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第13話 挑戦! ダンカプレイヤーへ挑め!!

 夢野さんに手を引かれて、僕はカードダンジョンの中へとやってきていた。


 ダンカのバトルフィールドはダンジョン。外でやっては周囲の人に危険がおよぶからだ。


 それにしても、女の子とダンジョンでダンカをできるなんて夢みたいだ。

 彼女とオタク趣味を共有する事ができれば死んでもいいかもしれない。

 半分くらいだが、それが実現したようなものだ。


 こんな事を考えているとみふだちゃんに怒られそうだな。みふだちゃんも女の子だし……。


「あの」


「どうかしました?」


 夢野さんが足を止めて話しかけてきてくれた。


「もし、ルールがわからないようでしたら説明しながらやりますけど、どうですかね」


「ルールは少ししかわかってないので、お願いしてもいいですか?」


「大丈夫ですよ。あたしもまだまだ把握できていないところが多いですから、ゆっくりやりましょう。わかってる範囲なら教えるのも得意なんです」


「それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうと思います」


「甘えちゃってください」


 えっへんと胸を張っているところなんてなんともかわいらしい。

 こう言ったら失礼だろうが、見た目からしても、とても探索者試験に合格できるような人には見えない。

 それでもダンカをやっているという事は立派な探索者なのだろう。


 それに、せっかくの申し出だ。断るのも申し訳ない。

 ダンカ周辺の知識はみふだちゃんが教えてくれたが、まだ実戦はしていない。

 僕としても、こんなに早くできるとは思っていなかった。


「それじゃあ、まずは準備です。使うカードを用意したら、ひとまずゲーム開始にしましょう」


「デッキの枚数はどうしたらいいんでしたっけ」


「特に制限はありませんよ。あるとすれば一つだけ。モンスターカードを最低一枚入れる事だけ守ってもらえたら、それ以外はなんでもありです。この辺もやりながら覚えていけば大丈夫です」


「ありがとうございます。それで、勝敗は負けを認める形でしたっけ」


「バッチリじゃないですか」


「いえいえ。付け焼き刃ですけど、合っていて安心しました」


 決着は投了、と。なんだか将棋みたいだな。

 詰んだ事を自分で認めないといけないとは、なんと精神性を求められるゲームなのだろう。

 僕の知っているカードゲームは投了ありだけど、トドメを刺せる方式だったのに。


 僕はルールのおさらいをしながらカードを取り出した。

 持っているカードが3枚だけなので、足りないかと思ったけど大丈夫だった。

 それにしても、デッキ構築無制限とは、ふざけたゲームだぜ。


「用意できました?」


「はい。できました」


「そうしたら、モンスターカードを引くまでドローして、モンスターをお互いの場に伏せましょう。残りのカードを山札に戻して、先攻のスタートです」


 引いたモンスターは、当然せんちょー。僕は場に伏せる。


「ありました」


「こっちもあったのでゲーム開始! 梨野さんが先攻でいいですよ」


「いいんですか?」


「はい。モンスターのスキルやスキルカードを使っちゃってください」


 ゲームが始まり、お互いの場のモンスターが公開される。


 相手の場には人型の蝶みたいなモンスターが一体。

 そして、僕が引いてきたのは狂戦士……。今、場に出すとせんちょーも僕も巻き添えを食らいそうだ。

 攻撃範囲が広過ぎんのよね。

 そして、僕のスキルは基本的に自分への効果と自動発動効果。


「先攻の攻撃は無しですよね?」


「先攻は無しです。後攻の最初の番からできるようになります」


「それじゃあ、これでターンエンドです」


「ほう。モンスターを出しただけ……」


 分析するように1人つぶやく夢野さん。

 カードを引き、ニヤリと笑った。いいカードを引いたのかもしれない。

 僕のデッキは持っているモンスターの関係で、出して殴るくらいしかやる事がない。さて、夢野さんは何をしてくるか。


「……!?」


 気づくと僕の周りには蝶のようなモンスターが5体ほど取り囲み、光る粉のようなものが宙に舞っているせいで、視界を奪われていた。


 なんだ、何が起こった? これが引いたカードの効果?


「ふふっ、ふふふふふ。あーはっはっはっは」


 突然、夢野さんが高笑いを上げた。


「夢野、さん……?」


「そうそう。その顔。ゆっくりとゲームのルールを教えてもらえると思っていたら、急にモンスターに囲まれて困惑している顔。初心者っていいわよね。一方的に勝てるから、あたし、大好きなの」


 顔を恍惚とした表情に染めて、うっとりとした顔で僕の事を見てくる夢野さん。

 先ほどまでの雰囲気は毛ほども残っていなかった。


「何を言って……」


「あたしが使ったのはマリアンヌ様のスキル。分身と鱗粉。あなたは騙されたのよ。そして、あたしの必勝パターンにハマったって訳」


「そんな」


「勝てる時に勝つ。勝てる相手に勝つ。最高だと思わない?」


「大事だとは思いますけど……」


「あははははは!」


 豹変した夢野さんは、嘲笑するように頭を押さえながら笑っている。


「動きがずっと初心者そのものね。モンスターも少しは進化してるみたいだけど、使っているのはただのスライム。あたしのマリアンヌ様の前じゃあランクも能力も足りてないのよ。マリアンヌ様はランクE。そのスライムは高くてもFってところでしょ。なら、あなたのランクもF相当。分身コンボで終わりだわ」


 見ているところはなかなか鋭い。

 どうやら本当に騙されたらしい。


 先ほどまでの優しさが嘘のように手のひらを返されてしまった。


「言っておくけど、モンスターは破壊されたら一巻の終わり。もうブランクカードには戻せないの」


「え……?」


 恐ろしい事を言う。

 それじゃあ、せんちょーも破壊されたらもう戻ってこられないって事か?


「ようやく事態がわかったみたいね。初心者に勝つだけじゃなく、せっかく封印したモンスターも破壊して水の泡にする。いつもいつも思うけど、たまらなく愛おしいわ」


「人の苦労を嘲笑うような行為。人の心を持ってないのか?」


「人だからよ。他人の不幸は最高のエンターテインメントでしょ?」


 見た目のかわいさに油断させられた。

 まさかこんな性格だなんてまったく考えもしなかった。


 くそう。これは、どんなに優れた名探偵でも見抜く事はできない罠じゃないか。


「ただ、5体に分身するのはパワーを使う。力を使ったマリアンヌ様はこのターン攻撃ができないわ。命拾いしたわね。でも、何を引いても、初心者が打開できる盤面じゃない。あなたの番よ?」


 仕方ない。

 あまりこういう事はしたくなかったのだが、僕もせんちょーを破壊されては困る。

 せんちょーは僕に初めてできた手持ちモンスターだ。


 アレを出すか。


「何よその顔、まさか初心者に、この状況を打開する術があるって言うの?」


「どうだろうな。私のターン!」

いつも読んでくださりありがとうございます。


「面白い!」


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