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第11話 仮免発行! 新たなるステージ!!

 翌朝。


 妹が起きてくるより先に僕は目を覚ました。

 が、腹の上には待機組が一体。


「……ウー」


「待ってブルブル。しー、静かに。ラフィーナちゃん起きちゃう」


「ウ?」


 犬系ペットのブルブルさんはなんとなく僕の気持ちを察したらしく、静かにしてくれた。


 昨日の夜はかまってやれなかったが、朝もあまり相手してやれない。

 軽く頭を撫でてやり、横に置いてちゃっちゃか着替える。


 と言っても、これまでの制服ではなく、みふだちゃんのメイドさんに用意してもらった新しい制服だ。それでも、手際よく採寸されたせいでサイズはぴったりだった。

 思い出すと、なんとも複雑な気分になる。


 思考を追いやり部屋を出る。


 リビングでは、僕の肉体が変わった事をすでに知っている母さんがなんて事なく朝食を準備してくれていた。

 ありがたくいただき僕はさっさと家を出た。


 外には、一般人の住んでいる住宅街には似つかわしくない高級そうな車が鎮座していた。

 どなたか引っ越してきたのかしら。


 知らんぷりして通り過ぎようとすると、後部座席の窓が下がる。中からは、みふだちゃんの顔が現れた。


「ちょっと、わたしわたし! 知らない人じゃないよ」


「なあんだ。みふだちゃんか。おはよう」


「おはよう。歴ちゃん。さあさ、乗ってくださいな」


 朝から妙なテンションだ。

 朝の強くない僕にはかなり厳しい相手だと思う。


「乗ってくださいなって、どうしたの」


「それはこっちのセリフ。どうしたの、じゃないよ。一緒に登校しようって送ったじゃん」


「つい、うっかり忘れてた!」


「もう! 歴ちゃんったら!」


 最後の一文が不穏すぎて、他の部分に目がいってなかった。


 しかし、車登校してるヤツがいるって話は聞いた事がなきにしもあらずだったが、それまたこの高見沢氏だとは知らなかった。

 おかしいな。僕が通っている高校は普通の高校のはずなのに、どうしてこんなヤツが通ってるんだろう。


「せっかくのお誘いだけど……」


「歴様」


 断ろうとした矢先、僕の隣には昨日のメイドさんが立っていた。

 足音も立てずに近づいてくるとは、なかなかやりおる。


「な、なんでしょう」


「今の歴様は探索者資格無免許の身。探索用の道具類を持ち歩いている姿が目撃されるのはあまりよろしくないかと」


「なるほど、一理ある」


 学校へ持って行こうとした訳ではない。だが、事実として、今の僕が装備類を持ち歩くのは厳禁だろう。

 無資格でダンジョンに潜るのとは別の理由で、逮捕だー! という展開になりかねない。


「でも、それは下校時にという事でいいのでは?」


「何をおっしゃいます。スキルを保有している事が知られる事も同義でしょう」


「う……」


 僕の見た目は大きく変わってしまっている。

 世間の冷たい視線にさらされては、豆腐メンタルの僕には耐えられないかもしれない。


「わかりました。ありがたく申し出を受けさせていただきます」


「やったー!」


 喜ぶみふだちゃんの声を受けながら、僕は車に乗り込んだ。




 学校でも、いい知らせ? とやらについて、みふだちゃんは教えてくれなかった。


 僕は母からもらった剣を回収するため、みふだちゃんと別れて下校。

 またしてもメイドさんと2人きりになってしまった。


「えっと、メイドさん」


「ライラ、とお呼びください。お嬢様を呼ぶように、ライラちゃんでも構いませんよ?」


「……、ライラさん」


「はい。なんでしょう」


 名前を呼ぶと、何故か少し残念そうな顔をするライラさん。

 おそらく年上の女性を相手にちゃん付けで呼ぶ度胸はない。


「あの、僕と2人で気まずくないですか?」


「いいえ、全く。むしろ、かわいらしい方と同じ空気が吸えるのであれば、わたくしはどんなところでも駆けていきます」


「冗談ですよね?」


「どうでしょう」


 顔は笑っているのに、目がマジだった。怖い。

 みふだちゃんもアレだが、この人の影響だったりするのだろうか。


 これ以上考えるのはやめておこう。

 身の危険を感じるが、僕はみふだちゃんの家に歩いて行けない。


「それじゃ、お願いします」


「かしこまりました」




 みふだちゃんの区画とやらにあるお屋敷的な建物。


 僕はライラさんが雑事を済ませている間、昨日と同じ部屋を目指した。

 ドアを開けようとしたところで、中から聞こえてくる人の声に気づいた。

 誰か、みふだちゃん以外にもいるらしい。


「はい。もう少しの間、予定は空けさせていただきたく、はい」


「……」


 相手の声は聞こえない。電話だろうか。


「すみません。都合のいい事を言っている事はわかっています」


「…………」


「……………………」


 あれ、静かになった。


 しっかり聞こうと、ぐっと耳を寄せたところで、ドアが開いた。


「うおっ」


「大丈夫?」


「あっ……」


 体勢を崩したところで、みふだちゃんに受け止められた。

 顔を上げると、笑顔のみふだちゃんと目が合う。


「や、やっほー」


 笑顔で手を振ってみた。

 気まずい。こんなタイミングで開くとは思ってなかった。


「やっほー。到着してたんだね」


「うん。……盗み聞きしたみたいでごめん」


「やっぱり聞こえてた? ごめんね。待たせちゃって。歴ちゃん来るってわかってたのに」


「責めないの?」


「探索者は、情報を取られる側にも問題があると考える生き物さ」


 なんか男前だ。

 ちょっとキュンとしてしまった。


 いやいや、何を考えているんだ僕は。そんな邪な気持ちを抱いたりして。


「でも、学校は休んでないよね?」


「あ、えっと。別の要件だよ」


「ギルドとか?」


「そうそう」


 自由な荒くれというフィクションのイメージが強いだけに、さっきみたいな会話は少しそぐわないところもあるが、現実なら仕方がない。


「探索者と言うのも大変なんだね」


「そうでもないよ。普段はね。ささっ、この話はここまで」


 とそこで、僕は軽くひょいっと抱きかかえられると、部屋に連れ込まれた。

 そのまま優しく椅子に座らされた。


 びっくりした……。心臓がドキドキしてる。何されるのかと思った。


 すると突然、パーンッ! と何かが弾ける音がした。


「な、何?」


「なんと、歴ちゃんの探索者仮免発行が完了しました!」


「仮免……?」


 はて、僕は何かしただろうか。


「仮免って前に何か言ってたっけ?」


「一部制限付きだけど、これで晴れて探索者って事です。歴ちゃんずっと心配してたからねー。いやーよかったよかった」


 どうやら完全に不法侵入的探索者だったところから、探索者予備軍にランクアップしたという事らしい。


 みふだちゃんの根回しが早過ぎて恐ろしいな。

 それに僕、こないだ試験に落ちたばかりなんだけど。


「あ、いい知らせってこれ?」


「そ。ダンジョン業界は優秀な人材に飢えてますからね。Aランクモンスターと渡り合い、封印までしてしまう実力者は手放せない訳ですよ」


「そ、そうかな?」


「制度上できなかっただけで、探索者として認めたかったと思うよ」


 みふだちゃんの太鼓判。


 Aランクモンスターを前に、僕をかばいながら戦えていたみふだちゃんの言葉だ。信じる他にない。ただ、みふだちゃんはみふだちゃんで一体何者なんだろう。


「でも、何か変わるの?」


「変わるよ! これで外のダンジョンにも行けます! そして、行きます!」

いつも読んでくださりありがとうございます。


「面白い!」


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