第六話 生徒会
前回、俺は強制的に新聞部に入れられたのだった。もう、怒る気にもなれない。
「はあ~」
「何、悩んでるのさ隼人」
馬鹿が聞いてきた。
「バカにはわからない悩みだ」
「それは僕の事がバカって言いたいのかい?」
「当たり前だ」
確認するまでもなく当たり前だ。
「隼人泣かす!」
「無理だ、諦めろ」
機嫌が悪いからなどうなっても知らないぞ。
「彩崎、呼んだぞ。あの事を書いてな」
劉斗がそう言った。その瞬間ロッカーの中に隠れる馬鹿。あの事って何だ?。
「来たわよー!」
彩崎が新聞部部室に入ってきた。馬鹿の入っているロッカーがガタンと音をたてた。
「あれ? 洋平は?」
「ロッカーの中だ」
「隼人、何でアイツはそんなとこに入ってるの?」
「さあな」
俺も知りたい。
「洋平」
「劉斗!」
劉斗がロッカーの方へ近づいて行く。
「さっきのは嘘だ」
「シャアアアアァァァァ!!」
馬鹿が飛び出してきた。
「遅い」
飛び出した馬鹿を劉斗が床にたたきつける。
「ぐはっ」
何やってるのやら。
「それで入ったはいいんですけど普段何をやってるんですか?」
桜崎は普通にあの先輩と話してる。こっちは無視かよ。まあ、懸命な判断だが。
「色々」
アバウトな答えだ。先輩しゃべるの面倒って思ってないだろうな。
「い、色々ですか」
桜崎ですら困惑している。
「うん、色々」
「そうですか」
「うん~」
「なら、これから何をするんですか?」
「生徒会に入部届を出す~」
これからか唐突かつ脈絡がない。
「あれ? 普通先生とかに出すんじゃないんですか?」
「ここ、特殊」
こんな部がある時点で特殊なのは疑いようがない。それに生徒会がほとんど権力を持ってるって言ってたな。
「じゃあ、さっそく入部届けを書きましょう」
「はい、これ~」
先輩が人数分の入部届けを渡してきた。もう、逃げられそうもないので仕方なく書く。
「みんな、新聞部に入るの?」
何も知らない綾崎が聞いてきた。綾崎にことの成り行きを話す。
「へ~。ねえ、洋平も入るの?」
「そうだろうな。あの様子なら」
向こうで騒いでいる馬鹿を見ながら言った。
「そう……。なら、私も入る」
「そうか、がんばれよ」
「へ? 何を?」
「いろいろ」
話しているうちに書き終わった。
書き終わってとりあえず先輩に入部届けを渡す。本当に劉斗や赤羽も書いていた。いったい何が目的なのやら。
「みんないい名前だね~」
俺はアンタの名前知りませんけどね。先輩が気づいたように言った。
「私、狭間由宇。よろしく~」
ようやくお互いの名前がわかった。遅すぎると思うのだが。てか遅いな実際。
「じゃあ、行こう~」
てなわけで生徒会室へ。この時気づいたのだが狭間先輩は桜崎や彩崎達と違ってスカートがロングになっていた。聞いたら改造らしい。いいのか風紀委員職務怠慢じゃないのか。これも聞いたら特例だそうだ。一体何があるのだろうかこの先輩に。あとで調べてみよう。
「さて、そろそろ教えてもらおうか。なんで、新聞部に入ったんだ?」
生徒会室に向かう途中で劉斗に聞いた。
「何のことだ?」
「とぼけるなよ。お前と赤羽がただで新聞部なんかに入るわけないだろ」
正直に来ても答えるわけがないがとりあえず聞いておこう。
「赤羽にでも聞いたらどうだ?」
「あの赤羽が素直に言うわけないだろ」
「それもそうか。そうだな、我の狙いはあの先輩だ」
珍しく答えた。本当に珍しい。
「狭間先輩に何かあるのか?」
正直、劉斗や赤羽が狙うような人間には見えないのだが。
「直にわかる」
「おい!」
肝心なところを劉斗は言わなかった。一応、赤羽にも聞いたがうまくはぐらかされただけだった。
いったい何があるのか。関係があるとすればあの機械かパソコン関係……ハッカーとか? まさかな。マンガじゃあるまいし。そんわけないな。
そうこうしているうちに生徒会室がある棟に入った。この棟は生徒会関係の組織の部屋が集まっている。
「え~っと、生徒会室は最上階の四階でしたよね?」
「ええ、そうよ」
生徒会室はこの棟の四階を丸々1フロア全てを使っている。なので生徒会室はかなり広いらしい。
階段を上っていく。三階くらいまで上ったところで桜崎が異変に気がついた。
「あれ?」
「どうした桜崎?」
「先輩がいません」
確かにいない。後ろを歩いていたはずだが。
「さっきまでいなかったか?」
「いないんですよ」
「ちょっと下の階を見てみるか」
1階下に降りる。
踊り場のところで人が倒れていた。……狭間先輩だった。
「どうしたんですか!?」
桜崎が駆け寄る。
「うう~」
「いったいどうしたんです?」
全員に緊張が走る。
「廊下をあるいて階段を上った」
「はい」
「そして、ここまで来て重大なことが起きた」
「いったいなんです!」
「簡単に言えば、体力切れ~」
全員が一気に脱力する。
「どんだけ体力ないんですか!!」
ツッコミを入れてしまった。
「ちょっと、運動不足な、だけ~」
「ちょっとどころじゃないですよ!」
たった数分の距離を歩いただけでこれじゃどんだけ体力ないんだよって話だ。登下校はどうしているのだろうか。
「そんなことより生徒会室に行かなきゃ」
「そんな状態でどうするんです?」
「……おぶって」
「僕が――」
馬鹿がそういった瞬間、綾崎の拳が馬鹿の顔面に突き刺さった。
「アギャア!!」
馬鹿が空中で三回転し床に頭から堕ちてそのまま階段を転がり落ちていった。
「アンタは絶対下心があるでしょうが!!」
階段下に落ちた馬鹿に綾崎が叫んだ。聞こえてるか疑問だな。
必然的におぶるのは俺か劉斗になると思うのだが多分劉斗はやらないだろうな。
「我はやらんぞ」
案の定拒否した劉斗。
「はあ、わかりましたよ」
狭間先輩の前にで屈む。
「じゃあ、つかまって下さい」
「うん~」
狭間先輩が俺に体重をかける。驚く程に軽かった。きちんとご飯食べているのだろうか。足なんて物凄い細い。
「よっと」
足を持って狭間先輩が落ちないようにして立ち上がる。……さて、背中に幸せな感触があるのだが……無心無心だ。…………今なら真理を理解できそうだ。
「隼人君大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
別の意味で大丈夫ではないが。
「なら、早く行くわよ」
赤羽が階段に足をかけて言った。
「わかったよ」
ゆっくりと歩きだした。
「乗り心地はどうですか?」
一応先輩なので気を使う。別の意味でもだが。
「うん~、いいよ~」
「そうですか。今度は体力つけてください」
「うん~」
本当にわかってるのだろうかこの人は。わかってないと思うな。
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階段を上がり四階生徒会室前。そこで狭間先輩を下ろす。
「ありがとう~」
「どういたしまして」
「うらやま――いやお疲れ」
馬鹿の奴羨ましいって言いかけて彩崎の殺気を感じて言い直しやがった。
「大丈夫ですか?」
「ああ」
「結衣大丈夫よ、コイツ体鍛えてるから」
「彩崎、余計な事は言うな」
「いいじゃない」
「よくねえよ」
そんなに鍛えてないからな。鍛えてるように見えて。
「ほらほら、早く入らないと日が暮れるわよ」
「赤羽の言うとおりだ。隼人早く入るぞ」
「わかってるよ」
生徒会室の扉を見る。どこかの屋敷の書斎の扉みたいだな。
コンコン
「失礼します」
ノックをしてから入る。中は真ん中に会議用と思われるテーブルがおいてあり。その奥には扉が幾つかあった。下校したのか人はいなかった。
「おや、お客さんですか?」
黒髪でメガネをかけた男が現れた。ネクタイは緑で三年だ。
「新入部員~」
狭間先輩が言った。簡潔すぎるだろ。
「おや、良かったではありませんか狭間さん」
「入部届け~」
「わかりました会長を呼んで来ますので、少々おまちください」
メガネをかけた男が奥の部屋に入って言った。あれだけで狭間先輩の言いたいことがわかった方に驚いたが。
「あの人確か入学式の時にいた――」
「副会長の永城雄太だな」
劉斗が言った。俺なんか副会長が入学式にいたなんか知らなかったのに何で名前まで知ってるんだよ。
「すみません、お手数ですが奥に入って来てくれませんか?」
「いいよ~」
狭間先輩が永城先輩がいる奥の扉に入って行った。俺達も続く。
「ふ~ん。こいつらが新聞部に入った酔狂な連中か。よくあんなめちゃくちゃな部に入る気になったな」
奥の席で座っていた我が校会長、佐藤帝が言った。ネクタイの色が緑で三年。油断ならない笑みを浮かべている。てか、この人めちゃくちゃって言ったぞ。
「そうでしょ~」
物凄く誇らしげに言う狭間先輩。誇れることじゃないと思う。佐藤会長も思ったのか言った。
「まったく誇れるものじゃないからな」
「帝そんなことより入部届け」
「マジだったのか。これ見るまで嘘と思ってたぞ。まあ、個人の自由だから何も言わないがな」
入部届けを受け取った佐藤会長が言った。本当に新聞部って何だと思われているのだろうか。
「じゃあ、確認するぞ」
佐藤会長が入部届けを見ていく。すばやく見ていっていたがとある一枚で止まった。それが誰のか俺の方からじゃ見えない。
「おっとこれはこれは」
「帝?」
「……いや、なんでもなかった」
佐藤会長が判を押した。
「これでよし。お前ら帰っていいぞ」
「失礼しました」
俺たちは生徒会室をあとにした。
「なるほどあの会長一筋縄ではいかなそうだな」
「あら、それがいいんじゃない。そっちの方が面白いわ」
赤羽と劉斗の物騒な会話は無視する。関わったら酷い目に遭うのは目に見えている。
「じゃあ、おぶって~」
狭間先輩が当然のように言った。もしかして俺がおぶるのは決定事項なのか? 双思いながらもおぶる。背中に幸せな感触が……無心無心。
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「じゃあ、明日からよろしく~」
精神的な拷問を乗り越え部室に戻ってきて狭間先輩が言った。
「はい、じゃあ、また明日からよろしくお願いします」
俺たちは部室からでて昇降口へ。
思ったのだが狭間先輩は家に帰れるのだろうか。そんなことを考えながら帰宅した。
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生徒会室
佐藤帝と永城雄太が話している。
「あれが六道か。まさかこんなに早く会えるとはね。入学式で見たときは心臓が止まるかと思ったほどだけど。いいね、ちゃくちゃくと準備をしてきたかいがあるってもんだ」
「そうですね帝」
「それに南雲に赤羽か。あいつらはまったく一筋縄じゃいかないからな。とくに赤羽はありゃ……いや、いいか」
「はい、彼らは友達らしいですよ」
「はは、六道も中々やるな~。あんな二人を友達に出来るなんてね」
ファイルを見ながら佐藤帝が言った。
「それに狭間ですか」
「因縁かね~。まあ、こっちとしたら手間が省けていいんだけどね。じゃあ、雄太あの計画を始めようか」
「わかりました帝」
永城雄太が部屋から出て行った。
「お前がこの“世界”をどう変えるか。楽しみだ」
そう言って佐藤帝は笑った。
佐藤帝彼の計画の全貌をしるのはまだまださき。
彼の計画は誰にも知られずに進む。
帝君は何を企んでいるのやら




