第六十三話 そして、終焉が始まる
お待たせしました!
PC復旧後、執筆意欲増加により、予定変更で更新です!
気がつけば、もう卒業式の日だ。先輩たちが旅立つ日。
だと言うのに校内に人の気配はない。誰一人学校に来ていなかった。
卒業式は執り行われない。二年生に失踪者が多いからだ。そう、生徒会関係者、もっと言うなら、俺が関わった人間が全員消えていた。警察が懸命に捜索したが見つからなかった。
残っているのは桜崎だけ。どうして、こんなことになっているんだ。何が起きているんだ。何一つわからぬまま、俺は生徒会室に来ていた。
生徒会室に入っても迎えてくれる人間は誰もいない。誰も迎えてはくれない。あれほど、騒がしかった、この高校が、静まっていた。
「どうして、こんなことになったんだ…………」
どうしようもない呟きが虚空に消える。答える奴など当の昔に全員消えた。いや、一人だけ俺の後ろにいる。だけど、そいつは答えないだろう。答えれる答えなどどこにもありはしないのだから。そう、ありはしない。
「隼人君……」
桜崎が俺に声をかけようとしてやめる。
今の俺には何を言っても届かないとわかったのだろうか。まあ、それは事実だ。俺には今何も聞く気がない。
「どうしてこんなことになってしまったんでしょう……」
「知るかよ」
俺が教えてもらいたい。こんなことを引き起こした張本人が居るのだったら。むしろ目の前に現れろ。一発殴ってやる。
「俺の方が知りたいぜ」
「なら、教えてあげようか?」
「「!?」」
声の響くはずのない部屋に第三者の声が響いた。それも、この学園には二度と響かないと思っていた声だ。この振り返ってみると、そこには佐藤帝が笑いながら立っていた。
「何であんたが、ここに居るんだ……」
「どうして? 愚問だね。この状況の全てを説明してあげようと思ってきたんだよ」
「な!」
一気に佐藤帝に詰め寄る。こいつはこの状況の全てを知っている。この男は全てを知っている。いや、落ち着け。ここで興奮しても意味がない。
「話してもらう」
「わかっているよ~。この人たちもいっしょにねえ~。あ、でもその前に、桜崎さん」
佐藤帝が桜崎の方を向く。何だ? 桜崎に何かあるのか?
「君、何でまだ、生きてるの? ――おっと」
考える前に俺は佐藤帝を殴り飛ばしていた。いや、殴り飛ばそうとした。正確には俺の拳は空を切っただけだ。避けられた。
「どういうことだ!! 言って良いことと悪いことがあるぞ!!」
「おやおや、ごめんごめん、てっきり話してるものかと思ったんだよねえ、桜崎さん」
「…………」
桜崎はなにも答えない。何だよ。何があるんだよ。
「自分から言う気はなかったのかい? 君みたいなのが本当にここに居られるとでも思った? いや、居ても良いんだよ。君は必要だからねえ。俺にとっても、世界にとっても」
「おい、桜崎、どういうことなんだよ……」
「…………」
桜崎は俺と目をあわせようとしない。おい、目を合わせろよ。こっちを見ろよ。答えろよ。何だよ。何なんだよ。佐藤帝の言葉なんて、否定しろよ。おい!
わかっていた。佐藤帝の言葉が桜崎が否定しない時点で全て真実であることなんて。でも、俺はそんなこと信じたくなかった。いくら、世界のためとか、繰り返しているとか、そんなどうでもいいことは知らない。けど、信じたくなかった。
「あは~、なるほどね~」
佐藤帝が納得したように頷く。
おい、何を納得してやがる。俺にも教えやがれ!
「……ごめん、なさい」
「桜崎!!」
桜崎は蚊の泣くような声で謝罪の言葉を呟くと同時にふらっと倒れた。
「おい! しっかりしろ!! おい!!」
慌てて桜崎を抱き上げるが、反応はない。
「落ち着きなさい!!」
また、響くはずのない、声が響いた。聞くはずのない鬼の声。六道銀杏と四家の四当主がそこにいた。
何かが、明らかに壊れ始めていた。俺の腕の中の、桜崎もそうであるように。