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天の桜が咲く頃に  作者: テイク
第五章 また来る春
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第五十四話 六道の鬼

 5月1日、GWの初日。俺と姉貴は重い足取りで田舎の田んぼの道を歩いていた。ここは俺たち六道家の所有している村であり六道家の土地だ。六道家には本家と四家と呼ばれる分家がある。俺たちはその六道本家唯一の跡取りだ。


「姉貴本当に行くのか」

「アタシだって行きたくないわよ。でも、おばあさまからの呼び出しじゃ無視できないでしょ」


 そう、現在の六道家当主六道銀杏(りくどういちょう)は俺たちの叔母だ。夫・少将の遺した財産を巧みに使い、この村宵桜を復興、六道家に絶大な繁栄をもたらした。齢100歳になるという老婆だが、その力は全盛期からまったく衰えず逆に強まっている。自分のことしか考えず俺たちを駒とし思っていない。ばあ様の願いはすべて叶えられる。俺はばあ様が嫌いだ。あの人を見下した目。吐き気がする。


「…………」

「大丈夫。隼人には何もさせないから」

「姉貴こそ気をつけろよ。ただでさえ姉貴ばあ様に嫌われてるんだからな」


 姉貴はばあ様に嫌われている。詳しいことは知らないが俺が生まれる前になにかばあ様の期待を裏切ったらしい。そのあとに生まれた俺はどうなのかわからない。ばあ様に会うのはこれで二回目だ。初めて会ったのは両親が死んだとき。遺影をまるで蛆虫でも見るかのように見ていたのは今でも覚えている。両親は俺たちを連れてばあ様から逃げたらしい。それはばあ様本人から聞かされた。


「…………」

「…………」


 本家の建物が見え近づくたびに俺たちの口数が少なくなってくる。


「よくおいでくださいました」


 純和風の建物の前にダークスーツを来た男が立っていた。たぶんばあ様の小間使いだろう。


「………………」

「こちらにおいでください。既に皆様お待ちです」


 小間使いに連れられて本家の中に入る。今日は四家の人間もみんな集まっているらしい。


「この部屋でしばらくお待ちください。今日は当主は出席なさいません、本日は四家との顔合わせにございます」


 小間使いが出て行った。


「姉貴。四家の人間ってどんな奴がいるんだ?」

「今は当主が変わったらしいから知らないわ」

「会ってみるまでわからないってことか」


 心配とは思わないが問題は二日目以降に出てくるであろうばあ様だ。何もなければいいが。


 それからしばらくは何も起こらなずにすぎ時間がやってきた。


「お時間に御座いますどうぞ」


 さっきの小間使いに連れられ屋敷中央に位置する大広間へ。


 大広間には既に人が集まっていた。


「お座り下さい」


 指示された場所に座る。上座の近くだ。だがそこは空席だ。


「それでは各自自己紹介を」

「はい、私は六道四家が黒の家が当主六道美里(りくどうみさと)に御座います」


 緑がかった黒髪の姉貴位の女性が言った。


「次は私が、(わたくし)は六道四家が白の家当主六道黄泉(りくどうよみ)に御座います」


 美里さんの隣の白髪の女性が名乗る。


「次は俺か。俺は六道四家が青の家が当主六道悠真(りくどうゆうま)と申します」


 美里さんの向かい側に座っている青髪の男が名乗った。


「僕は六道四家が赤の家が当主六道紅(りくどうこう)と申します。以後お見知りおきを」


 赤髪の優しそうなメガネの男が名乗った。


 こいつらが六道四家の当主。若い。俺より少し上くらいの奴らばかりだ。


「六道本家が長女六道美香に御座います」

「同じく六道本家が長男六道隼人に御座います」


 姉貴に続いて挨拶をする。作法はさっき姉貴に習った。


「今日は顔合わせだけですのでこれにてお開きといたします」


 これで今日は終わりを告げた。


「はあ~。肩凝った」

「そうだね~」


 そう言ったのは美里さんだ。


「さっきも言ったとおり私は六道美里。まあ、一般では高垣美里だけどね」

「はあ」

「六道の名はそうそう名乗っていいものじゃないんだよ」


 そんなの初耳だぞ。


「だから気軽に美里って呼んで欲しいな」

「美里あまり気軽に隼人様に話しかけるな」


 青髪の悠真が言った。てか様付け!?


「何で俺なんかにさま付けなんだよ」

「? なんでってあんたこの六道家で序列二位だからだよ」

「は!?」

「おやおや、本当に何も知らないのですね」

「紅さん」

「それでは僕から説明しましょう」


 説明されたのはこの六道家の序列だった。一番は当然ばあ様だ。そして元二位は俺の父さんだったのだがそれが死んで姉貴にだが姉貴はばあ様の期待にこたえられず俺に回ってきたようだ。てかそんなのありなのか。そして四家の中にも序列が存在し。白→黒→青→赤という順だ。つまりあの黄泉さんが四家の中で序列が一番高い。といっても四家の序列はあってないようなものらしい。


「そんなことになってたのかよ」

「そういうこと~じゃなかったです」

「いいよ面倒くさい。年下なんだから敬語なんて使わないでくれ違和感がある」

「そう?」


 この美里さんって人は順応性が高いな。


(わたくし)は部屋に戻ります」


 黄泉さんは部屋に戻っていった。


「黄泉ちん乗り悪いな~」

「あなたはノリが良すぎるんですよ」


 紅さんが美里さんに注意する。だが、まあ、どんな人たちがいるのかと不安だったがこれなら何とか矢っていけそうな気がした。ばあ様を前にして理性を保てるかが問題だな。


 そのあと紅さんや美里さんや悠真さんといろいろな話をした。姉貴はいつの間にかいなくなっていた。

「姉貴~、なにやってるんだ?」


 部屋に戻る。なぜか姉貴と俺の部屋一緒にされてるんだよね。いや、あまり関係ないし姉弟だし。でもさ、思春期男子にとっての精神衛生上悪い気がするってどうでもいいが。


「仕事」

「こんなときまで仕事かよ」

「こんなときだからよ。仕事でもしてないとやってけないわ」

「そうかよ、あんま無理すんなよ」

「アンタに言われるすじあいはないわよ~」

「お~い、隼人風呂入ろうぜ風呂!!」

「いけませんよ悠真そんな言葉遣いでは」

「いいじゃねえか。隼人もそっちの方がいいよな」

「そうしてくれると助かるがな」

「ですが」

「紅、お前の負けだぜ。じゃあ、行こうぜ~!!」


 俺は紅さんと悠真さんに連れられて風呂に向かった。六道家の風呂は温泉を引いているらしい。無駄に豪華な風呂だ。


「ふう~」


 悠真さんがさっさと入ってしまう。俺もさっさと入る。露天風呂なので星がくっきりと見える。去年の夏休みに見たときと同じくらい見えている。なのになぜかあの時とは違う気がした。うまくは言えないがかなり嫌な感じがした。



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