第四十八話 ミステリーサークルって意外に作りやすい
三学期、一年最後の学期が始まってしばらくしたころ。三年のセンター入試以外にあまり大きな行事もなく。平和な時間が流れていた(三年以外)とき事件はおきた。
「なんだこりゃ!?」
場所は屋上。そこから校庭を見下ろしている。校庭にはミステリーサークルが出来上がっていた。昨日までは出来ていなかった。しかも石灰で作ったのではなく地面を掘って作ってあった。かなり巨大なため一晩で作ることは不可能。そのため学校中で宇宙人の仕業など様々な噂が飛び交い。テレビ局の取材などのおかげで生徒会は生徒を落ち着かせるために働くことになった。
「おいおい、勘弁してくれよ」
「僕は思うんだけど劉斗の仕業じゃないよね」
馬鹿の言いたいことはわかるが。
「我がこんな利益にならないことをやるとでも?」
「思わない」
そうだ劉斗は利益になることしかしない。なら誰がやったのだろうか。まさか、本当に宇宙人の仕業とかないよな。
「とりあえず生徒会室に戻るぞ」
確実に仕事が山積みだろう。
「まったく、キリがありませんわ!!」
生徒会室に戻って見ると西園寺が悲鳴をあげていた。
「大丈夫か?」
「六道隼人この様子が大丈夫に見えるのなら眼科に行くことをオススメしますわよ」
「ああ、大丈夫に見えない」
書類はもはや天井にまで届きかけている。
「どれもこれも同じような内容のものを送りつけてありますわ」
「うへ~、こりゃ処理が大変だな」
「そうだね~。じゃあがんば――」
「待て馬鹿逃がすと思っているのか」
「――ですよね~」
そんわけで生徒会全員で書類の整理に。こういうときに役に立ちそうな狭間先輩を無理矢理引っ張ってきて手伝ってもらっている。他の坂井や御津にも手伝ってもらいたかったが冬休み最初の無茶もあって自粛した。退院はしたがこれを見せるのは気が引ける。え? 生徒会メンバー? 生徒会メンバーは化物の集まりだと思ってもらえればいい。
「はふ~、減りませんね~」
桜崎が書類に目を通しながら言う。
「言うな。考えるな。無心で読め」
「すみませ~ん、追加で~す」
全員の動きが止まる。
『いっそ殺せえええええええ!!!!』
そんな絶叫が響きわたる。今日も生徒会は元気だ。………………現実逃避はこれくらいにして。
「さっさとやるぞ~」
『お~』
えらくローテンションで作業再開。その間も増える書類。本気で死ぬかもしれない。
「助けに来たぞ~!!」
変態がログインしました。
「帰れ!!」
「フッ、素直じゃないな、ここは私に任せたまえ」
変態が書類に目を通していく。
「おお、書類が減っている……ような気がする」
減っているのかわからないほどあるからな。
「はははははははは!! 私に不可能はないのだ~!!」
変態とは一秒も一緒にいたくないがこれも終わらせるためと割り切り作業に戻る。
「それにしても何でいきなりミステリーサークルが出来たんでしょうか?」
もっともな疑問。桜崎の言葉に赤羽が言った。
「まあ、普通に考えると悪戯でしょうけど。あの大きさと作り方ならその可能性は低いわね。なんたって一晩でアレを作れるとは思えないわ。数人で作るならべつだろうけど」
「確かに、しかしそんな大勢が学校に忍び込んでこんなことやったらさすがに気がつくだろ」
「隼人のいう通りねこれは案外宇宙人の仕業かもしれないわね~」
「赤羽ってそいうの好きだよな」
「面白いじゃない。自分たちが一番だと驕っている人間たちがそういう存在の前には手も足も出ないのよ最高じゃない」
「さいですか」
はい、そんなわけで俺たちは書類の処理をしていたのだった。
****
僕は隼人たちを置いて(にげてきて)ある場所に向かっていた。
「狭間先輩~いますか~?」
新聞部部室だ。狭間先輩もいつの間にか逃げて来ていた。
「あ~、馬鹿君~何~」
「あのミステリーサークルって本当に宇宙人のものなんですか?」
「う~ん、なんとも言えない私まだ専門調査してない」
「なら、調査に行きましょう」
「珍しくやる気? どうしたの~」
「僕は思ったんですよ」
「うん~」
「誰にもわからないこの謎を解けば僕はバカではないと証明できると」
「おお~、じゃあ、でも私に聞いたら意味なくない~?」
「細かいところはいいんですよ」
「ふ~ん~。ま、いいや~、じゃあ行こう~」
「はい」
「おぶって~」
「………………」
いよっしゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!!!!!
「喜んでぇ!!!」
「うん」
狭間先輩をおぶる。おおおおお!!!! 背中になんとも形容しがたい感触がああああああぁぁぁぁぁ!!!
「じゃあ、行きますよ」
僕は勤めて冷静に言った。
でも、顔のニヤケは隠せてなかった。
****
その時生徒会室。
「はっ!!」
「どうした綾崎?」
「いや、今何か変な気配がというか嫌な予感が」
「馬鹿が何かやったのか?」
「たぶん」
「まあ、バカだから何も害はないだろう」
「そうね」
綾崎夕菜恋する乙女の能力かもしれない能力発動。馬鹿の運命やいかに。
****
ああ、僕馬鹿洋平は今モーレツに感動している!! ようやくようやく僕は狭間先輩を背負うことに成功した!!
「乗り心地はどうですか?」
「ん~いいよ~」
嗚呼、幸せだ~。僕このまま死んでもいいかも~。はっ!! 駄目駄目このまま死んでたまるかよ。
「そろそろですよ」
「ん~」
校庭のミステリーサークルの前には黄色テープで立ち入り禁止がなされている上に警備員らしき人が立っていた。
「どうしましょう狭間先輩?」
「大丈夫。おろして~」
「あ、はい」
少し……いや、物凄く残念。ああ、幸せな感触が離れていく。
「さてと」
ごそごそと狭間先輩が白衣とメガネを取り出してきた。めっちゃ似合ってる可愛い!!!! やばいやばいやばい。鼻血でそう。それほどまでに狭間先輩は凄まじい。
「馬鹿君もこれ着て~」
白衣を渡してくる。
「はい」
着る。なんか頭良くなった感じがするよね。べつに僕はバカじゃないけど。
「すみません~」
「何かな」
狭間先輩が警備員に話しかける。
「ミステリーサークルの調査に来た者です」
おお、いつもの狭間先輩と違ってしっかりしている!! こっちもいいな~。
「許可書は?」
まずいそんなのあるはずない。どうするんだろ狭間先輩。
「はいこれ」
何かの書類を狭間先輩が渡した。
「どうぞ」
許可が出た。
「ありがとう」
狭間先輩がテープ内に入っていく。僕もそれに続く。
「いったいどうやったんです?」
「もとから許可を取っていただけ」
当たり前のように言った。
「それって……」
「うん、不正アクセスの許可書」
「ばれたらどうするんですか!!」
「ばれない」
確かに狭間先輩の腕だったらばれないと思うけど万が一バレたらどうしよう。
「万が一バレたらどうするんです?」
「バレたら……」
「バレたら?」
「…………………………………………………………………………逃げる」
「逃げるんかい!!」
バレないことを祈ろう。
「お~」
狭間先輩がなにやらどこからか取り出した機械でミステリーサークルを調査していく。ピコピコいってる。なにをやってるのかワケがわからない。
「ないやってるんですか?」
「ん~。放射能を確かめてたりとか。監視カメラの映像を確かめたり。いろいろ痕跡を探してみたり」
「おお本格的!!」
「をやってる振り」
「振りかよ!!」
「冗談~」
「冗談じゃないですよ!!」
はあ~。さっきまでの幸せは一体どこに。
「う~ん」
「なにうなってるんです?」
「ここわからない」
「へ~、狭間先輩にもわからないことあるんですね見せてください」
「ん、これ」
え~とどれどれ。
『バカにしかわからない物』
「……………………これはこうですよ」
「ああ、そうなんだありがとう」
「いえいえ」
………………………………………………………………………………………………………………悲しくなんてないやい。なのになんでだろう。悲しくないのに涙が出てきた。
「世界は残酷だ」
「何を悟ったの~?」
「いえ、狭間先輩世界って残酷ですね」
「ん~さあ~」
は~。
「そうだ。世界はお前には残酷だ」
「劉斗!?」
「南雲君も来たんだ~」
「そうだ」
「だが劉斗は生徒会で仕事中のはず!?」
「我があんな面倒なことをやると思っているのか」
「まさか!!」
「ああ、セバスチャンに変装させてやらせている」
やっぱり劉斗は劉斗だ。
「それで何かわかったのかバカ」
「僕はバカじゃないよ。今調べてるところだよ」
「わかった~」
「本当ですか!!」
「うん~。これ未知の生命体の物じゃないよ~」
「そうなんですか?」
「うん~。人が掘ったもの~。しかも一人で」
「一人で!? でもそんなの出来るんですか」
「無理だけど実際にやられたから無理ではない」
「……それは一体誰なんですか? もしかしてそこにいる劉斗?」
「我がこんな利益にならないことをやると思っているのか?」
「いや、思わない。てかこのやり取りさっきもやった気がする」
「ここに書いてあるのは私の愛はここにあるから隣人たちよお分けしようって」
「…………あいつだ」
「………………あいつだね」
「………………アイツ~?」
「「岩本だ!!」」
僕達は生徒会室に駆け出した。狭間先輩はポールさんに運ばせている。ああ、思えばあの感触をもう一度味わえたかもしれないのに。糞なんてバカだったんだ僕は。だめだ、今からじゃ到底間に合わない。諦めよう。
****
生徒会室に馬鹿たちが駆け込んできた。
「って劉斗!! じゃあここにいるのは」
「私にございます」
セバスチャンが劉斗の格好をしていた。
「まさか変装だったのか。どうりでいつもより働いているわけだ」
「申し訳ありませぬ」
「いやいいですよ。それでお前たちは何しに来たんだ?」
「隼人ミステリーサークルの謎がわかったんだよ」
「馬鹿が解いたのか?」
「もちろん(狭間先輩が)」
「ありえないな」
「本当だよ!!(一問だけね)」
「それで狭間先輩あのミステリーサークルは誰が作ったんです?」
この人ならそれくらい調べがつくだろう。
「なんとね岩本君~」
「………………」
全員が一斉に変態を見る。
「なんだ私を見て。そうか私は罪な男だな。こんなにもみんなを魅了してしまうとは」
「お前か!!」
「何でそんなことを?」
「まったく余計なことをしてくれましたわね」
「まあまあのできだったわ次に期待ね」
「期待じゃないわよ紫苑」
何で変態はこんな余計なことをしたんだよ。
「ふ、某憂鬱を全巻読破したからなやってみたくなった」
「下手したら退学だぞ」
「笑止、それくらいで私の愛が止められると思っているのか。私はどこでも脱げる!!」
「やめろ!!」
既に制服を脱ぎかけた変態を止める。
「ただ私は……宇宙に愛を届けたかっただけなんだよ」
「意味不明だ」
「大変だー!!」
水原先生が入ってきた。
「外を見ろ外を!!」
「は?」
外を見る。謎の未確認飛行物体が学校の上空に浮いていた。
「………………」
この世界の常識はどうなってるのだろうかといまさらながらに思った。
翌日。ニュース。
『昨日の未確認飛行物体ですが南雲財閥の試作機との事が判明しました。これについて南雲財閥からなにも返答はありません』
アナウンサーが読み上げる。
『しかしね。アレが南雲財閥のものとの証拠はあるのかね?』
『南雲財閥からの正式な答えでしたが』
『それにしてもねアレは…………』
ブツン
世界は今日も平和だ。
次回はあの方々が登場です。
詳しく言えば正義の味方もどきです。