第四十話 絶対命令と忠義と怪力と
御津ちゃんは既に負け戦ですね。これはまずい状況です。相手が悪すぎます。天月アリサ怪力です。馬鹿力です。
『とまれ!!』
「ぐ、ぐぐぐりゃ!!」
「クッ」
御津ちゃんが走ります。足止めも少ししか効きませんし。絶対命令にただの力で逆らうなんてもうめちゃくちゃです。御津ちゃんもそう思っているらしく厳しそうです。
「姫様!!」
「姫ー!!」
日苛君と木乃伊君が走ります。既に満身創痍ですが忠義を貫くために走る二人。
『倒れふせ!!』
御津ちゃんの命令で天月さんが床に倒れます。
「てりゃー!!」
それを無理矢理起き上がります。絶対命令権は無理矢理相手の体を動かす能力です。それなのにあの天月さんは自慢の馬鹿力で無理矢理体を動かしてるみたいです。同じ無理矢理同士の対決軍配は天月さんに上がったようです。てかわたしもなに言ってるのかわからなくなってきました。
「違う……」
御津ちゃんが何かわかったみたいです。
「何?」
「お前はただの怪力じゃない、お前の力は神経の情報伝達を自在に操ることだ」
え? 馬鹿力じゃないんですか?
「やっぱわかったか腐っても11組ってわけね」
「やはりな」
「そう、あんたの能力が音によって相手の意思に反して脳に行動を起こさせる能力なら能力は神経の情報伝達を操ること。アンタが誤情報を流したとしてもそれをワタシが認識した時点で効果はない」
何でしょう、このお話難しすぎてまったくわかりません。
「それでまあ、この怪力はさ副産物なんだよね。人間ってさもともとトラック位は何も鍛えてなくても持ち上げられるだけどさリミッターがついてるわけよ」
「でなければ体が壊れるからな」
「それでワタシはそのリミッターをはずしてるわけリミッター解除の状態を普通の状態と脳に認識させてるのまあ、どんどん体は壊れていくけどまあ、そこは痛覚カットしてるからね」
「やはりな」
「そう、だからあなたに勝ち目はない!」
『やめろ!!』
御津ちゃんの命令を無視し天月さんが床を殴ります。それだけで床は砕けその破片は砲弾のごとく御津ちゃんを襲います。
「がはっ!」
「ほおら、まったくアンタの力意味ないよ」
「ぐう」
「姫様ー!」
「邪魔♪」
ドゴン!
走ってきていた日苛君と木乃伊君が壁に叩きつけられました。既に虫の息です。
「クッ」
「ほらほら悔しいなら向かってきなよ。クソ姫さん」
「姫様を侮辱するな!」
「まだ来るんだ」
日苛君と木乃伊君が立ち上がる。
「もうやめろ! 死んでしまう!」
「「いやです!」」
忠義の徒の二人が命令に逆らいました。
「我々に救いをくれたのは姫様です」
「死ぬしかないと思っていた我らに生きろとそばにいろといってくれたのは姫様です!」
「だからこそ我らは命をかけられるんです」
「バカ者じゃお前ら」
「バカで結構、姫様を守れるならバカで結構!」
忠義ですね~愛ですね~。いいドラマです。ってそういう問題じゃありません。今だ状況は不利どうしようもありません。
「あ~うん、もいいや先に潰れちまえ」
ドン!
天月さんが瓦礫を日苛君に投げた。驚異的な速度で投げつけられた瓦礫は避ける間もなく日苛君に直撃。
「さらに~!!」
さらに天月さんがその瓦礫ごと殴りつけました。瓦礫は粉々になりその拳は日苛君のボディーに直撃。
バギン! ドゴン!!
何かが砕ける音と壁を粉砕する音が同時に聞こえ日苛君は壁を突き破りどこかの教室の中に消えた。
「日苛!」
「他人の心配する暇なにでしょ」
天月さんが木乃伊の腕を掴みひねる。
「ぐあああああああ!!」
「すぐにあとを追わせてあげる」
パンッ! ドン!
音速を超えた音と壁を突き破る音。天月さんの蹴りが木乃伊君のボディーに突き刺さり吹っ飛んだ。壁を突き抜け日苛君と同じ教室にまで吹っ飛んだ。
「貴様!!」
「アレ~。おっかしいな~、破裂すると思ったんだけど残ったな~。まあいいか死体の処理って面倒だから」
「貴様!!」
「怒ったところでアンタにはないもできない。その非力な体でどう戦うっていうの?」
「……」
御津ちゃんがなにかを考えています。
「……あいつらがあそこまでやってくれたんじゃ、わらわもやらねば笑われてしまう」
「だからどうしったって」
『前に走れ、そして天月アリサを限界を超えて殴れ!』
ドン!
御津ちゃんが床を踏み抜き疾駆する。
「な!?」
天月さんの顔が驚愕に染まる。そして御津ちゃんが天月さんを殴りにかかる。
「ちぃ」
天月さんが避けます。御津ちゃんの拳はそのまま壁にあたり。
ドゴン。
壁を破壊した。
「アンタまさか!」
『天月アリサを蹴り殺せ!』
「ヤバ!」
天月さんが御津ちゃんの蹴りを避ける。
ドンッ。
御津ちゃんの蹴りは瓦礫を粉砕した。
「まさか、自分に命令して無理矢理リミッターをはずすなんて!」
「そうじゃ、これで貴様と対等じゃな」
「いや、まだね。アンタと違いワタシは鍛えてるから」
確かに御津ちゃんの手と足からは血が出てます。
『痛みをカット』
「無茶するね」
『最速の動きにて眼で終えぬ速度にて天月アリサの顔面を殴る』
御津ちゃんが動いた。いや、動いたということしかわからなかった。眼で追えない速さで動いていた。
「クッ」
顔面をガードする天月さん。
ドン!
「りゃっと」
「まだ」
「少し離れなさい!!」
ドゴッ!
御津ちゃんが吹っ飛ぶ。
「カハッ」
血を吐く御津ちゃん。限界を超えてます。
「まったく、無茶をする。内蔵30箇所、骨35箇所、駄目になってるっているのに……まったく良くやるよ。さすが11組にいるだけのことはある」
『限界を超えて……カハッ、天月アリサを……倒せ!!』
血反吐吐きながらも立ち向かおうとする御津ちゃん。
「もう、やめろなよ。それ以上は無理だってわかってるんだろ」
天月さんの言うとおり御津ちゃんの左腕はだらりと垂れ下がり右足は引きずっている。
「バッカじゃない。これくらいで諦める御津蜜柑じゃないのよ」
口調が標準になって叫ぶ御津ちゃん。ゆっくりと天月さん近づいて。
「あああああ」
ポスッ。パタン。
パンチではない、パンチとすら言えないただ触れただけ。それだけで御津ちゃんは倒れ。
天月さんも倒れた。
「うん、負けたわ。何だろうね。この感じ」
天月さんが呟きます。御津ちゃんは気絶していて誰も聞いていない。私しか聞いていません。
「あ~あ、まあ、いいか」
その時。
「あれ~、何だこの状況?」
あちゃ~、風紀委員長が来ちゃいましたよ。
「特別武装風紀委員会か」
「ご名答」
「漁夫の利とは恐れ入るな」
「俺たちからしたら11組の方が恐ろしいけどな。さ~て、俺らと遊ぼうや」
13人の風紀委員が天月さんに襲い掛かった。
・
・
・
「はあ、はあ、はあ」
ぼろぼろの天月さん。その近くには風紀委員が三人倒れていました。
「ふ~ん、全員でかかってもまだ倒れないのか。さっきの二人はあっさり倒れてくれたのに」
「はあ、はあ、はあ、何を」
「まあでもさ、アンタ痛覚とか全部カットしてんだよね。だからぼろぼろでも動けるんでしょ? でもさ、痛覚なしってさ不便だよね」
「何を!?」
天月さんが頭を抑えて膝をつく。
「針を打ち込まれたの気づかなかった? お前はその能力があだになったんだよ」
「ク……ソ」
パタン、
天月さんが倒れた。
「あはははは。11を倒すのはタイミングと頭の使いようさ。さ~て、次行くぞ」
「負傷者はどうします?」
「ほっとけついて来れない奴はいらねえ。どうせ正義の回収屋が病院にでも送るさ」
「はい」
特別武装風紀委員会は次の戦場に進む。
****
「馬鹿君。坂井さんに続いて御津ちゃんもやられました!!」
「クソ」
頼む何とか無事でいてくれよ。
「西園寺他の奴らの動きは?」
「以前ほとんどの者が11と交戦中ですわ。特別武装風紀委員会はゆっくりと移動中」
「まったくまずい状況だな」
ここの守りは綾崎と帰ってきた佐藤だ。今一斉に攻められたら勝てるとは思えない。
「……」
「か……まん……たいしょう……ふ」
「ああ、そうだな美咲ちゃん」
今はみんなを信じて待つしかない。
俺たちの作戦は11と特別武装風紀委員会を戦わせ両方を消耗させること。あの天才異常集団と特別武装風紀委員会に勝つにはそれしかない。切夜直人の経歴を調べたら俺たちと11が戦ったあとの漁夫の利を狙う可能性が高い。そこで生徒会は11と戦うどうあがいても三週間じゃ異常集団には勝てない高確率で負ける。おそらくその後、特別武装風紀委員会が残ってるほうを倒す。そうやって消耗していった後に万全な俺たちが残ってる奴らを倒す。今のところそれは成功しているようだ。
「いやな作戦だがこれしかないのはわかってるんだがな」
わかっているが……。
俺はなんて無力なんだ……。
現状報告
生徒会残存兵力18名
11 残存兵力8名
特別武装風紀委員会残存兵力10名
何がしたいのかわからない今日この頃