第三十九話 熱と冷気と爪楊枝
馬鹿君と坂井さん、壱里さんと雪宮さんが睨み合っている。
「行くぞ」
先に動いたのは馬鹿君。爪楊枝を投擲していきます。爪楊枝は物に触れると小規模の爆発を起こします。器物破損で訴えたら確実に勝てそうですね。
爆発で煙が上がり視界が悪くなる。
「そこだ!!」
坂井さんが壱里さんに蹴りを放つ。
「クッ」
壱里さんは腕をクロスさせてガード。
「あ~、防がれたー!」
距離をとった坂井さんがいいました。
「さすが11だね」
「……でも、負けるわけにはいかないのよ。行くわよ、馬鹿君」
「おう!」
再び爪楊枝を投擲その間に坂井さんが接近し攻撃するのコンビネーションが続きます。やりますね。即興でやったにしてはいいセンいってます。
「壱里」
「うん、わかった」
壱里さんが床に手をつきます。すると、高熱で床が溶けていきます。それは馬鹿君たちの所にも広がっていきます。
「離れよう」
馬鹿君たちが離れようとした瞬間。
「無駄」
足が凍りつき動けなくなった。
「しまった!!」
「そのまま堕ちな!!」
円形に熱が広がり馬鹿君たちが立っているところを中心に円形に床が溶けた。馬鹿君と坂井さんが落ちていきます。てか、壱里さん口調が変わっていますよ。
「うわああああああ」
「きゃあああああああ」
二人の姿は見えなくなった。探しに降りていくと。
二階下のフロアに馬鹿君たちはいました。爪楊枝の爆発で氷を溶かし何とか脱出したようです。
「あははっ、こりゃヤバイね」
「うん、ここまでこんなに実力差があるなんて」
「さすが11。これで特別武装風紀委員会まで一緒に攻められたら終わりだったよ」
『大丈夫か二人とも』
隼人君からの通信みたいです。
「うん、大丈夫とは言えないね。特別武装風紀委員会もいつくるかわからないし」
『特別武装風紀委員会は今のところ動く気配はない。そっちに集中してくれ』
「わかったわ」
『死ぬなよ』
「あははっ、大丈夫だって」
通信はこれで終わりみたいです。
「さて、馬鹿君どする?」
「熱と冷気ヤバイ。爪楊枝じゃあ限界があるし。接近したらしたで熱と冷気どっちも浴びる可能性があるし」
「しかたない、アレを使おう」
「アレって?」
「秘密兵器」
おや、二人はなにかをするみたいですね。
「雪宮、どこ行ったと思う?」
「私たちを足止めまたは撃破することが目的ならそう遠くに行ってはいないはず」
「その通りここよ」
そこにはジャージ姿の坂井さんといつもどおりの馬鹿君がいました。
「ジャージに着替えて何のつもり?」
雪宮さんが聞きます。まあ、当たり前ですね。わたしも当事者なら聞きます。
「それはいずれわかるわ。馬鹿君」
「おう!!」
爪楊枝を投擲、その数30。
「小ざかしい!」
壱里さんと雪宮さんはその全てを避けた。回りで爆発が起こり視界がさえぎられた。
「同じ手はそう食わない」
「同じかな」
再び爪楊枝、そしてそれにまぎれて坂井さんが突っ込みます。
「おりゃ!!」
回転で勢いをつけた蹴り。
「甘い」
それはつかまれた。
「燃えろ!」
壱里さんが熱を込めますだけど。
「甘いわね」
「なに!?」
ジャージは溶けもしなかった。
「南雲製強化ジャージ、一億度の高熱と絶対零度に耐えうる究極のジャージ。さらに早崎君の改造版」
そんなでたらめなジャージ作ってどうするんでしょう。使い道がありません。ていうかそのジャージ誰に売ってるんでしょう。
「壱里」
「ああ、雪宮関係ないな。行くぜ」
戦いはまだまだ続きそうですね。
「行くぞ、爪楊枝アタック!!」
爪楊枝の投擲。
「それは何度も見てるだよ!」
壱里さんが爪楊枝の腹を掴んで投げ返した。
「な!?」
「その爪楊枝はものに触れたら爆発するみたいだがテメェが持ってるところは爆発しねぇだろ!」
おお、なるほど確かにそうですね。
「クソ」
「! 避けて馬鹿君!!」
「!?」
あああ!! 爪楊枝を避けた馬鹿君に氷柱が!!
「うわ!!」
なんとかギリギリで避けた馬鹿君。危ないところでした。
「外したか」
雪宮さんが再度氷柱を作ります。
「外したか」
雪宮さんが再度氷柱を作ります。
「させるかぁ!!」
馬鹿君が爪楊枝を投げました。ダメです!!
「だからそれは見たっつてんだろ!」
壱里さんが爪楊枝の腹を掴んで投げかえす。同時に氷柱も馬鹿君と坂井さんを襲う。もう完璧に口調変わってます。
「マズい!!」
馬鹿君が爪楊枝を投げ爪楊枝を空中で爆発させその爆風を使い2人は氷柱を避けた。
「くはっ!!」
「大丈夫馬鹿君」
「な、なんとか」
でも、状況は芳しくないですね。馬鹿君の技はもうあの2人には効きませんし坂井さんの蹴りも効きません。万事休すですね。援軍も望めない。ここまでですか。わたしに力があれば……でもせめて最後まで見届けさせてもらいます。
「行くぞオラ!!」
性格変わってますね壱里さん。
「クッ!」
馬鹿が壱里さんの手を掴んだ。
「バカガ!」
「ぐあ!」
馬鹿君の手を高熱が冒していく。確実にやけどですねアレは。
「馬鹿君!!」
「来るな坂井さん今のうちにもう一人を」
「でも、いいから」
「わかった」
坂井さんが雪宮さんの方に走っていきます。
「この、離せこのバカ」
「離すもんか!!」
「バカか手がどうなってるかわかってるのか!」
「わかってるよ! でも、僕はバカだからね。そんの知らない!」
カッコいいですね。馬鹿君こういうときはなんかカッコいいです。
「そりゃああああ!」
おっと、その間に坂井さんが雪宮さんに攻撃を仕掛けていきます。雪宮さんはどうやらあまり動くタイプじゃないようですね。それに能力も止まっていないとあまり意味がないようですし。
「雪宮!」
「よそ見しないで欲しいな」
「このどけバカ!」
「どかないよ。絶対にこの手は離さない!!」
「この!!」
「ぐうあ」
馬鹿君もがんばりますね。
「がはっ!」
そうこうしている間に坂井さんの蹴りが雪宮さんに直撃したみたいです。
「雪宮!」
「やったぞ坂井さん! 後は貴様だー!!」
「うお!!」
馬鹿君が壱里さんを持ち上げちゃいました。
「うおりゃあああああああああああああああああああああ!!」
そのまま雪宮さんに叩きつけました。酷いことしますね。
「がはっ!」
「セイ! セイ! セイ!!」
「ガハ、グフ、ガッ!」
何回も何回も叩きつけます。えげつないですね~。悪役ですね~。もうこれどっちが悪かわからなくなってきました。といってもどっちがあくかなんて最初からないんですけどね。
「ふう~」
馬鹿君が壱里さんを離す。どうやら気絶するまでやったらしいです。鬼畜です女の敵です。
「少しやりすぎたんじゃない?」
「大丈夫だよ坂井さん。きっと神様も許してくれるよ」
「それには賛成できないような気がするよ」
坂井さんに賛成です。あれは酷いですよ。
「さあ、みんなの応援に行こう」
「でも、手は大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。これくらいいつものことだから」
いつも一体どんなめにあっているのか非常に気になります。
「じゃあ、行こう」
「う、!? 坂井さん!」
坂井さんを馬鹿君がフッ飛ばします。
「え!?」
「ぐあああああああああああ」
馬鹿君に炎に包まれた瓦礫が直撃しました。
「あったり~」
「な!」
なんと壱里さんと雪宮さんが起き上がったではありませんか。恐ろしいです怖いです。もう、顔とか般若みたいですよあの二人。
「ちょっとさ~。お前ら調子に乗りすぎだよね」
「そう、ちょっと調子に乗りすぎ」
「ほんの少し倒した位でいい気になるなんてさ」
驚愕で馬鹿君と坂井さんは動けません。どのみち瓦礫を喰らった馬鹿君は動けないんですけど。
「クソ」
「ま……だ動けるなんて」
「あんま11をなめんなよ」
「クソ、ならもう一度倒す」
「僕……も、がんばるよ」
そうはいっても二人ともふらふらです。これは絶対絶命のにおいがします。あ、でも死んだら死んだでわたしの友達が増えていいかも。ななな、駄目です駄目です。わたしったらなんてことを考えたんでしょうか。
「うおおおおおお」
「りゃああああ」
馬鹿君と坂井さんが11の二人に突っ込んで行った。
そして立っていたのは立っていたのは壱里推古と雪宮咲。
馬鹿洋平と坂井命は地に倒れ伏していた。
「たっくてこずらせやがって」
「まったく」
雪宮さんと壱里さんが言います。その時。
「は~い、それじゃあ君達も同じ風に倒れようか」
「「な!?」」
桐夜直人と12人の武装風紀委員がそこにいた。
「やれ」
非情な命令がくだった。
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数分後そこに立っていたのは特別武装風紀委員会のみ。雪宮さんと壱里さんも地面を転がっていた。
「さ~っておいしいところは全部もらっていこう。次行くぞ」
特別武装風紀委員会は倒れている4人など意に介さず次の目標へと向かっていった。
非情にして効率的、そんな言葉が似合いますね特別武装風紀委員会。
助けたいですけどすみません。わたしには無理です。わたしは次の戦いを見に行かないと。本当にすみません。
倒れている4人に謝ってわたしは次の戦場に向かいます。
現状報告。
生徒会残存兵力21名
11、残存兵力9名
特別武装風紀委員会残存兵力13名