第三十八話 開戦
三週間はあっという間に過ぎていった。終業式も終わり冬休み。誰もいない校舎の中生徒会、11、特別武装風紀委員会は互いの拠点にいた。
「出来る限りの準備はしてきた。狭間先輩のおかげでこの高校の監視システムにハッキングしてのっとることにも成功した。後は俺たちしだいだな」
正直これだけしてもいやな予感はする。11との実力差は明白、それに特別武装風紀委員会の存在。本当にうまくことを運ばないと厳しいな。
「大丈夫ですよ」
そんな俺の胸中を察したのか桜崎が言った。
「ここにはみんながいるんですから」
「ああ、そうだな」
みんなの顔を見渡す。桜崎、馬鹿、劉斗、綾崎、赤羽、坂井、佐藤、西園寺、美咲ちゃん、浜弓、御津+二名、変態宗教団体、狭間先輩、藤堂先輩、セバスチュンズ。みんな集まってくれた。だから大丈夫だな。
「私を呼ばないとは水臭いぞ先輩!」
この声は!?
「琴峰空ここに参上!!」
「琴峰! 何でここにいる」
「愚問だな先輩。私は先輩のためならどこにだって駆けつける」
「お前は受験生だろ」
だから呼ばなかったのに。
「先輩一人助けられなくて何が受験生か!!」
何だその理論は。
「駄目だ、帰れ」
「安心しろ先輩、私は今日のために勉強は全て昨日のうちに終わらせてきた」
「おいおい」
「だから安心しろ」
「……わかった、協力してくれ琴峰」
「ああ」
機動力が手に入ったな。これで戦略の幅が広がる。
『やあ、諸君、揃ったようだね。では、はじめるとしようか。開戦だ!!』
戦いは始まった。
「たのんだぞ みんな!」
『おおー!!』
戦える奴だけみんな出て行った。
「頼むぞ」
モニターを見る。残っている桜崎、西園寺、美咲ちゃん、狭間先輩はここでモニタリングだ。
「もうすぐ敵と接触します」
「ああ、頼んだぞみんな」
11との戦い始まる。
****
わたしは全てを見届けましょう。
「さて、じゃあ、みんな別れましょう」
赤羽さんの提案でみんながそれぞれ思い思いに行動します。どうやら隼人君は指令を出すより個人の感性で動いたほうがいいとおもったみたいです。それは当たりみたいですね。それにしても特別武装風紀委員会が動いていないのが気になります。11も9人しか動いていませんし。なにかありますね。
おっとその間に坂井さんが敵と接触したみたいです。
「さっそくお出ましね」
坂井さんの目の前にはメガネとヘッドホンをつけた長袖長ズボンの女の子がいます。
「壱里推古、ナンバー10。あなたここで終わり」
「それはアンタかもよ」
「……」
あわわ、もう一触即発の雰囲気です。
「行くわよ」
坂井さんが勢いをつけ接近します。
「坂井スペシャル!!」
思いっきり右足を地に付けそのまま回転、その勢いのまま、左足で蹴りを放つ。それを壱里さんは紙一重でかわし距離をとる。
「うは~。まさか、避けられるなんて思わなかったよ」
「ただの人間にしてはいい動き。でも、単調すぎる正直すぎる。見やすい」
「なんですって~!!」
坂井さんが怒ってしまいました。攻撃を繰り出します。壱里さんが殴られますがまったく気にしてないようす。
「はあ、はあ、はあ。なんで…そんなに平気なのよ」
「……所詮この程度駄目ね」
「クッ」
まさか、ここまで一般生徒と実力が離れているなんて。
「まあ、少しだけなら見せてあげる。私の力というかさっきから見せてるけど」
「え?」
「やっぱり気づいてなかった」
物陰からまた女の子が出てきました。その子の周囲が凍ってます。そして壱里さんの周囲が溶けてます。まるで高温の物体で触れたように。
「雪宮咲ナンバーは9。能力は冷気」
「しん……きろう?」
「正解、私たち二人の能力は組み合わせるとあんなこともできる」
「でも、実態が」
「ああ、あなたの攻撃にあわせてこれを投げてただけ」
クッション。
「どうりで感触がおかしいわけだ」
「ええ、じゃあ、ここで終りね」
「まってー!!」
男子の声でさえぎられました。これは。
「学校一のバカが何しに来た」
うわ、壱里さん案外毒舌ですね。
「坂井さんはやらせないぞ」
「ならアンタから始末してあげるわ」
ああ、壱里さんと雪宮さんが馬鹿君のほうに行きます。
「僕はね、バカだけどね。友達を見捨てられるほどバカじゃない」
種が割れました。懐から爪楊枝を取り出しました。
「女の子を殴る趣味はないけどしかたないね」
爪楊枝を投擲。
「そんなもの!!」
壱里さんが爪楊枝を溶かそうと触れた瞬間爪楊枝が爆発した。
「きゃ!!」
「壱里!」
雪宮さんが壱里さんに駆け寄ります。
「さあ、まだ終わらせないよ」
「ありがとう馬鹿君」
坂井さんが立ち上がってきました。
「さあ、第二ラウンドの開始だ!!」
第二ラウンドがあるんですね。
馬鹿洋平&坂井命VS壱里推古&雪宮咲。
****
「さて、そこにおるのでてこい」
御津ちゃんが誰かに気がついたようです。
「別に隠れたわけじゃないけど。まあいいや」
「ぬしは何者だ」
「ナンバー8、天月アリサ」
「そうか、八か。なら大丈夫じゃな。二人とも」
「はい」
「はい」
「勝つぞ」
「イエス」
三対一これって卑怯な気がします。
「行くぞ!!」
天月さんが先に動きました。
「止まれ」
御津ちゃんが言います。
「ガッ!?」
天月さんが止まりました一体何をやったんでしょう。
「そのまま、動くな」
「ぐ、ぐ」
天月さんが抵抗してますが動けないみたいですね。
「こ、れは」
「ああ、わらわの能力じゃ、絶対命令権。わらわが目を見て命令した者はわらわの言葉どおりに動かすことが可能じゃ。じゃがあまり長い時間効かんうえにアバウトな命令は効かんのでな。しかしおぬしバカ力じゃのう、ここまで抵抗するとは。まあ、よい、やれ」
「はい、この日苛鶴の名において」
「木乃伊丞の名において」
「グッ」
二人の付き人が天月さんを殴っていきます。酷いですね、動けない相手を一方的に殴るのって。
「調子に乗るなー!!」
無理矢理動いた天月さんが二人をフッ飛ばします。二人の骨が折れた音が響く。
「ありえぬ、おぬしなんて力しておる」
「はあ、はあ~。ワタシの能力は力だ。それ以下でもそれ以上でもないからな」
「クッ、その場を動くな!!」
「無駄だ!!」
命令しても無理矢理動きますか。なんてバカ力なんでしょう。
「おらお前も死ねよ!」
「「姫様ー!!」」
「お前たち」
おお、二人が天月さんを受け止めました。
「邪魔だ!」
二人はまた吹っ飛ばされます。
「まだまだ」
「行きますぞ」
「しつこい奴らだお前から殺してやる」
天月さんが付き人の二人に向かいます。
天月アリサVS御津蜜柑一行。
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「セバスチャンズお前らは目標を」
『イエス・マイ・ロード』
南雲君は執事さんたちを11のリーダーのところに送ったみたい。
「さて、そこのガキ出て来い」
「俺はガキじゃねえ。ナンバー7の、速水亮だ!」
「そうかガキ、帰って犬にでもかまれてろ」
「何だと!」
速水君が南雲君に走ります。そのスピードは人間の眼に捉えられるスピードではありません。
「先輩!!」
「な!?」
速水君が琴峰さんに蹴られました。
「音速を超えたんだぞ! なんで蹴れる!」
「愚問だな。先輩のためなら私は音速だって超えて見せよう」
「イイタイミングだ琴峰」
「ああ、南雲先輩ここは私に任せて先に行くのだ」
「ああ、そうしたいのはやまやまだが」
制服の男が立ち塞がってます。
「行かせてくれないようだ」
「ナンバー5(ファイブ)人吉黒雄よろしく」
「琴峰、我の指示にしたがえ」
「速水僕の指示にしたがいなさい」
「「おお」」
王対王の対決。
南雲劉斗&琴峰空VS人吉黒雄&速水亮。
****
「あら、敵がいるわね」
赤羽さんの目の前には白髪の男の子がいました。
「6」
「6ねわかったわ。さあ、親衛隊よろしく」
『はい』
赤羽さんが親衛隊を置いてさっさと先に行ってしまいました。
「おう」
『かかれー!!』
親衛隊が6に飛び掛りますが。
「邪魔」
一瞬のうちに叩きのめされてしまいました。赤羽さんは角を曲がったところです。
「おう」
一瞬で角のところまで進み角のところを6が覗き込んだとき。
「はい、いらっしゃい」
二丁の黒い鉄の塊を持った赤羽さんがいました。
「さあ、遊びましょ」
遊びが始まる。
赤羽紫苑VS6。
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「うちの前に立つんは誰や」
佐藤さんの前には黒いコートの男が立っています。
「ナンバー4、香典流」
「ならうちの敵やな。いくで」
ハリセンを構えて。
「まあ、待て」
「変態だー!!」
変態さんが立っていました。
「ここは私がやろう。君はとりあえず本部の戻りたまえ」
「うちも」
「いいから護送してやれ」
宗教団体に佐藤さんが連れて行かれました。
「さあ、行こうか香典くん私の愛を受け取るがいい!!」
「変態」
「愛だ」
変態は戦う。
岩本小鉄VS香典流。
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「みんな大丈夫だろうか」
浜弓さんが校舎ないを走ります。みんなの心配をしてるみたいですね。今のところは大丈夫ですけど。
「ここから先には行かせないわ」
「!!」
ダークスーツ姿の女子が立っています。
「なら押しとおる」
腕を鳴らす綾崎さん。
「そう、私はナンバー3、カノン・アワード」
「浜弓桔梗」
二人が構える。浜弓さんは刀を抜き、カノンさんは何ももっていない。
「参る!」
浜弓さんが先に攻めます。
浜弓桔梗VSカノン・アワード。
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「さて、後輩たちばっかにやらせないわよ」
藤堂さんが木刀を持って走ります。
「待て」
ごつい体つきの男が止めます。
「我は金剛強。ナンバー2」
「どうやら当たり見たいね」
「なに?」
「後輩たちにあなたの相手をさせるワケには行かないから本気で行くわ」
藤堂先輩が木刀を構える。
「ふん、ならばくるがいい」
金剛君も構える。
木刀と素手。
藤堂菖蒲VS金剛強。
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「ああ、各地で戦いが起きてるな~」
佐藤帝が屋上で言った。
「さあ、てがんばってくれよ生徒会諸君、それにしても特別武装風紀委員会はなにをやってるんだろうね。まさかとは思うけど。どちらかが負けた後に攻める気じゃないだろうね。いや、まさしくそのつもりか」
佐藤帝が確信したように言った。
「まあ、どうにかなるでしょ。いざとなったら俺が行けばいいんだしね」
余裕そうに言う。
****
生徒会室。
「みんなが戦闘にはいった~」
「そうですか」
「でも、特別武装風紀委員会は動かない」
「漁夫の利を狙っているのかもしれない」
まったく、やっかいだ。
「!!」
パソコンにエラーが表示された。
「どうしたんです!!」
「誰かに侵入された」
「そんな! 一体誰に」
「……これは」
11ルーム。
「さあ、歌奏飛鳥やれ」
「……はい」
歌奏飛鳥が物凄い勢いでキーを叩く。
生徒会室。
「新しい11か」
「うん、そう。でも、私がやる」
狭間先輩がキーを叩く。
電脳の戦い。
狭間由宇VS歌奏飛鳥。
戦いは始まる。
生徒会と11両者の戦いが始まった。
天才と凡人の対決が始まった。
どちらが勝つのかそれは天が知っている。
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