第三十四話 夢
10月に入り衣替えもすぎだんだんと冬の訪れを感じる、今日この頃。思えばもう半年が過ぎたのだとしみじみと思う。高校に入学して既に半年、早いものだな。
「ふう~」
今いるのは生徒会室。だんだんと気温が下がってきたがこの場所はいつでもちょうどいい気温に設定されている、
「思えばいろんなことがあったな」
今生徒会室には俺一人しかいない。みんなそれぞれの仕事で学校中にちらばっている。
「それにしても、半年かそれだからか、こんなことを思うのは」
しかし、この半年間静かなときというのはほとんどなかった。いつの間にか俺の周りにはたくさんの仲間がいた。こんな俺についてきてくれた奴がいた。
「静かだな」
珍しい。そうだな、ちょっと疲れたし一眠りでもするか。誰か戻ってきたら起こしてくれるだろう。机に突っ伏するように眠る。俺の意識はすぐにねむりに落ちていった。
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目を開けたらまっくらな空間だった。
「これは夢だな」
一発で決め付ける。劉斗の策略でなければこれは夢だろう。近くには誰もいない。
「何なんだろうなこの夢」
少し歩いてみることにした。真っ暗な空間なので進んでる感じはしないのだがまあ、歩いていることには変わりない。
歩いているうちに白髪の女性に出会った。左目には眼帯をしている。
……さて、この女性は誰なんだろう。夢とは人の普段は抑圧されて意識していない願望などが如実に現れるケースも多いとされる。ただ、それらは誇張されていることも多く、結果的に現実としては不可解な現象で表現されることが多い。また、普段の生活から興味がある現象について夢を見やすいといわれている。
がこんな女性に俺はあったこともなければ興味もない。なぜ俺の夢に出てくるのだろうか。しかも妙にリアル。
「あら?」
女性が俺に気がついたようだ。
「あらあらあら。そうか、あの子と接触したから回線が開いたのね」
「あの~」
「でも、一発で迷い込んでくるなんてさすがね」
「一体なんの?」
「こっちの話。どうせ夢なんだから」
「はあ」
「私はそうね鈴梨とよんで」
「俺は」
「いい、わかってるから。これはあなたの夢よ」
そりゃそうか。
「それでここは夢なんですよね」
「ええ、そうね、厳密にはここはあなたの夢の××××。ただすこし××××に近いのだけれど」
「すみません聞こえなかったんですけど」
「ああそういうこと。そうね、××××と××××の間にある何もない無の場所ってところかしらね」
「わかりません」
「そう、××××はね無数にあったのよ」
言葉が理解できない。なんなんだ? 一体鈴梨さんは何を言っているんだ?
「今は××××わ。ただひとつの××××とその××××を除いて」
「何を言ってるんです?」
「いずれわかるわ」
またか。いったいいずれって何なんだよ。ウメちゃんも言ってたし。まあ、そんなことよりもっと聞いてみよう。
「ここってどこもこんな感じなんですか?」
「ええそうね。××××と呼ばれるくらいだから。何もないわ。気にいらない?」
「あまりいいとは思いません」
「正直でよろしい。そうね少しの間なら何とかできるわ。どんなところがいい?」
「どんなところがいいって言われても」
思い浮かんだのはあの絵。
「そう、それいいじゃない。それじゃあ、××××」
鈴梨さんの右手が輝き次の瞬間にはあの絵の風景が再現されていた。
「これは!」
「夢の世界なんだから好きにできない理由はないでしょ」
どこまでも青い空と綺麗な丘に俺は立っていた。
「さあ、すわってお話しましょう。今まで退屈だったんだから、そうね、あなたの話を聞かせて頂戴」
「でも、あまり面白い話はないですよ」
「いいのよ。人の生きた時間というのはとてもすばらしいものなんだからつまらなくなんてないのよ」
「じゃあ高校に入ってからの話でいいですか?」
「ええ、いいわよ」
「じゃ、俺は入学式の日にピンクのお化けに出会ったんです」
俺は高校に入学しての半年間のことを話し始めた。
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・
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「あははっ!! なにそれ面白い。は~。うん、面白かったわ。それに楽しそうね」
「そうですか?」
俺の話を聞いた鈴梨さんは笑った。面白い話はあんまりなかったとおもうんだが。
「そうね、いいお話も悲しいお話も退屈なお話もこれからよね。まだまだ人生は長いんだから」
「そんなもんですかね」
「そうよ」
「じゃあ、今度はあなたの話を聞かせてください」
「そう?」
「はい、俺だけなんて不公平なんで」
「そう、じゃあ少しだけ、私の本名は××××鈴梨、あら、これは語れないのね」
「え?」
さっきから鈴梨さんの言葉がわからなくなる。一体何なんだこれは!?
「じゃあこれはどうかな? 本当はこの××××、あなたの××××は××××なの。え~、これも駄目なの? じゃあこれはもとは私の××××によってこの××××を××××するシステム××××が作られた。これも!! じゃあ、さらにその応用で××××を××××システム、××××も。こっちも!? これは!?それによって私達は欲望のままに××××続けた。駄目ね、ほとんど言うことが出来ないなんてでも聞いてね。わからなくてもいいから。そうこの世に無限なんてないの。いつしか××××を越える量の××××が××××出され。そして、××××と呼ばれる××××により××××は××××。私たちは、××××は××××とういものを宿した者つまり私を使い、××××を××××を殺そうとした。だけど結果は見ての通り××××を殺しきることは出来ず、××××も××××。だけどもう一度だけ××××ことにした。私の力で。これによって××××のが××××の××××。だけど、完璧な××××なんて××××は出来なかった。その××××は××××の××××、××××と××××の××××だった。だから誰かに私は××××を××××。この世の××××を××××と××××を全て××××の××××を。そして××××家はそれ以来××××を××××者として××××を××××てきた。××××に××××を××××きた。あの木が見える?」
鈴梨さんが指差す。その先には巨大な木があった。
「あれは××××の××××、その時になったら××××が選択をするの××××の××××を」
「あの、所々てか、全部意味不明です」
俺は正直に聞いてみた。
「あ~、うん、ごめんね。どうやら規制がかかってるみたいなの」
「規制?」
「それもこっちの話。でも、いずれ知るべきときが来るかもしれないわ。まあ、夢の話なんだしあまり気にしないで。それでもね」
「そんな夢物語をですか?」
「さあ、そのほうがおもしろいじゃない」
面白いって。
「まあ、そうね~、隼人が大人になったらきっとわかるかもしれないわ」
「そういうもんですかね」
「そういうもんよ。それより!」
鈴梨さんがぐいっと顔を近づけてきた。
「な、なんです?」
「君彼女作る気とかないの」
「なんでそんなこと言われないといけないんですか!!」
「だってさ~。君の周りいっぱい女の子いるじゃん」
「そういうのは興味ないです」
「本当~」
「本当です」
「逃げているだけじゃなくて?」
「……そうです」
なんでこんなこと聞いて来るんだよ。
「もったいないな~。君に尽くしてくれそうな子ばっかりじゃん」
「そういう問題じゃないです。それなら鈴梨さんはどうなんですか」
「私? 私は既婚者よ。子供もいるわ」
「そうなんですか」
「ええ、まったく仕えない夫だったわよ。でも、子供は可愛くてね~もう世界一ってくらい可愛くてね~。写真みる?」
「いや、いいです」
「そう?」
この人親ばかだ。絶対親ばかだ。
「だから君も可愛いんだけど」
「え?」
「いや、こっちの話。さ~て、そろそろ時間かしらね」
「そうなんですか?」
「ええ、もう結構話しちゃったしね」
そんなに話した感じはないが鈴梨さんが言うにはかなり時間が経ったらしい。
「短かったけどまあ、楽しめたからよしとしよう、うん」
「そうですね。また、会えますか?」
不思議だがこの人にはもう一度会ってみたい気がする。
「そうね、会えるわ。会いたいならいつでもいらっしゃい」
「そうします」
「ええ、じゃあね」
その言葉を最後に俺の意識はフェードアウトした。
****
「そう、来たければいつでもおいで、私は待ってるから。そのときが来るまでは」
一陣の風が吹き鈴梨の髪を揺らす。
「それにしてもここはいいところね、ここはとっておきましょう」
鈴梨はいずこかへと消えた。
****
起きると感じたのは誰かに揺さぶられている感覚。
「ん?」
「あ、やっと起きました」
「桜崎か」
起きると生徒会室はオレンジ色に染まっていた。桜崎以外のメンバーはいない。
「ふあ~あ」
なんかやけにリアルな夢を見ていた気がする。
「みんなは帰ったのか?」
「あ、はい」
「起こしてくれればよかったのに」
「気持ちよさそうに寝ていたので」
「……お前は帰らなかったのかよ」
「はい、一人にしたらさびしいと思ったので」
「まったく、変な奴だな」
「うるさいです~」
「はいはい。さて、帰るか」
「はい」
さっきの夢は何だったのだろうか。かなり細かいところまで記憶に残っているが。
「まあいいか」
「なんの話です?」
「こっちの話だ」
「む~、なんですかそれ」
「いいだろ」
「少しは私にも教えてくださいよ」
「いやだね」
「む~」
俺たちはそう言い合いながら帰路についた。
家に帰ると姉貴が帰ってきていた。
「ちょっと~」
「なんだ姉貴」
帰るなり姉貴がリビングでぐったりしていた。
「おなかすいた~」
「あ~、自分で作ったらどうだ?」
「あんたアタシを殺す気」
自分の料理の腕を自覚してるんだよな。それはいいことだが、少しはうまくなろうという向上心はないのだろうか。
「ない」
「宣言するな」
「早くしなさい」
「はいはい」
さて、作るとしようか。俺はキッチンに向かった。
「なあ、鈴梨って人知らないか?」
「ん~。だれそれ? 隼人の彼女?」
「違うわ!」
「知らないわ。それがなに?」
「いや、知らないならいいんだ」
少なくとも姉貴の知り合いにはいないのか。って、何夢の中の人を探してるんだよ。やめやめあれは夢だったんだからな。
「変な隼人。あ、変なのはいつもか」
「姉貴飯抜きな」
「あ~!! 隼人の鬼~!!」
「向上心のない姉貴に作ってやる料理はない」
「う~。じゃあ、味見してくれるならつくってやるわよ」
そう来たか。自覚のある料理べたっていやだよな。
「あ~もうわかったただしきちんと一般人クラスには料理が出来るようにしてやる。味見もしてやるから自分で作れるようになれ」
「え~!!」
「今度の休みに劉斗たちと鍛えなおしてやる」
「姉への虐待反対」
「虐待じゃなく修行って言ってくれ。それに役に立つぞ料理できると。よし決定だ」
「ちょっ! 何を勝手に」
俺は姉貴を無視して劉斗に電話をかけた。
「ああ、今度姉貴が休みの時にああそうだ。じゃあ、そういうことで」
ピッ。電話を切った。
「よし手はずは整ったぞ」
「11月まで休みないもん」
「大丈夫だ。それにあわせるから」
「わかったもういい、じゃあ、今日からの食事は?」
「一応作ってやる」
「はあ~」
さて、今度の姉貴の休みにはきっちりしごいてやるからな覚悟しておいてくれよ姉貴。
こうして次の姉貴の休みに料理修行をすることになった。
何かいろいろ物語の中核のことを口走る鈴梨さん。やっちゃった?
ま、まあ大丈夫だろう。わかりっこないし。
とまあ、なにやらファンタジーに傾いてきた気がする。