第三十三話 落とし物を片付けると何かに会える
文化祭もあけその他休日を終えた10月1日。今日から通常通りの生活に戻る。放課後の生徒会の仕事もそうなるはずだったのだが。
「なんだこりゃ」
そこにはダンボールの山が積まれていた。これは文化祭の落し物とかだな。
「助けて~」
しかもダンボールの山から声がする。
「って、埋まってるのかよ!!」
慌てて掘り起こすと桜崎がいた。
「た、助かりました~。まさか倒れて来てうまるなんて」
「いい迷惑だ」
「すみません」
「それにしても」
この量は異常だな。きちんと片づけをしたはずなのに。それになんで俺たちに押し付けられるんだ。この荷物。
「うわ! 何ですのこの荷物は!!」
「西園寺か、落とし物とかそんなんが届けられたんだよ」
「きちんと片付けをしたはずですわよ」
「そのはずなんだが……残ってたようだ」
「はあ~、とりあえず仕分けして持ち主を探しますわよ。他の人達は?」
「赤羽と劉斗は家の用事で休み綾崎は今日は早く帰らないと行けないからという理由で帰った。馬鹿は狭間先輩の実験に使われてる」
「そうなんですの。しかし、三人だけでは終わりそうにありませんわね。どうしましょうか」
「誰かに頼むか」
「仕方ありませんわね。終わらなければ困る人もいるでしょうし」
さてなら手伝ってくれそうな奴に電話するか。
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「オーッス手伝いに来たよ!」
「助かる坂井」
坂井が手伝いに来てくれた。
「級友の頼みだからね。別に用事ななかったし」
さて、これで一人だな。
「すみません、早崎ですけど」
「あたしも来たぜ!!」
早崎と柳原も来てくれた。
「助かる」
「あれだけやってもらったからせめてものお礼にて思って」
「そうだぜ会長さん。困ったときはお互い様だ」
「そうだな。そういえば部長たちは来てないのか?」
「足手まといになると思ったんでおいてきました」
早崎が言った。ああ、確かにあの科学部部長は足手まといになりそうだからな。てか、早崎結構毒吐くな。
「楓さんは部長さんのお守りだ」
柳原が続けて言った。
「なるぼど」
わかりやすいな。
「私も呼びましたわ」
そこには体育祭のときの三人組。
「あ」
「あ!」
「「「「「あああああああああああああ!?」」」」」
「あのときのチビガキ」
「ここであったが100年目じゃ! 二人とも!」
「はい姫様」
「イエス姫様」
控えていた二人が言った。
「やってしまえ」
「まちなさい!」
西園寺が丸めた書類で御津の頭をはたいた。
「イタイ」
涙目の御津。そんなに強くなかったと思うんだが。
「あなたは何をしようとしてるんですの!!」
「いやわらわはこの前の勝負の続きを……」
「黙りなさい。誰構わず勝負を挑む癖を直しなさいといつも言っているでしょう」
「なあ、西園寺、このチビガキとどんな関係なんだ」
「ああ、この蜜柑は私の従姉妹ですわ」
どうりでどことなく似ていたわけだ。
「でも~」
「でもじゃあありません。まったくすみませんわ。六道隼人」
「いや、別にいい。手伝いに来てくれたんだからな」
とりあえず人数が揃ってくれたのはうれしい。
「まあ、これだけいれば大丈夫だろ。じゃあ、片付けるぞ」
『おー!!』
片付け開始。
「うわ、定規にはさみに糊、こういうのって持ち主見つからないことが多いからな」
「あの、隼人君これどうすればいいでしょうか?」
「ん?」
桜崎の持っているものを見る。かつら。
「それは明らかに演劇部だ」
「それが名前が書いてあるんですよ」
「それなら届けろよ」
「それが……隼人君の名前が」
「捨てろ」
即答してやった。
「でも……」
「捨てろ」
「はい」
あんなものは捨てないといけない。絶対に残してなるものか。てか誰が俺の名前を書いたんだ。
「う~ん、隼人~、これはどうすればいい?」
坂井の持っているいるものを見る。心臓。つくりものだ。言っておくが本物ではない。
「赤羽だ!! 赤羽に連絡しろ」
これ絶対赤羽だよ。そうでなきゃ演劇部と思いたい。
「これ作り物だよね」
「本物が合ったとときはこの学校が終わるときだ」
「あはは~、たぶん演劇部が使ったんだよね」
「そうだと願いたい。それか赤羽だ」
そんなものを放置しておいてほしくはない。心臓をそのまま置いておくってどんな奴だよ。
「おい、貴様」
「何だチビガキ」
「これはどうすればよい」
御津が持っていたのは星のついた七個の玉。
「わらわにはドラゴ○ボールにみえ……」
「駄目駄目! 何も言うな!!」
「しかし」
「駄目だ! これは処分だ。処分するべきだ」
「おぬしがそういうのなら」
御津はそれを処分の箱に入れた。ふう、アレは危な過ぎるいろんな意味で。あの冷蔵庫が取りに来たら困る。死ぬよ絶対。スーパーになれそうなのが約一名いるが今日は狭間先輩のところだ。
「ねえ、これどうすればいいかな?」
早崎が俺に本を持ってきた。
「図書館のじゃないのか?」
「なんか見たこともないような文字で書かれてるんだ」
「まさか、魔本か!?」
「怪しいよね」
「怪しいがそれは今すぐ持ち主に返さないと危険なことになる、幸い持ち主はすぐに見つかりそうだから返してきてくれ」
「わかった」
ふう、魔本を落とすなんてどういう了見だよ。危なすぎるだろ。
「生徒会長さんよ黒いノートがあったぜ」
「警察に届けろ」
柳原とりあえずそれは警察に届けたほうがいいと思う。そしてあの嘆願書に書いてあったこと本当だったんだな。警察にその生徒のことも連絡だな。悪いがこの学校から殺人鬼を出すわけにはいかない。
「おう、わかったぜ。とりあえず。これは警察に届ければいいんだな」
「ああ、そんな危険物は放置なんかしたらより危険だ」
「そうか、名前を書いてみようかと思ったんだが」
「死にたいのかよ!!」
「試してみたくなるのがあたしだぜ!」
「それで死なれたら俺が困る」
「そうか残念だぜ」
残念がるな。
それからは黙々と作業をするだけ。
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「ふう、それにしてもまったく」
何とか大体のものは返すことができたが。
「まだ残ってるなどうする?」
「これはもう、どうしようもありませんわね」
あきらめたくはないがもう時間も時間だ。そろそろこいつらを帰してやらないとな。
「じゃあ、今日は終わりだ。帰るぞ」
「あははっ、ようやく終わり~? 長かった~」
坂井は良く働いてくれたからな。
「それじゃあ、帰るとするかのそれにしても疲れたの」
御津、お前は僕二人にさせて自分はドラゴン○ールを見つけただけだろう。なぜ疲れる。
「それでは姫様、帰りましょう」
「そうです姫様」
こいつらは無駄に元気だし。
「じゃあ、帰りましょう」
「やべ、鞄どこ行った。悪いが先に帰ってくれ」
「あ、はい、わかりました」
桜崎達が出て行った。
「さてと、マジで鞄どこ行った」
こっそりと続きをやるつもりだったが鞄が本当にどこかに埋まってしまった。
「あったあった」
その時視界の端に何かが見えた気がした。
「ん? なんだ?」
また視界の端に何かがうつる。
「何だ? まさか、幽霊とかじゃないよな」
「正解です」
「うわ!!」
俺の目の前に半透明の灰色の髪の少女がいた。
「そんなに驚かないでくださいよ~」
「いや、今の状況を驚かないほうがおかしいだろ」
「それもそうですね」
何だこれは、幽霊と遭遇してしまったぞ。どうする、なんか悪い幽霊ではなさそうだが。幽霊に善い悪いがあるのかどうかもわからないが。いやしかし。
「あの~。深呼吸して落ち着いたら」
「ああそうだな」
って、何幽霊にアドバイスされてるんだ。落ち着け落ち着け。
「ふう~。それで君は何者?」
「ウメともうします。ウメちゃんと呼んでください。ウメさんは駄目です。確かに君より年上だけどウメさんはだめ、なんかおばあちゃんみただから。といっても君から見たらおばあちゃんみたいな年なんですけど」
「はあ~」
さて、冷静に考えてみるとかなり季節外れだよな。これ普通夏とかじゃないのか。
「それで何しに来たんですか」
「そうですね~。わたしは代々生徒会長さんとはよく遊ぶんですよね」
「ってことはあの佐藤帝も?」
というか遊ぶ?
「ええ、知ってます。あの人のことは気に入りませんけど」
あの人幽霊にまで嫌われてるのか。
「それにしても~」
ウメちゃんが俺の顔を見る。
「何です?」
「似てますね」
「何が?」
「いえ、初代の生徒会長さんに」
「はあ」
初代生徒会長なんて知らないぞ。
「ん~、なんか懐かしいですね~」
「いや、そんなんで懐かしがられても」
「そうですねすみません」
「…………」
「…………」
沈黙。何か話さないといけないのだろうが幽霊と何を話せというのだろうか。
「え、えっとそれじゃあわたしのことについて話しますね」
そう言って勝手に話し出した。
「わたしは今から100年ほど前にここで死んだものです。別にこの世に未練なんてないんですけどう~ん、ここってそんなに古い学校じゃないんですけどこの学校はえっとそう、ぱわ~すぽっとというやつで磁場とかなんとかの影響でここって幽霊とかでやすくてえ~っとそのせいでわたしはここにいるんです」
さて、この説明で何人の人がわかったのだろうか。俺はわからない。
「それでそのウメちゃんはなんで今俺のところに?」
「え~と、それはその、気まぐれです」
おい。なんだそりゃ。
「ここも昔と変わりました。でも変わらないものもあります。そうですね、わたしからの忠告をひとつ、いずれあなたは大きな選択をしなくてはいけません、どうか間違わないでくださいね」
「それはどういう?」
「まあ、今はきにしないでください。今はあまり意味はありませんから。そうですねあとは佐藤帝に気をつけてください。彼は今年で卒業ですけどまだ、始まったばかりだから。それに諦めが悪いから」
「はあ」
「あ~、その目は疑ってますね。いいですいいですよ。いずれあなたはわたしに感謝してひざまずくんですから」
「いや、それはないと思うんだが」
なんで幽霊にひざまずかなくちゃいけないんだ。
「う~ん、それでも気をつけないといけませんよ。見てきたものがいうんですし。それに何回でも繰り返しを見て来たわたしが言うんです間違いはないですよ」
「それなら明日の天気でも当ててください」
「晴れ」
「即答ですか。外れたらどうします?」
「う~ん。どうもしない」
「おいおい」
「だって、幽霊のわたしにかけるものなんてありませんよ~っだ」
「それもそうですね」
かけるとしたら己の存在ぐらいだな。
「う~ん、こんな話をしにきたんじゃないんだけどな~。そうだ、じゃあ、わたしの死んだときの話を」
「そんな話は聞きたくありません」
誰が好き好んで人が死んだ瞬間の話を聞かなくちゃいけないんだよ。
「え~、それなら~」
「いや、無理に話さなくてもいいですけど」
「それじゃわたしの気がすまないの!」
「まったく」
その時矢が飛んできた。
「うわ!!」
「ひゃ~!!」
誰にも当たらずに壁に刺さった。危ねえ、一体誰だこんなことしたのは。
「チッ、はずしたか」
「誰だ!」
「どうも生徒会長殿お初にお目にかかる。某は浜弓桔梗と申すもの以後お見知りおきを」
長い髪をポニーテールにした女子生徒。弓と刀をもっている。さて、どうしたものか。というか銃刀法違反じゃないのか? てかえらく古風な話し方だな。ここにきて新キャララッシュかよ。
「その浜弓が一体何なんだ。いきなり矢を撃たれたんだが」
「某はそちらの悪霊を退治しにきただけの話」
そうなのとウメちゃんの方を見ると。
「ちがいます~。わたし悪霊じゃありませんよ~」
まあ、確かに悪霊ではないな。トロそうだし。しかしなぜこんな状況でゴーストハンターらしきうちの生徒が出てくるのやら。まさか、佐藤帝の差し金か! ありえるな。
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一方佐藤家では。
「いや~、ウメちゃん君すこししゃべりすぎ、だから少しお仕置きだよ」
部屋で携帯を見ながら言った。やはりコイツの差し金である。
「バカ兄貴ー!! はよ降りてこいやー!!」
「今行くよ」
佐藤美由紀に呼ばれたので電話を閉じ立ち上がる。
「さ~て、どうころぶかな~」
「はよせー!!」
「い、今行くよー!!」
とある佐藤家の様子でした。
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「生徒会長殿そこをどいてくだされ」
「いや、その前に話を聞け!」
「くっ、もうすでに生徒会長は悪霊の手の中に」
駄目だ、コイツも話を聞かない奴だ。
「お~い、話を聞け」
「仕方がありませぬ。こうなれば生徒会長ごと」
俺ごと殺る気かよ!
「いいから話を聞け!!」
丸めた教科書で軽く殴る。
パコン。
「はっ!」
「いいから少し話を聞け。それからでも遅くない」
「は、はあ」
「いいか、この幽霊は悪霊ではない」
「しかし、依頼主からは」
「たぶんその依頼主佐藤帝ではないか?」
「おお、その通りだ」
「やっぱりか。それ騙されてるぞ」
「なんと!!」
「コイツは明らかに悪霊じゃない」
「た、たしかに。で、では本当に?」
「ああ、佐藤帝に騙されてただけだ」
「某はなんと言うことを!」
浜弓はうなだれてしまった。
「お~い、あまり気にするな」
「いえ、もう、某腹を切ってわびるほかありませぬ」
どこの時代の人間なんだコイツは。って、本当に切ろうとするな!!
「やめろ!! そっちのほうが迷惑だ」
「ですが……」
「騙されていたのなら被害者だろ。いい、そんなに気にするな」
「申し訳ありませぬ。某、この借りは絶対にお返しもうする」
「気にしないでくれ」
「それではなにかありましたら某を呼んでくだされ。それでは」
メアド交換した後浜弓はそのまま窓から飛び降りて行った。
「すごい人でしたね~」
「人間のレベルを超えてるだろ、はあ~。俺も帰る」
「そうですか。それじゃあ~」
「ああ」
幽霊に見送られるというかなりレアな体験をしながら俺は生徒会室を後にし帰宅したのだった。
これから更新が遅くなりますすみません。
一週間に一話のペースになると思います。
本当にすみません。