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天の桜が咲く頃に  作者: テイク
第三章 秋で少し休みましょう
33/69

第三十二話 文化祭打ち上げは終わり祭りは終わり

「文化祭を無事に終えたことを祝してかんぱ~い!!」

『かんぱ~い!!』


 坂井の言葉で1-5+αの面々がコップをあげる。現在俺たちは教室で打ち上げを行っている。+αは西園寺と例の斉藤美咲(さいとうみさき)と佐藤と狭間先輩だ。


「本当によろしいんですの。(わたくし)なんかが呼ばれて」

「ああ、いいさ、こいつらはなにも言わないだろうし」

「美少女が増えるのはいいことだからね」


 となりで馬鹿(うましか)が言った。


「そうですの。それなら楽しませていただきますわ」


 それにしても山田君(仮)や衛間宮が料理を作ってくれるのでこの打ち上げにあまり経費はかかっていない。うまくやるな劉斗。


「いや~、儲かったな」

「お前は働いてなかったけどな劉斗」

「言ったりろ(オレ)はいろいろやってたんだ」

「本当かよ」

「ああ、情報収集とかな」

「なんでそんなものの必要がある」

「その情報収集である情報が集まった。これだ」


 劉斗が出したのは一枚の写真。


「なんだ……」


 見た途端思考がフリーズした。


「誰かが裏で取引していたらしい」


 赤羽の仕業だな。


「それはこれだけか」

「いや、写真集がある」

「殺す」


 俺は赤羽のところに言った。


「あら、隼人どうしたのそんなに殺気なんだして」

「これはどういうことだ」


 ドスのきいた声で写真を見せながら言った。それなのに赤羽は余裕そうだった。


「ああ、それね良い仕入れどころがあったしそれに売れそうだったから。稼がせてもらったわ」

「俺の女装写真をか!!」


 そう、劉斗が俺に見せたのは俺の女装写真だ。しかも盗撮。


「ええ、本当に良く稼がせてもらったわ」

「一回殺していいか?」

「それは遠慮しておくわ」

「一体いつだ。いつ取引してやがった」


 赤羽も接客で忙しかったはずだ。休んだときは着ぐるみを着ていたはず。


「!? まさか」

「ええ、そのまさかあの着ぐるみね別に遊んでいたわけではないのよ。あれなら誰に気づかれずに取引できるでしょ」


 確かに俺はあの時驚きだけで何も気にしなかった。


「くそ」

「でもまあ、そうね、特別に誰が写真を盗撮したのかは教えてあげるわ。稼がせてもらったお礼」

「そうかよ」

「写真部よ。まったくいい腕よね」

「ちょっとまってろ」


 幸い写真部はまだ帰っていなかった。


「な!、誰だ!」


 写真部部室に入るとそこには小柄だが引きしまった男がいた。


「お前が写真部部長か」

「……そう」

「死ね」

「……やめろー!!」


 写真部を破壊しデータを全て消去しバックアップも全て破壊しネガも全て焼き捨てた。データのほとんどが盗撮写真だった。


「さてこれからは俺に従ってもらうぞ」

「はい」


 写真部に絶対服従を誓わせてもどった。


「あら、おかえり結構酷くやったわね」

「なんでお前は俺がしたことを知ってるんだよ」

「それはね私も監視カメラをいたるところにつけているからよ」


 警察に連絡したら逮捕できるんじゃないだろうか。


「それは無理ね」

「心を読むな」

「警察への手回しもしてあるし。たとえ私が人を殺したとしても……私は捕まらないわ」

「お前は一体何なんだよ」


 なんで警察まで手中に収めてるんだよ。


「安心しなさい。私は人を殺す気なんてないんだから」


 この時思えば赤羽は止めてほしかったのではないだろうか。でも、この時の俺は何も知らなかったから赤羽に何も言ってやることは出来なかった。もし、俺が全てを知っていたらあんなことにはならなかったのかもしれない。全ては過ぎていったことだけれど。こんなことしかいえなかった。


「そうでないと困る」

「そうね」


 まったくとりあえずこれでもうあの写真がまわることはないはずだ。ひとまず一安心だ。


「おうおう楽しんどるか~若者よ~」

「おい、佐藤なんか顔赤いぞ、酒飲んでるんじゃないだろうな」

「飲んでへにょ~」


 辺りを見回すと、はいありましたアルコール飲料。お酒は二十歳からいい子は真似するなよ。


「なあなあ構ってえ~な」

「ええい暑苦しい」

「なんてな」


 いきなり普段どおりに戻った。


「おい、飲んでなかったのかよ」


 アルコール飲料を見たらただの空き缶しかも元から入ってなかった。


「焦ったやろ」

「お前な~」

「こんなところでお酒なんか飲めるわけないやろ。常識や常識」

「お前な」


 こいつは常識人なのかそれとも芸人なのか時々わからなくなるな。


「さて、それにしてもかなり儲かったみたいやな」

「ああ、そのせいで見にいけなかったわるかったな」

「ええてええて、クラスの方が大事なんやから」

「そうか? お前そういうときは怒っていいと思うんだがな」

「う~ん、そういうのは人それぞれ事情があったんやから仕方あらへんやろ。怒っても仕方ない。あんな兄がおるとな、大抵のことは許せてしまうんや」

「お前いつかそれで損しそうだよな」

「よく言われるでそれ」

「だろうな。心配だ」

「大丈夫や。そんなことにはならへん」

「そうかねえ」


 まあ、本人がわかってるなら大丈夫だろう。それでも心配なのは変わらないんだがな。


「なんかあったらいいな」

「ああ、なんかあったら言うわ。そんときは助けてや」

「わかった助けてやるよ」

「約束やで~、なんてな」


 まったく。


「うちは面白ければそれでええ。それでええんや」


 こいつは要注意かもな。はあ、佐藤から目を放つとどよんとした空気があった。何だこれ?


「隼人~」

「うわ! どうした綾崎!」


 その正体は綾崎だった。


「聞いてよ~」

「いや、大体わかった。大方馬鹿(うましか)にでも逃げられたんだろ」

「う、うん。えっとね、明日どっか行こうって誘ったら」


 重症だな馬鹿(うましか)


「たぶん照れ隠しじゃないのか」


 そういうことにしておこう。馬鹿(うましか)より綾崎の方が心配だ。馬鹿(うましか)はいくら死んでも構わないが綾崎となるとそうは行かないからな。


「そうかな?」


 すこし雰囲気が明るくなってきた。


「そうだと思うぞ。お前みたいなやつが誘ってるのに逃げるのはおかしいだろ」

「そ、そうかな」

「ああ、そうだと思うぞ、もう少し自分に自信を持てばいいと思うぞ」

「そう?」

「ああ、そうそう」

「そうだよね。うん、自信を持たないと、ありがとう隼人」

「そうだな、後は家にでも誘って料理でも食わせてやるっていえばたぶん飛びついてくると思うぞ」

「そんなのでいいのかな?」

「ああ」


 アイツにとって料理を食わせてくれるなら地獄でも煉獄でもどこにでもついていくだろう。前までアイツの食事は確か塩だけだったはずだ。今は若菜ちゃんのおかげでマシになったらしいが、昔の習性には逆らえないだろう。


「料理か」

「料理できるんだろ」

「う、うん」

「それなら大丈夫だろ。ちなみにアイツの好きな料理はカレーだ」

「そうなんだ」

「子供みたいだろ」

「……でもそれなら」


 なんか考え込んだな。だがさっきの状態よりははるかにマシだろう。


「まあ、がんばれ」

「うん」


 これで大丈夫だろ。ふと前を見ると馬鹿(うましか)が角からこちらを伺っている。


「なにやってるんだお前」

「しっ! 夕菜に見つかっちゃうじゃないか」

「何で見つかったら駄目なんだよ」

「死んでたまっかよ」

「何があったんだよ」


 まあ知ってるが面白そうだからな。


「夕菜が僕を遊びに誘ったんだ」

「それはいいことだろ」

「隼人考えてもみてよ。あの夕菜だよ。ただの遊びで終わるわけないじゃないか!!」


 お前の中の綾崎のイメージを疑うな。まあ、ほとんど綾崎の自業自得なんだが。


「食事でも奢ってもらえるんじゃないか?」

「それなら行くけどあの夕菜だよ」


 これは苦労しそうだな。


「騙されたと思っていってみたらどうだ?」

「いやだ」

「お前かなり失礼だと思うぞ」

「失敬な僕は自分の命が一番大事なだけだよ」


 綾崎もう少し態度を考えたほうがいいぞ。俺も賛成だから。


「……それはそうだがな。お前好きな奴とかいないのか?」

「全世界の女子!!」


 いつか殺されるんじゃないか馬鹿(うましか)は。いや今現在殺されかけてるか。


「それには綾崎も入ってるのか?」

「いや、あんな化物は入ってないよ」

「本当に失礼だな」

「そういう隼人はどうなの?」

「ん、いないぞ」

「え~! いないの~!!」

「ああ、いない」


 好きな奴を作る気もない。


「なんで~」

「何ででもだ」

「つまらないな~」

「お前には言われたくないな」


 まあ、つまらなくてもいいさ。


「綾崎の話を聞いてみろ。いいことがあるかもしれないぞ」

「え~」

「騙されたと思ってな」

「まあ、そういうなら」


 さて、綾崎後はお前しだいだ。


「六道隼人」


 馬鹿(うましか)を見送った後西園寺に声をかけられた。


「何だ西園寺」


 西園寺の後ろにはメガネをかけた小柄な少女がいた。


「彼女が斉藤美咲ですわ。あの絵の。本当はもっと早くあわせたかったのですが、どこかに行っていて」

「そうなのか。俺は六道隼人だ」

「……斉藤美咲」


 あまりしゃべらない子なのかな。なんというか小動物みたいなイメージだ。なんかちゃんづけの方が似合う気がする。


「あの絵は美咲ちゃんが書いたんだよな」


 コクリと頷く美咲ちゃん。


「あまりしゃべらないんですの。そうだ、(わたくし)はジュースを持ってきますのでその間にお話なさい」

「ああ、悪いな」

「……あり……がと」


 さて、何を話そうか。


「えっとあの絵はなんで書いたの?」

「あれ……実際の……風景……違う」

「そうなの?」


 コクリと頷いた。


「思いついた……のを……ただ書いた……だけ」

「そうなんだ。それであんな絵がかけるなんてすごいね」


 俺があの絵に引かれたのはあの絵が美咲ちゃんの心を表していたからなのかもしれない。


「別……に」


 そういう割には頬が赤い。うれしいんだろう。


「あの絵さ、なんかいいと思ったんだよね」

「……?」

「ただ空と丘を書いていただけだけどとても綺麗に思えたんだ」

「あり……がと」

「いいよ。俺が思ったことなんだから」

「あら、ずいぶんと仲良くなったみたいですわね」


 話していると西園寺が戻ってきた。コップを受け取り飲む。


「六道隼人少しよろしい?」

「あ、ああ」

「……?」


 西園寺と角に移動する。


「彼女のことどう思いました?」

「そうだな、あまりしゃべらない子だな。それにあまり呂律も回ってなかったし」

「あの子は原因不明の病気ですわ」

「そうなのか」

「ええ、(わたくし)はあの子の両親が死んだショックのせいだと思っているんですの。(わたくし)はあの子の保証人ですわ」

「そうだったのか」


 とてもそうには見えなかった。


「さっきのあの子はとても楽しそうでしたわ。いつもあの子は遠慮しているのでとてもよいことと思いますわ。だから六道隼人、あの子に時々でいいからあの子と遊んでくれたらうれしいですわ」

「そんこと頼まなくてもいいさ。みんなで遊んでやるよ」

「ありがとうですわ」

「いいさ、同級生が遊んでるだけなんだかな」

「そうですわね」

「いつでも生徒会室に遊びに来ていいって言ってやれ」

「そうですわね。それであの子が楽しめるなら(わたくし)もうれしいですからね」


 西園寺はどこか影を残す微笑みを浮かべて言った。


「ほら戻るぞ」

「そうですわね」


 その後もたわいもない話で盛り上がった。


「あの~隼人君」


 飲み物を取りに行くと桜崎に声をかけられた。


「どうした桜崎」

「いえ、なんとなく呼んだだけです」

「何でだよ」

「いえ、この頃出番が少ない気がしたので」

「何の話だ」

「こちらの話で」


 何の話なんだよ。


「いえ、ね、私メインヒロインのはずでしょう」

「いや意味わからん」

「これもこちらの話ですので」

「どこの話だよ」

「まあ、いいです。楽しかったですね」

「そうだな」

「こんなことがまた出来るんでしょうか」

「出来ないな」

「……それは悲しいです」

「なんたって今回よりもっとすごいことになるからな」


 桜崎が驚いた顔をする。


「あはは、そうですね。今回よりもすごいことをやるんですね」

「ああ、楽しみにしてろ」

「はい、楽しみにしてます」


 来年が大変だな。


「くう~」


 さて、この寝息は誰のだ。っていっても一人しか俺は知らない。


「狭間先輩」


 教室の隅で寝ていた。


「……すぴ~。くう~、ううんむい~」

「狭間先輩起きてくださ~い」


 狭間先輩をゆすって起こそうとする。


「うう、くう~」

「起きないと風引きますよ」


 もっと強くゆする。


「う~う? う~ん。おはよ~」


 ようやくおきてくれた。


「おはようございます。本当はもうこんばんわですけどね」

「寝てた~?」

「バッチリ」

「今日こそは起きてようと思ったのに~」


 それでも爆睡でしたよ。


「それにしても隼人君のところは何をやったの~?」

「それも知らなかったんですか」

「うん~。実験で忙しかった」


 文化祭なのに何をやってるんですかあなたは。


「実験の結果は?」

「上々~」


 うれしそうに言う狭間先輩。


「結構人が来てくれたおかげ~」


 あの怪しい部屋に入っていったのか。なんかみんな終わったあとはかなり微妙な顔をしていたに違いない。


「それで私のやることは終わり~。あとは南雲君に任せた~」

「あの装置全部劉斗にあげちゃったんですか」

「うん~。そっちのほうがあの子喜ぶ」

「あの子?」

「高次元異知性体」


 いきないの聞きなれない言葉。


「簡単に言うと」

「AI」

「そういうことですか」

「うん~。あの子はこれからどんどん進化する。まだ小さな子供だけど、いつかどんなものよりも賢くなれる~。それこそ人間なんてめじゃないくらい」

「それってある意味危険なんじゃ」

「一部にはそういう人もいる。だけど私はそうは思わない、あの子、人間のこと理解しようとしてる。今はむりでもこれから。今の技術じゃ駄目だけど南雲の技術なら近い将来かならずあの子の住みやすい世界を作れる。もしかしたらあの子が作るかも。だから私は南雲君にあげた~。早くあの子の仲間が出来ればいいなと思う。私みたいにならないように」


 狭間先輩は珍しく長々としゃべった。あの子つまりAIのことがそんなに心配だったのだろうか。当然だろうAIはいわば狭間先輩の子供とも言えるのだから。


「ふう~。しゃべり疲れた。寝る~」


 狭間先輩はまた眠ってしまった。


「大丈夫ですよ」

「ありがと~」


 俺の言葉に寝言で返事をした。


「さて、このままじゃ風邪をひいちゃうな」


 とりあえずその辺りにあった毛布をかけてあげた。そして顔を上げると溜息をつく坂井が目に入った。


「ふう~」

「どうした坂井」

「いや~はは。笑われると思うけどもう終わりなんだな~って」

「そうだな」

「そう思うとねなんかね。楽しかった分」

「そうだな、それならまた今度も楽しくすればいいんじゃなか」

「そうだね。こんな気持ち忘れるくらいね」


 坂井がいつもの顔になる。


「それなら期待してるよ、生徒会長」

「まあ、程ほどに期待しといてくれ」

「あははっ、そうするよ。まあ、なんかあったら呼んで力になるからさ」

「ああまあ期待しとくよ」

「そうそう。さあ~ってそろそろ時間も遅くなってきたしそろそろお開きにしようかな」


 仕切りやだな。まあ、そこが坂井のいいところなんだけどな。


 こうして片付けも終わり、打ち上げも終わり、一年めの文化祭は終わりを告げた。


 とても楽しい文化祭だったと思う。出来るなら来年も楽しい文化祭にしたいとそう思う。


****


 一方、佐藤帝は。


「いや~、今回の文化祭は酷い目にあった」


 佐藤帝は呟いた。一日目の赤羽スペシャルを食べたあと腹痛が止まらずに二日目を欠席してしまったのだった。最後の文化祭なのに残念なお話である。


「帝、食べ物には気をつけろといいましたよね」


 永城雄太がりんごをむきながら言う。ちなみにここは佐藤帝の部屋。


「うう~、気をつけたよ。あの赤羽の料理が俺の予想をはるかに超えていただけの話だよ」

「まったく」


 りんごをむいていく永城雄太。向き始めてから一度も切れていません何気にすごい。


「こんなのが最後の思い出なんていやだー!!」

「はいはい、病人はおとなしくしてなさい」

「うう~、不幸だ」


 今まで人に脅迫したり悪いことした罰があたったのかもしれません。


 まあ、原因は赤羽なのでそうではないと思うけど。


 これにて本当に彩上高校の文化祭は終わったのだった……。


うら☆てん


作「一人ぼっち……寂しくなんてないやい」



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