第二十九話 クラスと出し物と女装
翌日、今度はクラスでの話し合いだ。男女の学級委員が黒板の前に立って司会を務めている。
「それではクラスの出し物を決めたいと思う。何かいい案はないか?」
男子の学級委員がクラスメイトに言う。だが、あまりいい意見が出そうにない。そんな中とある男子が手を上げた。
「アンケートなんかいいんじゃないですか」
たしかに手はかからないからな。だが、そんなのでいいのか? せっかくの文化祭だぞ。ってそういう俺も意見をだしていないんだがな。
「ちなみに売り上げは俺たちで使っていいそうだ」
学級委員がそういった瞬間手が挙がりだす。金がかかった途端これか。
「はい」
「どうぞ赤羽さん」
「写真館とかどうかしら」
なんか怪しいな。
「具体的には?」
「学年中の写真を飾るのよ」
「それは中々面白そうですね」
「ちなみに飾るのはその人のトラウマや恥ずかしい写真よ。私が解説もつけてあげる」
えげつねえ!! ここでもそんなことするのか。
「しかも、入場料のほかに追加料金を出せばその人の秘密も暴露」
悲惨すぎる。そんな写真館やばすぎる。しかも生徒会は俺たちだから止める人間もいない。
「えー、なにやらまずい空気がありそうですが。一応意見なので黒板に書いて置きましょう」
女子の学級委員が黒板に書いていく。
【候補①写真館『地獄』】
その名前はあっている気がするな。てかどこのバ○テスだよ!!
「他に意見がある人」
「はいっはいっはい!!」
「馬鹿君」
「男ならメイド喫茶だぁー!!」
馬鹿が叫びをあげる。
「喫茶店ですかよさそうですね」
『確かに喫茶店は集客率は高そうだな』
『それにこのクラスは可愛い子が多いからな』
『ああ、男の夢だな』
クラス中がざわめく。なんだこのクラスは。学級委員が黒板に書いていく。
【候補②メイド喫茶『男の夢』】
あの学級委員聞こえた意見だけ書いてないか?
「他にないか?」
「はい」
「はい、綾崎さん」
「執事喫茶とかどうです?」
ほう、綾崎からそんな意見が出るとは。
『執事喫茶ね、おもしろそう』
『カッコいい人とかこのクラス数人いるし』
『執事服ならそれなりにかっこよくなるはず』
『でも、土台は大事じゃない?』
『まあ、そこはケースバイケースで』
『そうね、あなたの僕ですって言われたいね』
クラスの女子が騒ぎだした。てか最後の赤羽だろ。
【候補③執事喫茶『あなたの僕』】
なんか違う店みたいだ。
「お~う、話し合いは進んでるか~」
水原先生が入ってきた。そして黒板を見た。
「ほう、これは面白いことになっているな。そうだな、このメイド喫茶と執事喫茶を合わせたらどうだ?」
「それはいいですね」
「浪漫だろ」
水原先生の意見が書かれる。
【候補④メイド執事喫茶『浪漫』】
やっぱり出た意見で書いてやがる。
「他にはないか?」
「はい」
「衛間宮君」
「コスプレ喫茶とかどうだ?」
衛間宮の意見にクラスがざわめく。
『コスプレ喫茶ならメイド以外も見れる!』
『そうだ! チャイナやドレスも』
『スク水!!』
『ネコ耳! バニー』
『だめだ、想像したら鼻血が止まらない』
『妄想の泉だ!!』
このクラスには変態しかいないのか?。
【候補④コスプレ喫茶『妄想の泉』】
もう何が何だかわからないな。
「さて、じゃあここから決めるとしよう。いいものに手を上げてくれ」
多数決。もう適当だ。
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「よし、それではメイド執事喫茶に決定だ」
「まて」
「何か問題でも水原先生」
「これじゃあ、インパクトが足りない」
自分の意見なのにか。
「そうだ、男女を逆にしよう」
『はあ!?』
クラス中から驚きの声が上がる。
「女子が執事で男子がメイドだ、うん、決定」
「ですが」
学級委員が反論する。
「バカ者! メイドに執事じゃありきたりだだが、その配役が逆になることで驚きがあり客が入るという寸法だ!」
「しかし」
「これは決定事項だ!! 反論は許さん」
「わかりました」
賛成した学級委員。
「また、隼人君の女装が見れます」
「頼むから思い出させないでくれ」
そんなわけで俺はまた女装されそうです。
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それから二日後、山田君(仮)が作ってきた衣装が届いた。料理などの班にわかれているのだが。俺は劉斗赤羽の策略によりホール班だ。劉斗は厨房。
「最悪だ」
「ほらほら、元気出してくださいよ」
「こんなのを着れといわれて元気になれると思うのか?」
「でも、きっと似合いますよ」
「やめてくれ」
「ほらお前ら着替えろ!!」
水原先生の命令により今日は衣装合わせだ。他のクラスの連中が来ないように見張り+バリケードまで築いて完璧な防御体勢を取っている。そのおかげで逃げるに逃げられない。そんなわけで男子の半分のホール班(女子選抜女装の似合いそう男子)はいやいやメイド服に着替えるのであった。みんなかつらつけました。
そして俺は案の定この前と同じ状況に陥ることとなった。
「うお!」
「すげえ」
「ヤバイな」
「私と結婚しよう」
そこにはクラスの男子に囲まれているメイド服の美少女が居た……………………俺だった。みんなメイド服、なんてシュールな光景だと普段なら笑いそうだが羞恥で死にそうだ。
「死にたい」
「似合ってるぞ」
「うるさい!」
はあ~。他の奴らもそれなりだから目立つことはないだろう。そのうちに着替えた女子も入ってきた。
「六道君すごい似合ってる」
「本物の女子みたいね」
「可愛いです」
めだってしまった。女子からの感想もはや拷問だ。やめてくれと言いたい。
「おお、予想外だな」
水原先生が入ってきた。
「これなら客取れるな、よし、貴様らがんばれよ!」
そういい残し水原先生はどこかへ行った。
「はあ~。着替えていいか?」
「駄目よ、六道君はそのままで」
着替えたいのに女子が許さない。
「あら、お似合いねみんな」
執事服を着た赤羽がやって来た。
「似合ってるな」
「あら、ありがと、隼人も可愛いわよ」
「可愛い言うな!!」
「本当なのに」
可愛いと言われても嬉しくない。
「まあ、良いわ。それにしてもこの服ピッタリね」
確かに忌々しいほどピッタリだ。
「当たり前だ、全員にあうように作ったからな」
内装の指示をしていた山田君(仮)がやって来て言った。
「それは全員のを調べたとでも言うのか!!」
メイド服の馬鹿が言った。何か似合ってるな。
「まあ、そうなるな見立てだが……」
「総員突撃ぃーー!!」
『サーイエッサー!!』
メイド服の男達が山田君(仮)に突撃していく。シュールな光景だ。
「くっ! この戯け共め!!」
山田君(仮)が白と黒のビニール傘を取り出し群がる男を蹴散らしていく。
「あとはお前だけだ」
「やるな」
群がっていた男達は馬鹿だけになっていた。
「まだ、やるのか?」
「当たり前だ!!」
馬鹿が爪楊枝を放つ。
「我が骨組みは捩れ狂う」
山田君(仮)の手に弓と螺旋を描くビニール傘が現れ更にそれを放つ。
爪楊枝とビニール傘の激突。そして爆発。
「****」
山田君(仮)が何かを呟いた。
「何か言った?」
「戯けかわせと言ったのだ馬鹿!!」
ビニール傘が馬鹿の頬を掠めて通り過ぎて言った。
パタン。
馬鹿が倒れた。
「バカな奴らだ」
「隼人に賛成ね、普通に体型とかの情報は保健室にあるのに」
山田君(仮)が実際にはかるわけないのに、それに実際にやったらセクハラだ。
「それがわからなあからバカなんだろうな」
しかし、本当にこの格好でやるのだろうか。どうか知り合いが来ませんようにと祈っておこう。もし来たら他人で誤魔化す。姉貴が来たら逃げよう。よし、これで完璧だ。
「おう、隼人料理の方も大丈夫そうだ」
劉斗が言った。
「そうか、それは良かった。こっちがこれだけやるんだそっちが駄目なら話にならないからな」
「無論だ。我を誰だと思っている」
「完全無欠の南雲劉斗だろ」
「フッ、任せろ金がかかってるからな。稼いでやる」
なんとも頼もしい一言だ。
その後クラスでの話はなく俺は生徒会の企画や仕事に専念することができた。
そして準備は着々と進み文化祭当日へと俺達は来たのだった。
クラス企画のメイド執事喫茶『浪漫』も無事完成した。生徒会のほうも何とかなった。
こうして文化祭は始まりを告げるのだった。
うら☆てん
隼「……………………」
桜「あの~隼人君?」
隼「………………」
桜「あう、作者さんなんであんなことしたんですか!」
作「いや、ねえ~、やはり文化祭は女装かと思って」
桜「私は男装ですよ」
作「案外似合いそうだね」
桜「そういう問題じゃないと思います」
作「ごめんごめん。さすがにやりすぎたかな~とか思ってる。でも後悔はない」
桜「もう~」
作「まあまあ、せっかくの文化祭なんだから。がんばってよね、魔法をかけるから大丈夫だと思うよ」
桜「なんか怪しいです」
作「大丈夫大丈夫」
桜「安心できないです」