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天の桜が咲く頃に  作者: テイク
第二章 夏は出会いと謎と、何かが深まる季節
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第十九話 肝試し 馬鹿洋平と琴峰空の場合

 僕と琴峰さんは山に入っていった。


「う、うむ、なかなか雰囲気があるな」


 琴峰さんの声が少し震えている。もしかして怖いのかな?


「もしかして怖いの?」

「う゜ い、いや、先輩を差し置いて若輩者の私が怖いなどと――」

「あ、幽霊」

「ひぃ!!」


 超スピードで僕に抱きついて来た。中学三年生にしてはなかなか育つところは育って――ってそうじゃない!!


「ゴメン見間違いだったみたい。でも、やっぱり怖いんだね」

「うう、すまぬ先輩。不甲斐ない自分を許してくれ」

「いや、いいよ人間誰しも苦手なものくらいあるんだから」

「うう、そう言ってもらえるとは優しいな馬鹿(うましか)先輩は」

「それほどでもないよ!!」


 ふははははは!! 見ろ!! 僕だってやるときはやるんだ!!


「では、怖いから近づいてあるいていいか?」

「いいよ」


 快く了承する僕。うん、理想の先輩だよね。


 琴峰さんが近づいてきた。


 ムニュ。


 ムニュ? ハッ!! ま、まさか、これは!!


 琴峰さんは僕に密着していた。もう、あの部分が僕の左肘に当たっている。


「落ち着け、落ち着くんだ僕、KILLになれ馬鹿洋平!!」

「先輩それじゃあ、キルだぞ。正確にはCOLLだ」


 後輩それも中学生にツッコまれる僕。でもそのおかげで落ち着けた。


「ち、近くない琴峰さん?」

「こっちのほうが怖くないのだ。嫌なのか?」


 グハッ!! 少し涙目で言われた。駄目だ。僕には彼女の頼みを断ることは出来ない。


「いや、じゃないよ」

「そうか、なら行こう」


 そんなわけで、僕は精神衛生上とても危険な感触を絶えず感じながら煩悩をかき消しながら歩き始めた。ほめられるよね僕。


 しばらく歩き続けると墓地についた。


「墓地だね」

「う、うむ、墓地だ」

「……」

「……」


 沈黙が更なる恐怖を呼ぶ。僕はあまり怖くない。なんと言うか怖い怖いって人が隣にいるからかあまり怖く感じない。


「じゃ、さっさと行こう」


 とした瞬間目の前を火の玉が通り過ぎた。


「せせせせせせせせせせ先輩!!!!!!」

「うん、火の玉だね」

「何でそんなに冷静なのだ!! 幽霊だぞ幽霊!!」

「いや、明らかに水原先生だと思うけど」


 なんか糸みたいなのが見えた気がするし。水原先生も意外に幼稚だな~。


「い、いや、さっき見てきたのだが」

「え、離れた感触なかったんだけど」

「そんな仕掛けなんかなかったぞ」


 ゑ?


「冗談だよね」

「冗談ではないぞ!」

「…………」

「…………」


 沈黙後――。


「「うわああああああああああああぁぁぁぁぁーーーー!!」」


 悲鳴。

「はあ、はあ、はあ」


 僕達は祠の前にいた。どこをどう走ったのかわからないけどなんとかたどり着けたみたいだ。


「よ、よし、早くエンブレムを取ろう」

「う、うむ」


 琴峰さんが祠においてあったエンブレムを取った。その瞬間。


「ひゃ!!」


 琴峰さんが奇声をあげる。


「どうしたの!!」

「なにかがなにかが頭にいいぃぃ!!」

「落ち着いて。たぶん何かの仕掛けだよ!!」


 見るとこんにゃくだった。なんて古風な。


「大丈夫だよ、こんにゃくだよ!」

「そ、そうか、で、では、早く帰ろう」

「そうだね」


 早歩きもとい全速力で祠を後にした。

「ふう、もう少しでゴールだね」

「あ、ああ。怖かったのだ」


 祠から出た後骸骨やらゾンビやらが追っかけてきて延々遠回りをさせられた。心優しいおじさんに出会わなかったらどうなっていたか。


「だが、思ったのだが、あのおじさんは一体あそこでなにをしてたんだろうか?」

「墓参りじゃないの?」

「こんな時間に?」

「確かに。なんか僕達を案内してくれるって言ってたけど。道がわかったから断ったけど」

「そうだったな。でだ、そ、そのおじさんなのだが。足がなかった気がするのだが。気のせいだよな?」

「あれ、琴峰さんも気がついた? 足がなかったよね」

「ああ、まるで幽霊みたいだった」

「そうだね。まるで幽霊――」

「……」

「……」


 あれ~。まさか、さっきのおじさんって。


「せっせせせせせせせ先輩。うううううう後ろ」


 琴峰さんいきなり震えだした。


「え?」


 振り返るとそこには足のないおじさんが立っていた。


 パタン。


「うわ~!! 琴峰さん!!」


 たいへんだよ。琴峰さんが気絶しちゃった!!


「ととととととととととととと、とにかっく逃げなきゃ!!」


 気絶した琴峰さんを抱えて走る。その時いろいろ触れたけど気にしている余裕なんてなかった。


「うああああああああああああああああああ!!!」


 がむしゃらに走った。その時僕は風すら追い越せるかもしれないと思った。


****


 馬鹿(うましか)が山から琴峰を抱えて転がり出てきた。文字通り転がってきた。ちゃんと琴峰に被害がないようにしている辺りすごいなといいたくなる。


「はあはあはあ」

「大丈夫か?」

「あ、隼人。うん、僕は大丈夫だよ?」

「なんで疑問系? で、琴峰はどうした?」

「聞かないであげて。じゃあ、もういいよね。そっちに行けばその川を渡ればいいんだよね」


 ヤバイ! 馬鹿(うましか)が大変だ。


「綾崎!!」

「うん!、目ぇ~覚ませ!!」

「ごはあ!!」


 綾崎の拳が突き刺さる。


「はっ!! 危なかった。危うくオッサンランドに連れ去られるところだったよ」

「どういう状況だ。そんなに怖かったのか?」

「出たんだよ本物が!!」


 鬼気迫る表情で馬鹿(うましか)が言った。


「そんなわけないだろ」

「ほんとだよ! おっさんが手招きしてたんだよ!」

「そうかよ」


 幽霊なんているわけないだろ。


「うん、なんか面白くなってきたな」


 話を聞いていた水原先生が言った。


「まあ、とりあえずエンブレムをよこせ」

「ほい」


 馬鹿(うましか)が水原先生にエンブレムを投げ渡した。


「本物だな。じゃあ、次の組行ってこい」


 三組目、劉斗、赤羽が余裕そうに出発した。


うら☆てん


隼「なあ馬鹿(うましか)本当に幽霊を見たのか?」


馬「見たよ!! おっさんを!! そうだよね琴峰さん」


琴「ん? そんなもの見た覚えないぞ」


隼「ほらな」


馬「なんであんなに怖がってたじゃん!!」


琴「と言うより山に入ってからの記憶がないのだ。気がついたら戻っていた」


馬「つらい記憶を封印してるぅ!!」


隼「確かめようがないが幽霊なんていないだろ」


馬「いるよ絶対!!」


隼「じゃあ証拠を持って来い」


馬「そこまで言うなら探してやる。行こう琴峰さん!!」


琴「ああ!!」


隼「あ~あ、走ってちゃったよ」


 ………………。


馬琴「「ぎゃあああああぁぁぁぁーーー!!」」


 悲鳴が木霊した。


隼「はあ、やれやれ、お前大丈夫か~!」


 チャンチャン


Fin



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