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天の桜が咲く頃に  作者: テイク
第一章 始まりは春のあの日から
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第一話 桜の少女

第一話ですどうぞ


 町に春が来て桜が咲き乱れている。


 俺たちの町桜夕町(おうゆうちょう)に。この季節には桜が咲き乱れる町。


 俺は六道隼人(りくどうはやと)。俺はこの季節が大嫌いだ。俺に嫌な事を思い出させる。だから、桜も嫌いだ。この季節の全ては嫌いだ。


 俺は今日高校生になった。通うことになる高校の名前は彩上高校。俺の周りには浮かれ顔で歩いている同級生になるであろう奴ら。それを祝福しているかのように咲いている桜。


 気が滅入る。舞う桜の花びらは鬱陶しいし目に入る浮かれ顔の奴らはムカつく。殴りたくなる。


 俺は不機嫌になりながら坂を登っていた。景色はいいが急な坂の上にあがらなければいけないのもその気持ちに拍車をかけていた。


 その時、俺は出会った。


 ピンクのお化けに。


 いや、正確には桜の花びらにまみれて座っている……いや、寝ている女だ。


 どの位桜の木の下に居たのか知らないが肩まで伸びた亜麻色の髪の毛は桜の花びらが絡みつきピンク色に染まっている。


 制服にも花びらが絡みついていて全身ピンク色だ。そして、気持ちよさそうに眠っている。


 リボンの色を見ると青で俺と同じ一年生のようだ。


 皆、このピンクのお化けに気づいているはずなんだがみんな無視している。関わり合いになりたくないのだ。


 俺は声をかけようか迷ったが止めた。声をかけてやる義理はないし、正直めんどくさい。あとcherryまみれの人間に声なんてかけたくない。


 俺はそのまま坂を登って行った。


 校門の所でリムジンに轢かれている男がいた。その男は知り合いだった。


「いつもの光景だな」


 無視して立ち去ろうとしたら。


「知り合いがリムジンにひかれているのがいつもの光景!!」


 ひかれた男が全速力で俺の所にやって来た。


「なんだバカか」

「僕はバカじゃないよ!馬鹿洋平だよ!」

「わかったよバカ」

「まだ言うか!」


 コイツは馬鹿洋平(うましかようへい)。中学からの知り合いでバカの申し子と言える程のバカ。高校デビューのつもりか髪は茶髪に染めている。


「そうだ。お前はバカだ!」

「劉斗も言うか!」

「やっぱあのリムジンは劉斗か」

「ああ」


 コイツも中学からの知り合いで南雲劉斗(なぐもりゅうと)。南雲財閥と呼ばれる経済界を支配する程の財閥総帥の跡取り息子でいわゆるお坊ちゃん。黒髪をきちんとすればどこにだしても恥ずかしくないのだが、きちんとしていないとあまりお坊ちゃんと言う感じではなくその辺の不良のような感じだ。


「2人がここと言うことはアイツもか?」

「ああ、だからそろそろ来るぞ」


 劉斗の言葉通りすぐに“それ”は来た。


「おっはよー!!」


 元気な挨拶と共に女が“飛んで”きた。そう、“飛んで”きたのである。飛び蹴りの体勢で馬鹿(うましか)に突っ込んでいく。


「ぶべら!?」


 “飛んで”来た女は馬鹿(うましか)の顔に飛び蹴りを喰らわせ空中で1回転してスタッと着地した。なぜか、スカートはまったくめくれもしない。


「いつもどおりの光景だ」

「だな、いつもどおりだな」


 劉斗と頷きながら馬鹿(うましか)が起きるのを待っていた。


「は!?」

「ようやく起きたかバカ」

「また、夕菜だな。夕菜ー!」

「あ、起きたの?」

「なんで疑問系なの!?」

「挨拶代わりに永眠させるつもりでやったし」

「そんな狂気の挨拶代わりはいらない」

「いいじゃない。アンタの顔を見ると無性に殴りたくなるんだから」


 そういうコイツは綾崎夕菜(あやさきゆうな)。俺は中学からの知り合いだが馬鹿(うましか)とは幼馴染みらしい。髪はセミショートの茶髪。スタイルもおおむね良く黙っていれば彼氏の一人か二人はできそうなくらいの美人だ。だが、なぜそうなったかは知らないが馬鹿(うましか)一筋らしい。あの飛び蹴りなどは照れ隠しらしい。まあ、気持ちが伝わる以前に馬鹿(うましか)が生きているかどうかが問題だ。


「うわ~!!」


 馬鹿(うましか)が泣き崩れた。


「おい、迷惑だからよそに行け」

「そうだ、あまり(オレ)たちに近づかないでくれ知り合いだと思われる」


 何気に劉斗が酷いことを言っている。俺も同じだが。


「うざい。あまり泣くとあと一発入れるわよ」


 綾崎の一言でぴたりと泣きやむ馬鹿(うましか)。殴られたくないんだな。


「お前ら早く来いよ。遅刻するぞ」

「待ってよ~!」


 4人一緒に校舎に入った。


****


 そして入学式。


 初老の女性がステージの上でしゃべっている。この彩上高校校長の天王寺才火(てんのうじさいか)だ。


『一年生諸君入学おめでとう(チッ、今年もぞろぞろきやがって)。私たちはお前たちを歓迎する。(不本意だがな)』


 なんか言ってることと思ってることが違う気がするが俺は端から校長の固っ苦しい話など聞く気はない。


 それにしてもあんな校長がいてよくやっていけるなここは。疑問だよ。


 そのあと入学式をそつなく終えた俺たちは掲示されたクラスを見て教室に行った。馬鹿(うましか)や劉斗達と一緒のようだった。


「1―5、ここか」


 1―5のプレートを見て言った。中を覗くと二種類の人間がいた。席に座ってじっとしている人間。人に無関心なのかそれとも恥ずかしがりやなのか。もう一種類の人間は同中出身の奴らと駄弁っている人間。こっちの方が多いな。


 俺もどちらかと言えば前者の部類に入りたいのだが馬鹿(うましか)達がいるから無理そうだ。席に座り一応クラスを見渡す。


 見渡していくと何人か知り合いがいるようだった。それと廊下側の一番前の席に座った女子が目に入った。


 …ん? あの廊下側の一番前に座ってる女は確か…。


「おい、座れお前たち!」


 教師が入ってきて話しに来ようといていた馬鹿(うましか)が悲しそうに席に戻っていった。俺は別に話したくなかったからどうでもいいが。


 入ってきたのはジャージを着た体育教師。かなり美人だ。長い髪を後ろで一まとめにしている。


「さて、一人いないようだが気にはしない。じゃあ、自己紹介をしようか。まずは私からだな。私は水原翔子(みずはらしょうこ)。見ての通り体育教師。やりたくないんだが生徒指導も担当している。お前ら私の手を煩わせるなよ。趣味は特にない強いて言えば筋トレとゲームだ。現在恋人はいない。以上だ。じゃあ、廊下側から順に自己紹介していけ」


 水原先生の言葉で廊下側の一番前にいた女子が立ち上がった。腰まである綺麗な黒髪を持った美人という言葉が誰よりも似合いそうな女子だ。


赤羽紫苑(あかばしおん)です。趣味は読書です。今年一年よろしくね」

『はい!!』


 男子(俺と劉斗)以外が声を揃えて言った。


 やっぱり赤羽だったか。彼女とも一応知り合いだ。彼女は劉斗と少し関係がある。


 次は彩崎だ。


「彩崎夕菜です。趣味は……そこに座っているバカを殴ることです」


 相変わらず恐ろしい趣味だ。馬鹿が泣いてるぞ。


 一人の単調な自己紹介の後馬鹿(うましか)の番。


「馬鹿洋平で~す。みんな気軽に洋平様って読んでください」

『……』


 教室が静まり返った。


「……すみません。ふざけました」


 馬鹿はその沈黙にまずいと思ったのかそう言って席に座った。やはりバカだ。


 そのあとも単調で面白みのない自己紹介が続く。そろそろ自己紹介も終盤、劉斗の番だ。


(オレ)は南雲劉斗だ。趣味は特にない」


 これで終了。ほかになにかないのか。


「言い忘れていた。そこにいるバカを陥れることだ」


 馬鹿(うましか)を指差す劉斗。声を殺して泣き出す馬鹿(うましか)。いつものことだな。


 回りまわって最後ようやく俺に順番が回ってきた。


「どうも、六道――」

「すみません!、遅れました!」


 俺の自己紹介は突然の乱入者により遮られた。


 俺の自己紹介を遮った乱入者の顔を見ようと後ろのドアの方をみる。


 目に入ったのは桜の花びら……朝のピンクのお化けだった。


 花びらはだいぶ落としてきたようだがまだ所々ついているし。頭の上の花びらはなにひとつ落ちていない。


「入学式当日に遅刻とはいい度胸だな。まあ、いいさっさと席に着け」

「はい」

「あと」

「はい?」

「まだ、花びらついてるからな」

「はわ!?」


 慌てて花びらを落とすピンクのお化け。慌てすぎたのか何もないところで滑ってこけた。


「僕が!、支えなくてどうする!!」


 滑ったピンクのお化けを支えに行った馬鹿(うましか)。だが、劉斗がどこからか用意したバナナの皮を馬鹿の目の前に置いた。


「あれは!、バナナの皮!、そうだ、僕は踏まなきゃいけないんだー!!」


 馬鹿(うましか)が勢い良くバナナの皮を踏んでこけた。


「うう、しまった」

「本物のバカだな」


 馬鹿(うましか)の努力虚しく。ピンクのお化けは何とかこけずにすんだらしい。すでに席についている。


「それじゃあ、お前も自己紹介してくれ」


 俺の自己紹介はうやむやになった。別にどうでもいいが。


「私は――」


 これが始まり。


「――桜崎結衣です!」


 そう言ってそいつは笑った。


 これが桜崎結衣(さくらざきゆい)との出会いだった。


こんなんでいいのかわかりません。

感想などありましたらよろしくお願いします。

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