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天の桜が咲く頃に  作者: テイク
第一章 始まりは春のあの日から
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第十一話 校外研修二日目 二度目の聖戦 後編

 山田君(仮)も衛間宮君もやられてしまった。だけど僕は止まるわけにはいかない。


『報告!』


 無線機に連絡が入る。これは劉斗に用意してもらったものだ。快く用意してくれた。それなら一緒に覗けばよかったのに。


「どうしたの?」

『こちらB棟! 敵が、敵がー!?』


 ブツン。い、一体何があったんだ!?


「どうした! 何があった!」

『こちらC棟! なんだあれは!? 化物か! な!? うわあああ!』

「状況を報告しろ!」


 いったい何が起こっているんだ。考えられるのはただひとつ。


「よう馬鹿」

「な!?」


 そこには水原先生が立っていた。


「アンタの仕業か」


 やっぱり水原先生か。


「そうだ。まったく余計な手間をかけさせやがって。まあ、楽しいからいいんだけどんな」

「そこを通す気は?」


 聞くのも野暮というものだろう。


「ない。どの道通ったとしてもまだ障害はある」


 それが何だって言うんだ。


「それでも、僕は! 楽園(ぱらだいす)に行く!!」


 そうだ。僕は行かなくちゃうけない。


「ここはお任せくださいませ洋平様」

「セバスチャンさん!!」


 角から鋼糸を持ったセバスチャンさんが出てきた。


「いいですか、振り返らずに全速力で行って下さい」

「わかりました。でも、お願いです。かならず生き残ってください」


 セバスチャンさんがカッコいい。輝いているよ。


「かしこまりました」

「行くぞみんな!」


 僕は全速力で走った。


****


 対峙するセバスチャンと水原先生。


「どうも執事さん。五十分ぶりですね」


 五十分前になにがあったのだろうか。それは二人しか知らないこと。

 

「やはりあなたか」

「そこをどく気はないですよね?」

「当たり前。洋平様にプリンをいただいたので」


 セバスチャンにとってプリンは主以上なのだろうか。そこははっきりしたほうがいいとおもう。


「なら、力ずくで通らせてもらう」

「行かせません」


 セバスチャンが鋼糸を水原先生に巻きつける。危ないものをもっているものだ。


「その糸を切れるのは私だけです」

「フッ」


 水原先生が笑う。


「何がおかしいのですかな」

「お前にしか切れない糸か……!!」

「な!?」

「面白いぃぃ!!」


 水原先生が鋼糸を切ろうとするとする。


「なら私は! お前より強いぃぃ!!!」


 ズバア!!


 鋼糸は粉々に引きちぎられた。教師とは思えない身体能力。これが水原の実力なのか。


「まだです!」


 新しい鋼糸を取り出しセバスチャンが水原先生を切断にかかる。もう、殺す気だ。


「はあああああ!!」


 セバスチャンの鋼糸が一斉に水原先生に向かう。誰も(その辺にいた植木)が水原先生の死は避けられないものと思っただが。


「なに!?」


 鋼糸は水原先生の前で切断された。


「糸を切るときは同じ糸を何本か絡めて引っ張ればいいんだよ」

「私の糸同士を絡ませて切断したとでも言うつもりですか!? ――いいでしょう」


 セバスチャンが構える。


「ならばこれだけの糸を見切ってみるがよい!!」


 水原先生が身構える。


「喰らえ!!」


 ドドドド!!


 大量の鋼糸が水原先生を襲う。


 だが――。


「覚えた」

「な!?」

「こうか?」


 水原先生が鋼糸を持つ。


「まさか、あなたの能力は!!」

「言わせねえよ!!」


 大量の鋼糸がセバスチャンを襲う。

「くそ、逃げられたか」


 廊下の窓が一枚割られていた。どうやらそこから飛び降りたようだ。


「まあ、いいいくらあの執事でももう一度来ることはないだろう」


 水原先生は走り出した。


「さて、後はあのバカを止めるだけだ」


 疾風のごとく走る水原先生を止めるものはもういない。


****


『もうしわけありませぬ洋平様』


 セバスチャンさんからの通信が入った。まさか。


「どうしたの?」

『そちらに突破されてしまいました』

「なんだって!」


 まさかセバスチャンさんすら突破するなんて。水原先生なんて教師だ。もう戦闘能力的には教師とは言えないと思うけど。


「わかった。もういいです」

『もうしわけありませぬ』


 セバスチャンさんとの通信を切った。……これはまずいかもしれない。みんなの士気に関わることだ。


「……隊長」

「大丈夫だ。僕達はかならず楽園(ぱらだいす)に行く」


 ここまで来てあきらめることは出来ない。


「まったく手こずらせやがって」

「水原!」

「私もいるわよ」


 水原と夕菜達女子軍団が道を塞いでいた。


「クソ!」

「隊長行け」

「ああ、ここは俺たちに任せろ」

「僕達が何とかする」

「そうだ、君は先に行くんだ」


 残っていたそれぞれ上からイメージカラーが青、緑、オレンジ、紫の四人が前に出る。


「でも!」

「大丈夫だ」

「信用しろ」

「大丈夫だよ」

「早く行け」

「わかった」


 僕は走った。大丈夫彼らはマイスターなんだから。


「「「「トラ○ザム!!!!」」」」


 四人の声が響き光が辺りを包み込む。それは優しく強い光。戦いの光


 そしてそれは命の輝き……。


****


 僕は遂に女湯の前に到達した。様々な犠牲があった。山田君(仮)、衛間宮君、セバスチャンさん。大勢の仲間達、マイスターたち。それでも僕はここまで来た。長い道のりだった。それもこれが最後。僕達の旅の終着点。


「やはり最後はアナタですか。水原先生!」


 女湯の前には水原先生が立ち塞がっている。


「越えられるものなら超えてみろ!」


 大丈夫僕の中にはみんなの託してくれた思いがある。


「ああ、みんな一緒にいこう」

「来い!!」


 僕は全身全霊を持って突撃した。


 水原先生と僕の拳がぶつかる。


 拳が弾かれる。


「あきらめろー!!」


 水原先生の拳が僕のボディに突き刺さる。


 意識が遠のく。その時。


「お前はここで終わるのか?」

「山田君(仮)」

「お前はまだやれるだろ?」

「衛間宮君」

「洋平さま、私はあなたを信じておりますぞ」

「セバスチャンさん」

「これはお前にしかできない」

「まあ、お前らしくやれや」

「僕達の分まで」

「それがお前のやるべきことだろう」

「マイスターズ」

「隊長俺たちは最後まであなたと一緒です」

「その他みんな」


 みんなが僕にあきらめるなと言う。僕に前に進めという。


「そうだ、僕はあきらめない」


 体を起こす。大丈夫意思はしっかりしてる。


「もう、限界だろう諦めろ」


 ああ、限界だ、だけど諦める訳にはいかない!


「なぜわからない! お前ではこの扉を開けることすら出来ないことを!! お前たち自身の首を絞めていることを! 限界だということを! なぜわからない!!」

「なめんじゃねえ!!」


 僕は言葉を紡ぐ。もう、教師だとか生徒だとか関係ない。僕は前に進む。


「それは規則によって僕たちを封じ込めた貴様の限界だぁ!!!!」

馬鹿(うましか)ぁ!!」


 拳を繰り出すそれは限界を超えた一撃。たとえここで倒れても僕は前に行く。


「それが無意味なことだとなぜわからない!」

「うるさい! どんなに虐げられても前に踏み出せば少しだけど前に進む。それが僕たちなんだよ!」


 そうだ、これが僕達だ! 踏み込め、そしてら道は開ける。諦めない。

 

「あんたなんかよりずっとすごい奴がいた!」


 思い浮かぶのは二人の男。理想のため戦った男達。


「何が!」

「思いはいつだって限界を超える!! それが命の輝きだ!!」


 四人の姿がちらつく。その他みんなの姿が僕を支えてくれる。


「僕の拳はこの世界(女湯の扉)に風穴を開ける! 捕まった者達の願いと後から来る者達の希望を僕の拳に織り込んで! 明日への道を作る!!」


 そうだ今こそ。


「それが理想! それが馬鹿洋平!!」


 僕は、僕の拳は!


「僕の拳は限界を超える拳だぁ!!!!」


 限界すら超えた一撃。それは水原先生の拳を弾き飛ばす。


「まだだぁ!!」


 水原先生が更に拳を繰り出す。それを僕は避けて拳を放つ。


「ウオオオオオオオオオオォォ!!」

「ガハッ!」


 それは水原先生の鳩尾にヒットした。


「なら覚悟するんだなぁ」

「当然だ僕たちはそこまで愚かじゃない」


 水原先生が倒れた。


「さあ、楽園(ぱらだいす)だ!」


 女湯の扉を開ける。


 目に飛び込んで来たのは鍛え抜かれた胸筋、腹筋、上腕二頭筋、よく鍛え上げられた筋骨隆々の体、引き締まった体だね……………………………………………………岩谷先生がそこにいた。


「なんじゃこりゃあー!!」


 暖簾を見るとそこは女湯と書いた布がありその下には男湯の文字。


「割に合わねー!!」


 僕は意識を手放した。

 僕達は指導室で反省文を書かされていた。


「僕達はどうしてこんなところに来てしまったんだろう」


 某種の主人公のセリフを言いながら反省文を書く。


「貴様らが規則を破ったからだ」


 水原先生の言葉に空気が沈む。


 これにて教師と生徒の聖戦は終わりを告げた……。


****


「まったく俺達の出番がなかったな」

「反省文書かされないだけマシだ」

「それもそうだな」


 隼人、劉斗は部屋で普通に寝ていた。


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