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20-33.親和性

『そうそう。良い調子よ。

 言うほど飲み込み悪くないじゃない。

 アイはよっぽど厳しかったようね』


 ヴィーに教えてもらいながら、水を魔力で操作してみた。

水面から持ち上げて浮かせたり、渦を作ってみたりと、自由自在に動かしていく。


 ヴィーの言うように、今日はなんだかいつもに比べて、簡単に身についている気がする。


 それだけ、アイちゃんの求めるレベルが高いのだろうか。


 いや、それにしてもいつもと違う気がする。

アイちゃんの妨害がそれだけ巧みなのかもしれない。

けど、それだけではなく、単純にすんなり頭に入ってくる気もする。


 ヴィーとの契約が何か影響しているのだろうか。

水の精霊なのだし、そのくらいの特典があってもおかしくはない。



「精霊と契約すると、その属性の魔術が使いやすくなったりするの?」


『そうとも言えるわ。

 契約そのものが作用してって事は無いけど、精霊が力を使えば、その感覚は契約者にも伝わるもの。

 そうして段々と親和性が高くなっていくものよ』


 あれ?

それだとこの感覚は何なのだろう。

もっと直接的な何かを感じる。


 【探究者】が何か影響を及ぼしているのだろうか。


 あり得る。

【探究者】は自身の理解度に応じて成長補正がかかる。

ヴィーが少し使って見せてくれただけで簡単に再現出来たのも、これが原因かもしれない。


 恐らく、精霊の力と【探究者】は相性が良いのだろう。

様々な精霊と契約すれば、今よりずっと強くなれるのかもしれない。


 というか、アイちゃんなら似たような事出来るのよね。

私の体を使って、空間固定の魔術を使ってくれたみたいなやつだ。

あの経験で、私は空間固定の魔術を完全に会得した。

維持の方はアイちゃんの望む水準にまでは至れなかったけど。


 アイちゃんは、私のスキルを全て把握しているようだ。

きっと【探究者】の使い方も知っているのだろう。


 という事は、だ。

私は、魔力妨害も使えるんじゃなかろうか。


 散々、アイちゃんに流し込まれてきたのだ。

私の体は、あの感覚をよく知っている。



「ヴィー、もう一度何か魔術を使ってみてくれる?」


『良いわよ♪』


 私はヴィーが構築した水球に干渉を試みる。

自身の魔力を流し込んで妨害すると、あっさりと水球は砕け散った。



『え?

 今の何したの?』


「アイちゃんにいつもやられてるやつ。

 アイちゃんが私の体の中にこれを流し込んでくるの。

 私はその妨害を上回る魔力操作技術を身に着けようとしてるんだ」


『そんなの出来るわけ無いじゃない……。

 神と綱引きして勝てるとでも思ってるの?』


「いや、ほら。そこはもちろん鍛錬だから。

 アイちゃんだって程々に加減してくれてるよ。

 たぶん」


『そう……。

 何にせよ、絶対に今のワタシに向けて使わないでよね!

 あんなの流し込まれたら、ワタシ死んじゃうわ!

 今の水球みたいになるんだからね!』


「え!?

 そんな危険な技術なの!?」


 私、毎日流し込まれてるんだけど大丈夫なの!?



『並の精霊相手なら一撃必殺よ!』


 なるほど。

万が一にも当てないように気を付けねば。



「逆に補助も出来るのかな」


『出来るだろうけど、普通は精霊が人間を補助をするのよ。

 人間が補助してどうするのよ』


「二人で力を合わせて魔術を使えたら面白そうかなって」


『威力を求めるなら有効かもしれないわね。

 少し試してみましょうか』


 そう言って、再び水球を産み出したヴィー。


 私は、ヴィーの産み出した水球に魔力を流し込み、少し大きな水球に変化させようと試みる。


 水球は捻じれたように歪んだ後、先程より激しく破裂した。



「これは、難しそうだね」


『先に補助の感覚を教えた方が良かったわね。

 今度はホノカが水球を出してみて』


「うん。やってみる」


 先程ヴィーが産み出したのと同じような水球を作り出す。

今度はヴィーが、私の産み出した水球に干渉し、水球は一回り大きなサイズに変化した。



『制御を変わるから、このままもう一度やってみて』


「うん!」


 水球の制御を一旦手放して、ヴィーが今しがたやったように、水球に干渉してサイズを一回り大きく変化させた。



「上手くいったよ!!」


『やっぱり飲み込みが早いわね。

 これなら意外と上手くいくんじゃないかしら』


「どんどんいってみよう!」


『ええ!』


 ヴィーと一緒にどんどん水球を大きくしていく。

明らかに自分の技術で制御出来る限界を超えても、水球はサイズを増し続けていった。


 そうして夢中になっていると、いつの間にやら、十メートル以上のサイズまで膨れ上がっていた。


 流石にこのサイズの水の塊が頭上にあるのは普通に怖い。



「そろそろ一旦止めようか。

 楽しくてつい夢中になっちゃったけど」


『これ、どうやって解除しようかしら』


「え?」


『このまま手放したら、とんでもない衝撃になるはずよ。

 多分津波になって、テントが押し流されるでしょうね』


「それは嫌だよ!」


 ミアちゃんがまだ不貞寝してるかもだし!



『少しずつよ。

 今までの逆をやるのよ。

 先に削っていくから、ホノカもいけそうならお願い』


「わかった!」


 ヴィーが湖に衝撃を与えないよう、少しずつ水球の外側から制御を手放していく。

魔術の制御を失い、水球から剥がされた水は、中央付近にまで伝うように流れた後、雫となって湖面に落下した。


 慎重に作業を進めるヴィー。

一度に剥がれる水の量は、水球のサイズに比べて微々たるものだ。

このままでは集めた時の倍以上の時間がかかるかも。



「そろそろ私もやってみるね!」


『くれぐれも慎重によ!』


「うん!任せて!」


 大丈夫よ!

もうヴィーの作業を見てバッチリだから!

今日の私はとっても調子が良いしね!



『ちょ!まっ!』


 私が水球に干渉した途端、水球は完全に制御を失った。

そのままバラけながら、湖面に落下していく。


 そんな光景が、まるでスローモーションのようにゆっくりと見えた。



『ホノカ!』


 焦ったヴィーの声で我に返る。


 やばい!やらかした!

何で上手くいかなかったの!?

さっきまで調子良かったのに!?

いやそんな事より!!

ミアちゃん!!!


 私はスキルをフル稼働してテント前に飛び込んだ。

そのままテントを囲うように、アイちゃんから教えてもらった空間の壁を展開する。


 その直後、轟音と共に湖から溢れ出した津波が流れ込んできた。

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