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01-06.実技試験

 実技試験の試験官はギルド職員の制服を着たスキンヘッドの男性だった。



「大丈夫ですか?」


「はい」


「無理はなさらないで下さいね」


 サリアさんは私の耳元でそう囁いてから壁際に移動した。

どうやら、私の事情を殆ど全て察しているらしい。

本当に何者なのだろう。


 実技試験は試合形式のものだった。

訓練場入口脇の壁際に立て掛けられたいくつかの武器の中から、好きな物を選び取る。

私は無難に木剣を手に取った。


 それから、同じく木剣を構える試験官を相手に、私も木剣を構えて正面に立つ。


 心臓が早鐘を打つのが聴こえてくる。

力加減を間違えないようにしなくちゃ。

集中、集中、集中。


 久しぶりの感覚に手間取っていると、攻めて来ない私に痺れを切らしたのか、試験官の方から向かってきた。

私は咄嗟に相手の木剣を叩き落とそうと木剣を振り抜くも、勢い余って試験官ごと吹き飛ばしてしまう。


 訓練場の壁に叩きつけられた試験官はぐったりと脱力して、地面にすべり落ちた。


 やってしまった……

全然集中できなかった……

加減を間違えた……



「ホノカさん凄いです!」


 先程の気遣いが嘘のように、能天気な声を上げるサリアさん。

むしろこれも気遣いのつもりなのだろうか。

私に気にするなと言っているのだろうか。

いや、そんな事より、早く試験官さんの容態……



「ガッハッハ!

 強えな嬢ちゃん!」


「!?」


 先程確かに意識を失っていたはずの試験官さんが、大笑いしながら歩み寄ってきた。



「ガレアスさん!ストップです!

 うら若き女性にそれ以上近づかないで下さい!

 肩を叩くだけでもセクハラと捉えますからね!」


「おっおう」


 サリアさんの勢いにタジタジになりながら歩みを止める試験官さん。



「あっあの!

 すみませんでした!」


「ぶっはは!

 気にするな嬢ちゃん!

 あれくらい日常茶飯事だ。

 それに俺は頑丈さだけには自身があるからな。

 だが、あれだな。

 嬢ちゃんは緊張しすぎだぜ。

 折角良い力持ってんだ。

 もっと肩の力抜かねえとな」


「はい……」


「サリア、嬢ちゃんは文句なく合格だ。

 後の細かい事は任せるぞ」


「はい、ありがとうございます。

 ガレアスさん」


 試験官さんはそのまま歩き去って行った。



「これで実技試験は終わりです。

 次で最後です。また付いてきて下さい」


「はい」


 え?もう?

なんかもう少しないの?

魔法の威力とかは?


 私は内心混乱を抱えたまま、サリアさんに付いて歩き出す。

次に向かったのは、妙に小さな部屋だった。

中には水晶玉が置かれた机と、椅子が二脚あるだけだ。

これがミアちゃんの言っていた鑑定の水晶だろう。


 サリアさんは奥の椅子に腰掛けると、私に手前の椅子へ座るようにと促した。

どうやらサリアさんが見てくれるらしい。

既に諸々バレてしまっているので、かえって気分が楽になったくらいだ。


 私は椅子に座り、サリアさんの指示に従って手のひらを水晶に押し付ける。



「ふむふむ。

 はい、結構です。

 もう離して良いですよ」


 サリアさんは何やら書き留めると、さして時間もかけずに終わりを告げた。



「その、大丈夫でしょうか」


「何がですか?」


「私はあの国で……」


「気にしないで下さいと言うのは少し変ですが、普通に生きる分には問題ありませんよ。

 但し、王宮等の警備の厳しい場所では注意して下さい。

 この水晶のようなものに触れる事を要求されたのなら、その場で回れ右する事をお勧めします」


「何が見えるのですか?」


「本当に聞きたいですか?」


「……はい」


「まずはスキルです。

 保有しているものは一通り確認できます。

 ホノカさんの場合はこの時点でアウトです。

 何としても取り込もうとしてくるでしょう。

 それが叶わないのなら排除される事になります」


「……」


「次に、これは言葉を濁しますが、国によってはホノカさんの事を犯罪者として扱うでしょう」


「……はい」


「大丈夫ですよ。

 バレなければ良いのです。

 それに私のように事情を知っている者もいるのです。

 ホノカさんにはそんな人が必要です。

 ミアちゃんに全てを話しましょう。

 必要なら私も同席します」


「それは……できません」


「信用できませんか?」


「いえ、そうではなくて……

 これ以上ミアちゃんに頼りたくありません。

 寄りかかりたく無いのです」


「辛いですよ」


「それでもです」


「そうですか。

 ホノカさんならそれでも……

 けれど本当に辛くなったら頼ってあげて下さい。

 きっとミアちゃんもそれを望むはずです」


「サリアさんはどうしてそこまでミアちゃんを信じているのですか?」


「ふふ、内緒です。

 大丈夫ですよ、安心して下さい。

 ホノカさんからミアちゃんを取ったりしませんから」


 サリアさんはイタズラっぽい笑みを浮かべてそう言った。

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