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02-15.再会

「あ!!

 フィオちゃんに手紙を出すの忘れてた!!」


「次の町で良いじゃない。

 別に急ぎでも無いんだし」


 それはそうなんだけど、忘れていた事がショックなのだ。

アイちゃんの件で振り回されていたとはいえ。



「フィオとは?」


「私達の友達よ。

 とは言っても、少し前に知り合ったばかりだけど」


 あとついでに将来の約束をしている子よ。

今のところ、就職先程度の意味合いだけど。

本人は永久就職するつもりでいるけどね。


 ミアちゃんも何だかんだ言いつつ、満更でも無さそう。

私的にはちょっと複雑だ。

フィオちゃんの事は好きだけど、それ以上に私はミアちゃんとの二人きりを望んでいる。



「言伝ならば、ボクが承りましょうか?

 その程度ならば、お安い御用ですよ?」


「ありがとう、アイちゃん。

 けれど大丈夫よ。

 ミアちゃんも言ったように、急いでるわけではないの。

 単なるお友達への近況報告以上の意味はないから」


 神様パシらせるわけにもいくまい。



「別に遠慮する必要は無いのですよ?

 何でしたら、何時でも会わせてあげます。

 それこそ、食事に誘う程度に気楽にお考え下さい。

 そうです!

 丁度そろそろランチの時間ではありませんか!

 早速誘ってきましょう!

 ホノカは腕によりをかけて準備しておいて下さい!」


 そう言って、アイちゃんの姿が掻き消える。

どうやら止める間もなくフィオちゃんを迎えに行ってしまったらしい。


 まだフィオちゃんの事は名前しか伝えていないのに、どこに住んでいるかもわかっているのだろうか。


 わかるんだろうなぁ……。

失敗したなぁ……。


 正直、アイちゃんにフィオちゃんの事を教えたくなくて断っていた部分もある。


 大切な友人に得体のしれない存在を近づけたいわけがない。


 そもそも、名前自体を出すべきではなかったのだ。

迂闊だった。もう少し警戒もしておくべきだった。



「ほら、落ち込まない。

 今からフィオが来るんでしょ?

 やってしまった事はもう言ってもしょうがないんだから、せめて美味しいものでも作って待っていましょう。

 大丈夫よ。フィオなら笑って許してくれるわ」


「ミアちゃん……。

 ミアちゃんって、フィオちゃんの前ではあんなに鬱陶しがってるのに、やっぱりフィオちゃんの事好きだよね?」


「そんなんじゃないわよ!」


「ふふ。素直じゃないんだから。

 ミアちゃんも手伝ってくれる?

 どうせなら、いっぱい作って饗してあげましょう」


「仕方ないわね」


 私達は街道脇の少し離れた木陰に移動して、昨日購入したばかりの、真新しいテーブルと椅子を設置していく。


 念の為椅子も多めに購入しておいてよかった。

まあ、客人を招くためではなく、予備の意味合いでだけど。


 とりあえずこれで、フィオちゃんが何時来ても大丈夫だ。

転移で移動する以上、すぐにでも戻って来る可能性はある。

招いておいて、立たせたままにするわけにもいかない。


 それからまた少し離れたところに、調理用の道具を設置していく。

収納スキルのお陰で、野外とは思えない充実っぷりだ。

これなら存分に腕を振るうことが出来るだろう。


 いっそ、窯とかも入れておこうかしら。

今回は普通の野営を基準に揃えてしまったけれど、その常識に拘る必要もないのだ。


 まあでも、下手に目立つのも良くないか。

収納スキル自体は存在を認知される程度にはありふれているとはいえ、変な人に目をつけられないとも限らない。


 そもそも、普通の人はテーブルを入れるなんて無駄な使い方は出来ないくらいに、容量が少ないらしいし。


 なんか、私の容量は無尽蔵かってくらいあるけど。

一体何でなのかしら。

後で試しに、アイちゃんに聞いてみよう。


 私達が料理の支度をしていると、フィオちゃんとリリさんが突然現れた。


 あれ?リリさんまで?

もちろん来てくれるのは大歓迎だけど、仲の悪い二人が一緒に来るとは思わなかった。



「お久しぶりです!

 ミア様!ホノカ様!」


 そう言って、ミアちゃんに飛びつくフィオちゃん。

ミアちゃんは避けずに受け止めた。



「燥ぎすぎよ。たかだか、二週間やそこらじゃない」


「二週間もですよ!ミア様!

 ずっとお会いしたかったんですから!」


「まったく。大げさね」


 そう言いながら、フィオちゃんの頭を撫でるミアちゃん。

フィオちゃんの懐っこさに、流石のミアちゃんも絆されたのかしら。

最近、ストレスの溜まる事も多かったし。

癒やしが欲しかったのかもしれない。



「リリさんも久しぶり。

 フィオちゃんとは仲良くやってる?」


「そうです!聞いて下さいホノカ様!

 お姉ちゃんったらどうかしてしまったんです!

 いっつもフィオフィオって付き纏って来て怖いんです!

 助けて下さい!ホノカ様!」


「え?どういう事?」


「どうもこうも無いわ。

 あなた達が散々お節介を焼いたんじゃない。

 だから、私も心を入れ替えてフィオを可愛がっただけよ。

 だってのに、フィオは逃げるんだもの。

 挙げ句、付き纏ってるなんて言い出すのよ。

 酷い話だとは思わない?」


「フィオちゃん」


「丸め込まれないで下さい!

 ただ可愛がってるだけ程度の話じゃないんです!

 お風呂でも寝室でもどこまでも付き纏ってくるんです!

 仕事中も気付けば私の事を見てるばかりで、全然集中してないんです!

 何度注意しても直してくれないんです!」


「リリさん?

 フィオちゃんの事が可愛くなちゃった?」


「なんでか目が離せなくなる時があるのよね」


 シスコンに目覚めたの?

たった二週間ちょいで?

あんなに毛嫌いしてたのに?


 まあでも、フィオちゃんも熱しやすく強引なところがあるから、この姉妹は似たもの同士なのかもしれない。



「頑張って、フィオちゃん!

 シスコンは一度罹患するとそうそう治らない病気だから、気長に付き合うしか無いわ!」


「シスコン?なんですそれ?

 お姉ちゃんは本当に病気なのですか?」


「不治の病よ。

 治すには相当な荒療治が必要よ」


「どっちです!?

 不治なんです!?治るんです!?

 さては適当に喋ってやがりますね!?」


 だって何だか平和そうな悩みなんだもの。

まあ、フィオちゃんからしたら素直には受け入れ難いだろうけど。



「そういえば、アイちゃんは?

 フィオちゃん達を呼びに行ったんじゃなかったの?」


「あの声の方はアイ様と仰るのですね。

 伝言を頼まれました。

 『友と水入らずの時をお楽しみ下さい』との事です。

 私達はお姿を拝見していないのですが、アイ様は何者なのですか?」


 え?そんな風に誘ったの?

信託みたいに、いきなり頭の中に語りかけたの?


 よく、フィオちゃん達は誘いに乗ったわね。

まあ、姿を現していても怪しいのは同じだろうけど。


 アイちゃんは気を遣ってくれたのね。

正直予想外だ。

もしかしたら、へーちゃんさんの気遣いだろうか。

アイちゃんに席を外すよう伝えてくれたのかもしれない。



『違う。アイの意思』


 へーちゃんさん?


 ……。


 ダメか。もう話してくれそうにはない。


 そうか。へーちゃんさんが私の心を読めるのか。

アイちゃんが直接見ているわけではないから、アイちゃんの持っている情報にムラがあるのね。


 それにしても、アイちゃんが気を遣ってくれるなんてね。

私が思っている程、アイちゃんは私達を軽く見ているわけでもないのかもしれない。

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