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01-37.強引な手段

「それでは改めて質問です」


「え?」


「ホノカ様は結局答えて無いじゃないですか」


「あれ?そうだっけ?」


「惚けないで下さい。

 約束ですよ。必ず何でも正直に答えるって。

 結局条件を提示してくださったのはミア様です。

 ホノカ様は終始戸惑っていらしただけです」


「私にも聞かせなさい」


「もちろんです、ミア様。

 なんなら、この権利ごとミア様に譲渡致します。

 先程の恩返しと点数稼ぎとして遠慮なくお受け取り下さい」


「いい心がけよ。

 話がわかるわね、フィオ」


「待ってよ!

 そんな勝手な!」


「先程のホノカ様も随分と勝手な事ばかり仰っていたではないですか。

 人の心を無理やり暴き出しておいて、こんな事も認められないのですか?

 ホノカ様の覚悟はその程度だったのですか?」


「うぐっ……わかったよ。

 一つだけだからね……」


「なら遠慮なく。

 ホノカが私の想いに答えられない理由は?

 正直に、全て話しなさい」


「よりによって!?

 いくら何でもそれは無いでしょ!?」


「ホノカ様、約束ですよ」


「そんなぁ!?」


「ほら、ちゃっちゃと答えなさい。

 今更逃げ場なんて無いのよ」


「でも……でも!ミアちゃんは本当にそれで良いの!?

 私の心を自分で射止めるのは諦めるの?

 こんな手段で暴き出して、本当に満足なの?」


「問題ないわ。

 私は信じているもの。

 ホノカは必ず私を愛してくれるわ。

 今は少し意固地になっているだけなのよ。

 本来ならそんな障害、ホノカは自分で乗り越えられる。

 けれどそれには時間がかかるわ。

 だから私からもこじ開けてあげる。

 壁をぶっ壊して、引きずり出してあげる。

 元々そのつもりなのよ。

 どの道強引な事をするつもりでいるの。

 手段の違いなんて今更些細な問題なのよ。

 何も気にする必要なんてないわ」


「……ミアちゃんの格好良いところが見たいなぁ~。

 ミアちゃんが自分の力だけで私を助けてくれたら惚れちゃうな~」


「もう十分惚れてるじゃないですか。

 デレデレじゃないですか」


「……惚れ直しちゃうな~」


「往生際が悪いわね」


「私は言いましたよね。

 ホノカ様の事を信じると。

 なのにもう私の信頼を裏切るおつもりなのですか?

 私がホノカ様を信じられなくなれば、間接的にお姉ちゃんを信じる事もできなくなるのですよ?

 それでも良いのですか?」


「うぐっ……わかったよ……」


「そう。なら話しなさい」


「でも……その前に一つだけ……」


「良いわよ。なに?」


「話したくないのは、ミアちゃんに嫌われたくないからなの」


「信じなさい。

 何を聞かされてもホノカの事を嫌いになったりしないわ」


「私がそれを信じられないの!

 まだミアちゃんの事を信じきれてないの!」


「今すぐ信じなさい。

 信じられないのなら、取り敢えず話しなさい。

 聞かせてみて、私の態度が変わらなければ信じられるでしょう?」


「あべこべだよ!

 ミアちゃんを失うのが怖いから話せないって言ってるのに!」


「大丈夫よ。見捨てたりしないわ」


「そんな言葉に何の意味が!」


「ホノカ」


 ミアちゃんが急に私の左手を取り、何かを指にはめた。

続けて、ミアちゃんは自分の指にも同じものをはめる。

そうして、左手にはめた指輪を私に見せつけながら、言葉を続ける。



「ホノカ、私はこの指輪に誓ってあなたを愛するわ。

 絶対に裏切らない。何があってもよ。

 地獄の果まで共にありましょう」


 フィオちゃんの言葉に、二つの指輪が何かの魔術を発動する。



「なん、で……」


「外してはダメよ。

 というかもう外せないわ。

 それはベルに作らせた特別製よ。

 本当はホノカが私の気持ちに応えてから渡すつもりだったのだけど、まあ仕方ないわよね。

 ホノカが私を信じられないなんて言うのだもの。

 正直、流石に傷ついているのよ。

 私の心の傷を思えば、多少強引な手段を選んだって許されるわよね」


「ダメだよ……これはダメでしょ……」


 指輪はピタリとくっついて、動く気配すらない。

何か魔術的な処置が施されている。

これだと指を切り落とす事すら難しいかもしれない。



「外せないってば。

 壊すのだって無理よ。

 諦めなさい」


「これはあんまりだよ……」


「それはこっちのセリフよ。

 指輪を贈った相手にそんな顔される身にもなりなさいな」


「強引に押し付けただけでしょ!

 しかも呪いの指輪みたいな効果までつけて!」


「ふふ。なんてこと言うのよ。

 大丈夫よ。この指輪は条件さえ満たせば簡単に外せるわ。

 この指輪が形を保つのは互いを想い合っている間だけよ。

 どちらかの心が離れれば、途端に力を失い砕け散るわ。

 正直、付けるのも賭けだったのよ。

 しかもこれ、結構高いんだから。

 でも、何の心配もいらなかったわね。

 やっぱりホノカは私の事を愛しているわ。

 この指輪も認めてくれる程にね」


「それは……」


「これでわかったでしょう?

 私の気持ちは本物よ。

 だから、ホノカが話して指輪が砕け散ったのなら、私はホノカの前から姿を消すわ。

 大丈夫よ。ここにはリリもフィオもいるもの。

 ホノカは決して一人にならないわ。

 けれど、それも要らない心配よ。

 絶対に指輪は砕けない。

 私はそれを証明して見せる。

 だからホノカ、話しなさい。

 リリにチャンスをと言うのなら、私にだってチャンスを寄越しなさい。

 自分の言葉に責任を持ちなさい。

 フィオにだけ押し付けて、自分は逃げるなんて許さないわよ」


「…………わかったよ……話すよ……」

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