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07-53.侵攻開始

「なにあれ!? ローちゃんがいっぱい!?」


 ダンジョンの外の光景が水鏡に映し出されている。空から数え切れない量のローちゃんが降ってきて、四方八方へと散らばっていく。


『うわ~。私がゴミのようだ』


 言ってる場合かっ!



「ふふ♪ 遂に始まったわね♪」


「ちょっとメグル! 何やらかしたのさ!?」


「なんで私なのよ? やらかしたのはホノカでしょ?」


「そんな筈無いじゃない! 私ずっとダンジョンの中に居たもん!」


「私だって特別な事はしてないわ。どちらも違うと言うなら単に痺れを切らしただけじゃないかしら?」


「まだ五千年も経ってないじゃん! 全然足りないよ!?」


「そんなのこっちの都合でしょ。律儀に待ってくれる確証なんて最初から無かった筈よ」


「そうだけど! と言うかなんでメグルはそんな落ち着いてるの!?」


「動き出してしまった以上なるようにしかならないわ。今更慌てたって仕方がないじゃない。ここまでやれるだけの事はやってきたでしょ。後はその成果を出し切りましょう」


 そんなテスト勉強じゃあるまいに……。



「幸い敵は戦いの基本をまるで理解していないわ。それか私達を舐めているのよ。付け入る隙は十分あると言えるわね」


 そうだね。いきなり世界ごと飲み込まれていたら一巻の終わりだっただろう。しかしクロノスはわざわざ自身の力を切り分けて分身を送り込んできた。戦力の逐次投入は悪手だ。こちらにとっては都合が良い。


 しかもローちゃんモドキ達が侵攻しているのは何故か地上の方だ。へーちゃんは相変わらず閉じ籠もっているから居場所を探り当てる事が出来なかったのだろう。だからといって諦めたわけでは無い筈だ。ならば狙いも自ずと見えてくる。私達のやるべき事は二つだ。侵攻を抑えつつ、クロノスの下へ直接乗り込んで奴を討ち取る。緊急事態用の作戦だって既にある。皆と連携しよう。皆も既に動き始めている筈だ。



『ホノカ』


『ミアちゃん!』


『地上は任せなさい。あなたはへーの下へ』


『うん!』


 よし。なら先ずはへーちゃんを取り込もう。それからできる限りローちゃんモドキ達を吸収してクロノスとの最終決戦に備えよう。けど私の行動がバレないようにギリギリまで力は抑えておこう。



「方針は決まったみたいね。乗りなさい」


「何このバイク!?」


「ふふ♪ これもダンジョンよ♪」


「強引がすぎるでしょ!?」


 人が入る場所なんて無いじゃん!



「頑張って小型化したのよ。いいから早く行くわよ」


「まさかバイクで!? 転移で行けばいいじゃん!?」


「見た目通りなわけないでしょ! いいから早く!」


 ええい! なんかよくわかんないけど乗ってやらぁ!



「言ってらっしゃい! ホノカ叔母さん!」


「うん! 行ってくる! ミケちゃん達はここで待機ね! 絶対外出ちゃダメだからね!」



 私が後ろに座るとメグルはバイクを急発進させた。バイクが進むのに合わせてダンジョンの形状も変化していく。眼の前の道が発射台のようにせり上がり、前方から眩い光が差し込んでいる。どうやらこのまま外に向けて飛び出すつもりらしい。そして変化はそれだけではなかった。私達が乗るバイクも形状を変え、座席もまるで戦闘機のコックピットみたいな形に変わっていった。



「飛んでるの!?」


「そうよ! これは移動式ダンジョンよ! ギリギリまで切り札は隠しておきましょう!」


 屁理屈が過ぎる。コックピット内はダンジョン内と同じ異界扱いってわけだ。これで私の力を隠し通すつもりらしい。



「突っ込むわよ!」


 どこに!? って!? まさか神座に!?


 その直後に強烈な衝撃が身体を揺さぶった。なんたるスピード配送。こういうのもう少し苦戦するものじゃない? 群がるローちゃんモドキ達に絶望しながらそれでもどうにか薙ぎ払って、更には何人かの尊い犠牲の末にようやくピンチのお姫様を救うもんじゃないの?



「久しぶりね、ホノカ」


「迎えに来たよ! へーちゃん!」


「随分とメカメカしいペガサスね」


 数千年ぶりにようやく会えたのに何故ジト目なのか。家壊したからか。私じゃないもん。



「良いわね、それ。この子はペガサスと呼びましょう」


 言ってる場合か。



「どうしたのよ、ホノカ。えらく余裕が無いじゃない。あなたがツッコミに回るなんて珍しいわよ?」


「私としては逆に何で二人ともそんなに余裕なのか聞きたいくらいなんだけど」


「何千年生きてもホノカはホノカなのね」


「珍しいって話してるんじゃなかったっけ?」


「まだまだお子様だって話よ。あなたはもっと広い世界を見て回るべきね。この数千年引き籠もらせてしまったのは失敗だったわ」


「そのお陰で逆転の芽も辛うじて残っているんでしょ」


「そうね。まだこれは"芽"に過ぎないわ。だから私が"目"に変えてあげる。私もただ引き籠もっていたわけではないの」


 へーちゃんが私の中に入ってきた。融合はあっさりと完了した。私達だけでなく、へーちゃんもこの日の為の準備を続けてきてくれたのだ。



『ふふ♪ 驚いたかしら♪』


「ねえ、何この力。クロノスが動き出したのってへーちゃんのせいじゃないの?」


『でしょうね♪』


 もう! そういうの先に言ってよ! めっちゃ焦ったじゃん!


『何を勘違いしているの? まだまだ遠く及ばないわよ? 安心するには早いわ。これはあくまで一面を描き換えたに過ぎないんですもの。残りの五面は依然奴の手の中よ』


「十分だよ! 勝つまで振り続ければ良いだけだもん!」


「勝負をダイスに預ける趣味は無いわ。足りない分を取りに行きましょう」


 頭から突撃した戦闘機は私達を乗せたまま再び形を変えて、今度は地上に向かって発進した。

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