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7-48.新しい力

 取り敢えず持っていたダンジョンコアで呼び出せる最強の魔物を生み出してみた。当然ナイアとダフネの同族だ。



「ダメね。全然足りないわ」


 そうだね。この子はどう見てもナイア以下だ。



『ぼつ』


 ナイアは躊躇無くダンジョンコアに生み出したばかりの子を吸収させてしまった。



「え? 今の大丈夫なの?」


「仕方ないわよ。これから何度も試すんですもの。全員を残しておく事なんて出来ないわ。コアのエネルギーも有限なんだから。とは言え個人的には正直引くわね。倫理観のある行いとは言えないわ」


 はっきり言うなぁ~。でもそうだよね。生み出されたと思ったらいきなりダメ出しされて消されちゃったんだもん。流石に今のやり方はちょっとね。


『むぅ』

『やらかした』


「コアの扱いには気を付けましょう。これがどういう仕組で魔物を生み出しているのかはわからないけど、せめて命を扱っている自覚は持たないとだから」


『そうする』


「けど困ったわね。今のがこのコアで生み出せる最強の魔物なのよね?」


『そう』


「強さはこの際関係なかったりしない? バージョンが一番新しければさ」


「その区別がつくのかしら? どこかに数字でも書いてあるの?」


「無いけどさ」


「けど名案よ。力は分散させてしまいましょう。一度に複数体生み出してしまいなさい。それぞれ別の設定でね。どれかがきっと当たりに近づくわ。一回で無理でもそれを繰り返せばコアの使い方もわかってくると思うの」


 そうだね。コアの使い方に精通した子が生まれるのは理想だけど、それがダメでもナイアに経験値が溜まっていくのは間違いないもんね。それに生み出した皆で知恵を出し合えば解決策も思いつくかもだ。



「そうだ。最初に一人だけ生み出してくれる? その子はとっても弱くて構わないから。それで精霊化させてみたいの。その方が私が使役するには都合が良いし。何かあってもグロリアが統率出来る筈だから」


『がってん!』


「良い考えね。リスク管理は大切よ」


 ふっふっふ♪ 今日は我ながら冴えてるね♪


『さっすがホノカちゃん♪』


 でしょでしょ♪



 早速ナイアがまた一人の魔物少女を生み出してくれた。その子にはモアナと名付け、精霊の力も植え付けてみた。



「ばっちりね♪」


 グロリアを精霊王として生まれ変わらせる際の経験が役立ったね。今回はそれよりずっと簡単だったけど。グロリアみたいな特別製でもないから触媒も必要ないし。


 グロリアは私と対等に近い存在にする為に色々と工夫したけど、モアナを始めとしたこれから私達が生み出していく子達はその必要も無い。この子たちは言わばグロリアの眷属達だ。グロリアは精霊王を名乗っておきながら未だ精霊としては臣下の一人もいないからね。沢山作ってプレゼントしちゃいましょう♪ きっと喜んでくれるよね♪



『押し付けるのね』


『育児放棄ですか?』


 ヴィーもアイちゃんも人聞きの悪い事言わないでよ。精霊王に精霊達を託して何が悪いって言うのかしら?



『食べられちゃうんじゃない?』


 そうだね、ソーカ。グロリアハーレムが一大勢力を築くのも時間の問題かもしれないね。けどほら。グロリアはいずれ人間の少女達を精霊化させて侍らせちゃうかもだから。適度に満足させておこうかなって。かつてのソーカみたいな境遇の子を生み出させるわけにもいかないしさ。



『私にも何人か……』


『ダメ』

『ぜんいん』

『ナイアの』


 ダメだよ。モアナ達はあくまで前提条件に過ぎないんだから。私達が取り込むのはその先に生まれる存在だよ。


『むぅ~』


 ならコアの使い方を一番知っている子だけ取り込んであげるから。


『モアナも』


 わかった。その二人だけね。私の眷属としてナイアの側に置いてあげる。


『ありがと!』



 よし。じゃあ話は纏まったね。どんどん続けていっちゃいましょう♪


『がってん!』



 それから何人も、何十人も、何百人も、魔物少女達を生み出しては精霊化させ、この世界の基礎知識を与えていった。


 途中でグロリアも呼び寄せて少女達を眷属化させていくと、奇妙な繋がりが生じている事に気がついた。



「なにこれ? ネットワーク?」


『そう』

『つながった』


「なんだか不思議な感覚だよね。ホノカとの繋がりもより強まった気がするわ」


 数百人の精霊化した魔物少女達と、ナイアとグロリアの間で巨大なネットワークが構築されたようだ。何か元々そういう性質を持っていたらしい。繋がりによって私の力が向上しているのを感じる。ただ分散するのではなく、眷属達の力が胴元である私に集約しているみたいだ。そして同時に個々の力も増している。最初はちっぽけな存在だったモアナも今ではそんじゃそこらの魔物とは比較にならない強大さだ。



「流石に無限ループってわけじゃないのね」


 皆が強くなったから私もそれに応じて強くなり、その強くなった私の影響を受けて皆もまた強くなる。みたいな都合の良いものではないようだ。現状でも十分出来過ぎだけど。



「けど驚いたわ。器が育ってるじゃない。これなら他の世界の魔物なんて必要無いわ。同じ方法を繰り返しなさい。今度はもっと強い魔物を生み出して比較してみましょう。世界中からダンジョンコアをかき集めて続けるわよ」


 メグルの想定とは違うようだけど、この方法でも私は強くなれるみたいだ。



「これってダフネも繋がってるよね?」


『うん』

『ミアも』


 やっぱり。そんな感じはしていたのだ。


『フィリアス』


 それは?


『しゅぞくめい』


 皆が教えてくれたの?


『そう』

『しゅうごういしき』

『じょうほういっぱい』


 フィリアス。そうだね。名前があった方が都合が良いね。フィリアス達の真価はこの繋がりにこそあるのかも。



「メグルもお一人いかが?」


「その手には乗らないわよ」


「いいじゃん。記念にさ」


「なんの記念よ。私も力になってあげたいのは山々なのよ。けれど一度混ざれば取り返しがつかないわ。おそらくね」


「でもほら。単なる精霊契約だからさ。別に精霊を一人連れ歩くくらいなら人間辞めた事にはならないでしょ?」


「結構よ。私にはマグナがいるもの」


「いいじゃん。もう一人くらい旅のお供がいたってさ♪ それにカッコ良いでしょ? 精霊契約者って♪」


「……それは……やっぱりダメよ」


 お? もう一押し? ふふふ♪ けどゴリ押しはかえって頑なにさせちゃうかもだしね♪ 引き際も肝心だよね♪



「そっか。残念。じゃあ続けよっか」


「はい! はい! はい! なら私やりたい!」


「グロリアが? コアの使い方わかるの?」


「バッチリよ!」


 早くもフィリアスネットワークを使いこなしているのかもしれない。流石は私の最高傑作だ♪



「げへへ♪ どんな子が良いかなぁ~♪」


 もう数百人はいるのに。グロリアの欲望には際限が無いらしい。それでこそ精霊王の器だね♪



「やっぱりホノカちゃんに似た感じが良いよね♪」


 私にゾッコンなのもポイントだ♪



『流石に甘やかしすぎじゃないかしら』


『ホノカちゃんってどうしてこう極端なのかな』


『私には許してくれないのにね』


『ローちゃんとリアちゃんでは立場が違います。リアちゃんはどちらかと言うと娘ですから』


『じぶんに』

『きびしく』

『ひとに』

『やさし』


『そんなとこも』

『ある』


『かもしれない』


『『『『ナイナイ』』』』


 なんでさ。

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