07-33.子供達の成長
「クーだけずるい……」
もしかして二人きりの時はクーって呼んでたの? 自分がフィーだから? なにそれ可愛い。
「ならフィーちゃんは何がいい?」
「クララと同じのが良いです!」
戻しちゃうんだ。
「まいっか」
取り敢えずフィーちゃんにも口づけてスキルを授けた。
「えへへ♪」
可愛い。
「それじゃあ帰ろっか。あ、でも。折角だしどこかで朝ご飯食べて行こうよ」
「「賛成~♪」」
三人で仲良く手を繋ぎ、宿泊施設を出て町を歩く。この町も随分と大きくなったものだ。五十年前はまだまだ出来たばかりの町だったのに。こっちもフィオちゃんが絡んでそう。アメーリア商会はどこにだってあるからね。今の宿もアメーリア商会の系列だ。既に利用したのも一度や二度じゃない。何せ我が家には年頃の子供達がいるからね。しゃあないね。
「なんだか視線を感じるわ」
「どったのクーちゃん」
「っ!」
あら? ダメだった?
「ホノカ様!」
「ごめんごめん。フィーちゃんだけ特別なんだよね。もう呼ばないよ」
「別にホノカ様なら」
「クー!!」
「悪かったわ。もう言わない」
ふふ♪ 可愛い♪
「それより視線の話しよ」
「まあ、クララもフィーちゃんも可愛いから。仕方ないよ」
「いえ、どちらかと言うとホノカ様が……」
私? まあ私も美人だからね♪ ふふ♪
「何を勘違いしているのよ。これは狙われてるのよ」
「そうです。きっとホノカ様は隙だらけに見えるんです」
もちろんわかってるんだけどさ。でも別に珍しいことでもないし。そもそも近づけさせたりなんてしないし。私だってそこまで抜けてない。今更多少腕の立つ人間がいたとしても私を害せる筈もない。クララもフィーちゃんもそんな事は当然分かっている筈だ。
それでも二人は何かを警戒しているみたい。いったい何が気になるんだろう。
「何か勘違いしているようね」
「ホノカ様のそういう所は全然成長しませんね」
えぇ……。
「狙っていると言うのは命の話じゃないわ。それに興味本位でもない」
「それって? つまり?」
「ホノカ様に恋慕の念を抱いておられるのです」
「一目惚れされちゃったってこと?」
「そこまでは知らないわよ」
「以前からホノカ様を慕われていたのかもしれません」
それだけ強い感情ってわけか。うん。わからん。
「ねえ、たぶんこれ私が鈍いせいじゃないと思うの」
「何よ。言い訳?」
「違くて。ほら。私神様だから」
「人間の想いが読み取りづらくなられたのですか?」
「安心して。フィーちゃん達との間には影響無いから。でもほら。他の人達は相変わらず、ね。これでも改善しようとは思ってるんだよ?」
「本当に大丈夫なの? ホノカ様ったら人の心を失いかけてたりしないわよね?」
「流石にそこまでじゃないよ。たぶん」
「嫌ですよ。ホノカ様」
「大丈夫だってば。フィーちゃんの事は変わらず大好きだから♪」
「ホノカ様ぁ」
お~よしよし♪
「それでどうするの?」
「どうって? ストーカーなら何時も通り適当に躱すけど」
「そういう所が良くないと思うの」
「え? まさか真正面から相手しろって言ってるの?」
「そのまさかです」
なんでさ。
「別に断ったって追い返したっていいのよ」
なら。
「けどそれを自分の口で伝えるべきだと思うの。相手の目を見て、相手を一人の人間と認識してね。術で思考を逸らすとかじゃなくて。ホノカ様が本当に私達と共に在り続けたいならそういう積み重ねも必要だと思うの」
「えぇ……面倒くさい……」
わざわざストーカー相手にやらなくてもいいじゃん……。
「そういう所ですよ。ホノカ様。ホノカ様は大多数の人間を虫か何かと同列に扱っておられるのです。それを変えたいと言いつつ結局は口先だけなのです」
うぐぅ……。
「あら。視線を感じなくなったわね。もうやっちゃった?」
「ううん。まだ何も」
「幸運だとお思いですか?」
「フィーちゃんの意地悪……」
フィーちゃんだって人のこと……いや、随分と変わったよね。フィーちゃんだってちょっと前まで会話もままならなかったのに。ミアちゃんのスパルタ教育の賜物なのだろう。クララの影響も少なくないのだろう。きっとルドちゃんも今のフィーちゃんを見れば驚く筈だ。
「ふふ♪ そうね♪ ホノカ様♪」
「え?」
「私達に置いて行かれたくないと仰るならば共に頑張りましょう。私達は何時だってこうしてホノカ様の手を引いて歩いて行きますから」
「むぅ……なんか生意気ぃ……」
「「うふふ♪」」
手を引くのは私の方だった筈なんだけどなぁ。子供達の成長は早いなぁ。……ふふ♪




