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07-12.初めての反抗期

「ナイア。その子を降ろしなさい」


「いやっ!」


「ダメだよ。ナイア。お願い。言う事を聞いて」


「やっ!!」


 困った。遂にナイアにも反抗期が訪れたようだ。おかしいな。愛情いっぱい注いできたのに。甘やかしすぎたかな?



「まあ良いじゃないですか。子供の情操教育にペットは適しているそうですよ」


「ナイアは普通の子供じゃないし」


 私の記憶を持ってるんだから今更情操教育なんて必要ないでしょ。



「ダフネの時だって苦労したじゃないですか。フィナが暴走したキッカケをお忘れですか?」


 忘れるわけが無い。あれは私達の関係が大きく変わった出来事だ。たしかにダフネの時よりずっとマシかもしれない。たかだか角の生えた兎一匹だ。今晩の晩御飯が少し減るだけだ。今後もラビは食べないとか言い出さなければだけど。



「ナイアの事は甘やかすのでしょう?」


「じゃあ拗れたらフィオちゃんが何とかしてね」


「任せてください♪」


 なら良いけどさ。私だってナイアが気に入ったものを取り上げたいわけじゃないし。



「わかった。降参する。もう離せなんて言わないよ。おいで、ナイア。仲直りしよう」


「……」


「ナイア?」


「ごめんなさい」


「ううん。いいの。ナイアは優しい子だね。可愛そうになっちゃったんだよね。それ自体はとっても良いことだと思う。けど守ってあげるなら最後までね。ちゃんと面倒見てあげてね。それが無理そうなら今の内に逃がしましょう」


「……」

「おせわ」

「する」


「そっか。じゃあ名前を付けてあげようね」


「……」

「うん」


 ラビを抱えたナイアを抱っこして腰掛ける。このラビは随分と大人しい。一応生きてはいるようだ。そもそも何で生きた状態でここにいたのかしら? フィオちゃんが捕まえてきたの? さてはわざとね? 私を困らせて何を企んでるの?



「アイナ」


「もしかしてその子の名前?」


「うん」


 すっかりお気に入りだ。まさか自分の名前からつけるなんて。



「可愛い名前だね」


「うん」

「……」

「ふへ」


 嬉しそう。次はお魚もダメって言い出さないかしら?



「アイナの食事も用意してあげないとね」


「おさかな?」


 大丈夫そう。



「お魚は食べないんじゃないかな? 葉っぱを食べるんじゃない?」


「ラビは雑食ですよ。肉や魚なんかも普通に食べます」


 まあ角付いてるもんね。不思議も無いか。この子の小さな角じゃ有って無いようなものだけど。



「その子は大人しい個体のようですし、ナイア自身が色々と試してみては如何ですか?」


「うん」

「やる」


 白々しい。実はフィオちゃんが予め躾けまで済ませた上で連れ込んだんじゃなかろうか。収納スキルで持ち込んだのかも。流石にそんなタイミングは無い筈だけど。フィオちゃんに時間の流れが違う異界は作れない筈だし。でもフィオちゃんなら事前に備えてたって不思議はない。私には想像もつかないような理由で準備を済ませてるんだ。何時もそうだ。



「そんな目で見ないでください。あからさま過ぎですよ」


「……そう言うって事は違うみたいだね。こういう時フィオちゃんは黙ってやり過ごす筈だし」


「余計な事を口にしないのは大前提ですからね」


「だめ」

「ケンカ」


「ごめんね。一緒にご飯作ろっか。ナイアはその子の分をお願いね。きっと塩分は控えた方が良いだろうから」


「うん」

「がんばる」


 作り方は教えなくても大丈夫だろう。お手伝いももう何度もしてくれているし。どうやら私の記憶から料理の知識も取り出しているみたいだ。なんなら手際も結構達者なものなのだ。流石私の娘だね♪




----------------------




「ふ~♪ ふ~♪ ふん~♪」


「ホノ~?」


「ふふ♪ どうしたの? ナイア?」


「これ」

「たべた」


「ふふ~♪ 良かったね~♪ 美味しそうに食べてるね♪」


「うん!」


 良い笑顔♪ ナイア可愛い♪



「アイナ」

「かわい」

「ふへ」


 ふふ♪




----------------------




「今日はお肉無しなんですね」


「当たり前でしょ。ナイアとアイナの前でラビを捌けるわけないじゃん」


 狩ってしまった分はこっそり収納にしまっておいた。今度ナイア達の目がない所でメレクにでも渡しておこう……いや、そういえばメレクもラビだったわ。なんか素で忘れてた。いや、メレク自身も特段気にせずラビを料理して出してくるんだけどさ。前にアイちゃんが例えていたけど、メレク的には魔物って同族というより畑で取れる野菜的な感覚でしかないらしいのだ。つまりあれだ。今の私と同じなわけだ。魔王へと進化した元ラビと、神へと進化した元人間は、かつての同族に対して似たような認識になるわけだ。流石に人間は食べないけども。



「明日は鹿を狩りましょう」


「もしかしてそこまで込みで意図した流れなの?」


「なんの話ですか?」


 これは本当に知らないのかな? ミアちゃんもわざわざ話さないかな? ならヴィーが? あり得る。何せ私達が初めて出会った時の事だし。けどそもそもこの地に来ると言い出したのは私自身だ。フィオちゃんの悪巧みを疑うのは飛躍しすぎだったかも。



「鹿じゃなくて鳥にしない?」


「良いですね。てりやきが食べたいです」


「……いいよ。作ってあげる」


「大物を仕留めないとですね♪」


「頑張ってね。私はナイア達と山菜を集めておくから」


「そんな寂しい事言わないでください。一緒に行きましょ」


「ホノ~」


「わかったてば。冗談だから。ナイアまで責めないで」


「いいこ」


「ありがと。ナイア」


「ふへ」


 可愛い。しゃあない。

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