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07-08.変わりゆくもの

「結構吸われちゃった」


 ざっくり半分くらいは持っていかれたんじゃない? この子よく受け止められたね。多分ダフネとは根本的に別物だ。


 でも全くの無関係ってわけでもなさそうだ。抱き上げたナイアから色々と伝わってくるものもある。この子にはダフネと同じ要素が間違いなく含まれている。きっと同じ世界の産物ではあるのだろう。


 ダフネに備わったものはナイアにも備わっているのだ。ナイアは数世代先の産物だ。たぶん馬車と車くらい違うけど。そういう意味では別物と言えば別物だ。あくまで用途とか最低限のフォルムだけが似通っているだけだ。中には全く別の何かが詰め込まれているようだ。



「フィオちゃん。この子は私が預かるから。ヴィーとソーカも良いよね?」


『『もちろん♪』』


 なんでそんな嬉しそうなの?



「ふふ♪ まさか今更仲間が増えるなんてね♪」


「ずっと私とヴィーちゃんだけの居場所だと思ってたよね♪ けど嬉しいよ♪ それになんだか娘が出来たみたい♪」


「!?」


「ちょっと二人とも。何勝手に出てきてるの? ダメじゃん今はグロリアもいるのに」


「でもどうせフィオが連れ帰るのでしょう?」


「なら私達の家族同然だよね♪」


「認めないよ。そんなの」


 まったく。勝手な事ばかり言って。この前もローちゃんと一緒に閉じ込めてきたし。なんだかここ最近の二人は勝手過ぎる。私の一部だって自覚が薄れてしまったのかしら?



「えっと? ホノカ? その子達は? 今ホノカの体の中から出てこなかった? それにダンジョンボスがなんでそんな風にしがみついてるの? ホノカはいったい何者なの?」


「今更怖くなった? 逃げてもいいよ。私は追わないから」


「私は追いますけどね。と言うか逃がしません」


「空気読んで。フィオちゃん」


「ホノカ様こそ」


 生意気。どうしてこんなになっちゃたのかしら。



「ナイアの事はお好きにどうぞ。ホノカ様に何か感じ入るものがあったのなら何よりです」


「違うよ。そんなんじゃない。ただ放っておけないだけ。この子の力は強すぎるから。真正面から戦っていたらきっと私でも負けていたよ」


「本当に? そこまでですか?」


「うん。厄介な存在が流れ着いてきたものだね。こんなのがこれからも現れるならやっぱりダンジョンに頼るのは考え直すべきかもしれない」


「皆を集めましょう。早急に話し合うべきです」


「少し待って。先に私が話してみるから」


 何故かナイアは私の腕の中で縮こまって黙り込んでいる。やろうと思えば今すぐにでも逃げ出せるだろうに。私に名で縛られているとは言え、ここはまだダンジョンの中だ。すなわち異界の特性が強く発揮される場所でもある。私よりこの世界での力は強いはずだ。今の力を半分吸い出された私ではこの子を止めきれないだろう。



「ならば先ずはここを……グロリア? 何を隠したのですか?」


「ぎくっ!?」


 わざとらしい。



「なにこれ? 水晶?」


 と言うより大きな真珠? なんか見た目はそんな感じだ。



「あっ!? えっ!? うそ!?」


「ダメですよ。ホノカ様。スリの真似事なんて」


「グロリアが先にちょろまかそうとしたんじゃん」


 って? あれ? 消えた?



「ナイア? あなたが取ったの?」


「だいじ」

「だめ」

「とっちゃ」


 ようやく声が聞けた。ダフネみたいな話し方をするのね。



「ナイアのなのね。なら良いよ。自分で持っていて」


「うん」

「ありがと」


 よし。良い子。



「ぶぅ~。私が見つけたのにぃ~」


「ナイアのだって言ってるでしょ」


「そっちじゃなくて! ナイアたんの方よ!」


 何さ。たんって。



「ナイアは私の。グロリアにはあげない」


「少しでいいから! 抱っこさせて!」


「ダメ。指一本触れさせない」


「そんなに私の事嫌いなの!?」


「うん」


「即答!?」


「けど一応謝っておくね。悪いけどこれはグロリアのせいじゃないんだ」


「理不尽!?」


「なんかもう根本的に受け付けないの。グロリアに流れる血のせいだから諦めて」


「生理的嫌悪!?」



「ホノカ様。復讐はくだらないのではなかったのですか?」


「だから何もしてないじゃん。ただ適切な距離感を守ろうねって話しだよ」


「それでも十分子供のようです」


「悪かったってば。謝ってるじゃん」


「本当に何時までも子供のような方ですね」


「フィオちゃんもしかして本気で怒ってる?」


「そうですよ。ホノカ様は何時でも口先ばかりです。自ら努力なさるつもりが全くありません。私達は少々甘やかし過ぎたようです」


「何様のつもりなの? フィオちゃんは私の眷属だって忘れているの?」


「違います。私はホノカ様の伴侶です。下僕になったつもりはありません」


「私の伴侶はミアちゃんだけだよ」


「……そうですか。それがホノカ様の本心ですか」


「うん。だからもういいよ。私の事は忘れて好きに生きなよ」


「何故引き下がると思うのです? 私がホノカ様に拒絶されたくらいで諦めると本当に思っていらっしゃるのですか?」


「……ううん。思えない。フィオちゃんはずっとそうしてきたもの」


「ご理解頂けているようで何よりです。今の言葉は忘れて差し上げます。一先ず仲直りしましょう。これ以上続けては私も冷静ではいられないかもしれません」


「わかった。ごめん。フィオちゃん。言い過ぎた」


「謝罪は結構です。先程仰った事は既に忘れました」


「そう。なら帰ろっか」


「ええ。そうしましょう」



「……なに今の?」


「気にしないでください」


「グロリアには関係ないよ」


「……そう。そうよね。ごめんなさい」


「今回の件でグロリアに落ち度はありません」


「私も少しは反省してあげる。私の視界に映らなければ近くでうろちょろしていても放っておいてあげる」


「ホノカ様。もう結構です。グロリアの件は私にお任せを」


「うん。ごめん。もう言わない」


「……」


 わるかったってば。そんな目で見ないでよ。私にだってどうにもならないんだから。

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