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06-43.役割分担

「久しぶり♪ ルドちゃん♪

 遊びに来たよ♪」


「ホノカ様ぁ!?」


 玉座に腰掛けていた女王様が驚いて飛び上がった。

周囲の視線が一斉に私と女王様に集まる。何人かの兵士達は咄嗟に私の方へ武器を向けてきた。良い判断だ。いきなり転移で謁見の間に現れたのにすぐに判断出来るのは優秀な証拠だね。女王様の反応を見て武器に伸ばしかけた手を止めた子達はもっと優秀だけど。


 あれ? でもどうなんだろう。油断しないって意味では前者の方が良いのかな? もし私が女王様の知り合いに化けた別人だったりしたら……いや。そんな意地悪は言うまい。咄嗟にそこまで考えて動ける人なんてそうそう居ないだろう。転移だって一般的なものじゃないんだから。



 その後すぐに我に返ったルドちゃんが、その場を収めて庭園に案内してくれた。忙しいだろうに、こうして歓迎してくれるのは嬉しい限りだ。念の為最初は私一人で来てみたけど、この調子ならミアちゃんを呼んでも大丈夫そうだ。



「ミア様! お久しぶりです!」


 僅かに声は硬いけど、取り敢えず怯えている様子はない。なんならむしろ嬉しそう。トラウマになっていないようで何よりだ。人生経験を積んで度胸が付いたのかもしれない。



「ホノカ様。ミア様。

 この娘は我が娘、オフェーリア。

 よろしければ是非この娘にもご指導ご鞭撻の程を」


 驚いた。昔のルドちゃんそっくりだ。

緊張してガチガチに固まってるところまで。



「よろしくね。フィーちゃん」


「はっはい!」


 挙動不審だ。可愛い。



「ついにフィ族が増えたわね」


「ふふ♪ そうだね♪

 ルフィナとフィオちゃんも可愛がるんじゃないかな♪」


 今度一緒に遊びに来よう。

フィオちゃんはとっくに知ってるだろうけど。

ご近所さんだし。商会の拠点は変わらずこの王都だからね。



「ちょうど良いわ。

 その娘に領主をやらせてみるつもりはないかしら?」


「詳しくお伺いしましょう」


 ミアちゃんが早速用件を切り出した。


 一通りの話を聞き終えたルドちゃんは二つ返事で頷いた。

隣で話を聞いていたフィーちゃんは真っ青な顔で固まった。



「土地の切り取りなんて大丈夫なの?」


「ええ。あの辺りならば問題ありません。

 委細おまかせを」


 話しが早くて楽チンだなぁ。


 いきなりお姫様に領主やらせるなんて話に同意してくれたのも正直少し驚きだ。普通なら喧嘩売られたと思われてもおかしくないだろうに。


 まあ、私達の出会いがね。そんな感じだったからね。

昔、色々あって城から放り出された所を私達が保護したんだよね。


 それから暫く一緒に暮らしてからお城に送り返したのだ。その間、ミアちゃんとフィオちゃんが何故か熱心に教育を施していた。かつてはおどおどしていたルドちゃんもそんなこんなでいつの間にやら立派な女王様になったわけだね。


 まあ、根っこは大して変わっていなかったから、女王様になって最初の頃はしょっちゅう倒れてたみたいだけど。相当無理していたようだ。遊びに行く度に治癒魔法をかけてあげたものだ。


 それに私が甘やかし担当だったから、結果私にいっぱい懐いてくれていたのだ。まあ、年を取った今ならミアちゃんの有り難さもわかるだろう。フィオちゃんはともかく。


 フィオちゃん、厳しいからね。ミアちゃんと違って優しさからくる厳しさじゃなくて、組織のトップとしての合理的な厳しさというか。ルドちゃんの事も私達が拾ってきたから世話したけど、それ以上には興味も持たなかったというか。


 いや、けしてそれだけの冷たい娘でもないんだけどね。なんかルドちゃんは相性が悪かったのかもしれない。私が甘やかしまくってたからバランスを取ろうとしてくれていたのかもしれない。もしくは、ミアちゃんの引き立て役になろうとしたのかもしれない。フィオちゃんはミアちゃん大好きだからね。ミアちゃんが誤解されたままは嫌だったのかも。


 王族とのコネなんてフィオちゃんの立場からしたら便利なカードだっただろうに。まあ、フィオちゃんならそんなものよりミアちゃんがどう思われるかを優先するか。


 おかしいな。フィオちゃんは私のお嫁さんのハズなんだけどなぁ。リリとミアちゃんに勝てる気がしないなぁ。今度久しぶりにデートにでも誘ってみようかなぁ。リリも連れてくって言いそうだなぁ。


 そうなったら拉致監禁しちゃろ。異空間に閉じ込めてたっぷり可愛がっちゃろ。そろそろ皆が誰の伴侶なのか思い出させないとだ。忙しくてそれどころじゃないけど。ちくせう。




「ホノカ、少しフィーと席を外しなさい。

 私とルドヴィカで話を詰めておくわ」


「うん。そうだね。

 行こ。フィーちゃん」


 今のミアちゃんとルドちゃんなら大丈夫だろう。


 フィーちゃんの手を握って立ち上がらせ、庭園内の少し離れた所へ歩いていく。そのまま花園を見て回りながら、少しずつフィーちゃんの言葉を引き出していく。



「こっこれ。好き。綺麗。だから」


「ふふ♪ ルドちゃんとおんなじ事言ってる♪」


「え? あ。えへ。えへへ」


 可愛い。



「フィーちゃんはお母さんとそっくりだね♪

 きっと将来は良い王様になれるよ♪」


「……」


 あれ? 沈んじゃった?



「もしかしてやりたくない? 王様」


「!?」


 ビクッと方を震わせるフィーちゃん。

どうやら図星のようだ。お母さんの事は大好きなようだけど、それはそれっぽい。まあ人前に出るのは苦手だよね。わかるわかる。私も昔はそうだった。



『アイドルやらせてみたら?』


 へーちゃんは鬼かな?



『度胸と自信を付けさせれば良いのよ』


 黒歴史になりかねないよ?

今のところ、この世界がアイドルをどういう存在として認識していくかわからないんだもん。認められれば良いけど、下手するとテロ組織グループだとか思われかねないんだよ?



『その時はその時よ』


 刹那的だぁ~。



『先ずはライブを見せるのよ。

 憧れを抱かせなさい』


 存外悪くない手かもしれないけどさ。

まあ、追い追い考えよう。焦って決める必要はないよ。

フィーちゃんとも長い付き合いになりそうだし。

もしかしたらクララに丸投げするかもだし。



『ホノカは人任せにしすぎよ。

 そんなんだからフィオ達だって取られちゃうんでしょ』


 ぶーぶー。



『きっと皆こう思っているはずよ。ホノカと触れ合うのはたまにで良いと。どうせ気まぐれで捕まえておくのは無理なんだから、向こうから来るまでは待っていようと。けど一人だと寂しいから誰か同じ想いの子を連れて行こうと。この調子じゃ何れフィーとクララもそうなるわ』


 つまりへーちゃんはそう思っていると。



『さあどうかしらね?

 私は何時でもホノカの心を覗けるもの。

 ある意味ミアよりホノカに近いのだもの。

 これでも十分満足しているかもしれないわよ』


 よく言うよ。

つい最近焚き付けてきたばかりのくせに。

未だにリコリス達の事だって開放してくれないくせに。



『次は私が催促する前に来てほしいわね』


 私は何時だって求められたいんだけどなぁ。



『応えるかどうかは気分次第じゃない。ホノカは私達にとって自分だけを見てくれる存在じゃないんだもの。だから疲れちゃうのよ。虚しくなるのよ。求め続けるのは』


 私が二十人くらいに分裂出来ればなぁ。



『やめておきなさい。

 嫁が増えるだけよ』


 へーちゃんがアイちゃん生み出したみたいに?



『そうよ。まだホノカに引退なんてさせないわよ』


 そっか。そういう手があった。

皆の気を引けばいいんだ。



『怒るわよ。そんな悪趣味な方法は許さないわ。

 私の目は誤魔化せないのよ』


 へーちゃんだけ先に落とせば良い話だよね?



『協力なんてするわけないでしょ。事前に助けも求めるわ。この話はお終いよ。バカなこと考えてないで、フィーの相手に戻りなさい』


 は~い。

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