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06-40.悪ノリ

「どうしてこうなるのよ」


「わかぁんなぁ~い」


 何故か村長宅に呼び出された私達は、そのまま上座に座らされ、突如始まった緊急会議を見守る事になってしまった。


 まだマウロ君にも会えて無いのに……。

ミケちゃん達とのデートも途中だったのに……。

あれ? ミアちゃんとのデートは?



「姉さん達が悪いんでしょ。

 これに懲りたらもっと頻繁に顔出してよね」


 側に寄ったミレーナが咎めるような声音で告げてきた。



「ねえ、なんか献上するとか言ってるよ?」


「少女をとも聞こえたわね」


「年数で揉めてるみたい。

 流石に毎年は無理だよ?

 こっちも受け入れられないよ?」


「何十年に一度だって無理よ。

 扱いが完全に邪神か何かじゃない」


 生贄かな?

食べちゃうのかな?


 まあ食べちゃうけどさ。貰ったら。

勿論バリムシャ的な意味じゃなくて。ペロペロ的な意味で。




「少しの間くらい黙って座ってなさい」


「「はい」」


 ミレーナおっかない……。

なんでまだ怒ってるのぉ……。


 どうやらバルト村の皆は私達をこの地に縛り付けたいようだ。とは言え流石にそれは不可能なので、せめて定期的に貢ぎ物をする事で関係を継続したいようだ。本当にどうしてこうなった……。八年も放置したからか……。


 けど絶対何割か悪ノリしてるだけでしょ。

この子達とも長い付き合いなのだ。全員が顔見知りなのだ。

何なら子供の頃遊んであげた子達もいっぱいいるのだ。

ミケちゃんの時だけじゃない。ミレーナの時もなのだ。


 私達は精々何時までも美人な素敵お姉さんズでしかないはずだ。決して神様チックな力を披露したわけでもないのだ。


 いやまあ、不老不死で神出鬼没な美人お姉さんズとか、十分神秘的で神様チックではあるんだけども。



 これはあれかな?

何れミアちゃんの実家が巫女の家系になるのかな?

神社でも建てちゃう? 祀られちゃう?


 いっそ私とアイちゃんの教会の総本山にしちゃう?


 いや、そんなわけにいかないか。

アイちゃんも流石にバルト村とは縁も無いし。

来たことが無いわけじゃないけど。

とは言え、ほんの数回程度だもの。

流石に信仰が芽生える程じゃない。




 なら逆にミアちゃんも神様になっちゃう?


『何が逆によ。

 無理に決まってるでしょ。

 ミアでは器が足りないわ』



 神様の採用条件って厳しすぎるよね。

もうちょっと門戸広げたらどう?


『私に言われたってどうにもならないわ』



 神様社会の事は実はまだよくわかってないんだよね。私。

何せ神様としては新米も良いところだもの。

そのうち新人研修とかあるのかな?


『無いわよ。ホノカの場合は』



 私の場合はって事は普通はあるんだ。研修


『その話はまた今度ね。

 必要になったらアイに伝えるから』



 神様社会的には、あくまでアイちゃん一人だけなのかな?

この世界の神として認められているのは。


『また今度と言っているでしょ。

 その話は一旦忘れなさい』


 は~い。



 素直に頷いておくとしよう。へーちゃんがこう言うって事は、本当に今は教えてくれないのだろうし。



「ホノカ様。ミア様」


 現村長のバルナバ君が恭しく声を掛けてきた。

昔はただのスケベなガキ大将だったのに。今では名実ともに皆の代表か。随分と立派になったものだね。これは私の折檻の賜物だろうか。当時はちょっとムキになってやりすぎたかもしれないけど、流石にもう本人も気にしてなさそうだし別に良いよね。むしろなんか皆より過剰に敬ってくれてるし。なんでだ?


 まあでも。ふふ♪ よく知っている子が立派になった姿を見るのも悪くないものだよね♪



『寒村の村長程度で立派になったと言えるのかしら?』


 へーちゃん。すてい。



「十年に一度。

 村から年頃の少女を一人献上致します。

 何卒、我らに加護をお与え下さい」


「勘弁してよ。

 スパンが短すぎよ。

 せめて百年に一人になさい」


 受け入れるんだ。ミアちゃん。

まさかそんな答えを返すとは思わなかった。

普通に断ると思ってた。



「それでは村の者共が覚えてはいられません。

 どうか二十年に一度は」


「五十年よ」


 なんか値切り交渉みたいになってきた。真逆だけど。



「二十五年で」


「ダメよ。五十年よ」


「姉さん」


「……三十年よ。それ以上は無理よ」


 よっわ。

妹相手だとよわよわミアちゃんだった。



『ねえ、何でバカ正直に受け入れる必要があるの?

 毎年お祭りでもに呼んでもらうとかじゃダメなの?

 もしくは農作物を貰うとかでも良いわけでしょ?』


 それはそう。


 けど、シーだよ。へーちゃん。

ミアちゃんだって気付いた上で乗っかったんだから。

そんな事言ったらミアちゃん素直じゃなくなっちゃうよ。

本当はミアちゃんだってこの村との繋がりを維持したいの。

だから気付かないフリしてこんな条件に渋々同意したの。

八年放置した事がきっと自分でもショックだったんだよ。



『それの何処が素直なのよ』


 素直でしょ? 自分の欲求に。

それに少しくらいバカみたいな条件じゃないと、もうミアちゃんにとっても特別な場所ではいられないんだよ。この村は。両親も幼馴染達も皆居なくなっちゃったんだから。妹が、姪が亡くなれば、何れ関係が途絶えちゃうの。それが怖くて堪らないの。今更になってそう思い始めたの。だからミアちゃんも悪ノリする事にしたの。これはただそれだけの話だよ。



『今回だけよ。あまり妙な関わり方をしてはダメよ。

 俗世との接し方は気を付けなさい』


 うん。そうだね。

きっとまだまだ私達も自覚しきれてはいないんだよね。

だからしっかり受け止めて考えていくよ。



『玉虫色すぎない?』


 仕方ないじゃん。へーちゃんの言いたいことも何となくはわかるけどさ。こればかりは経験していかないと実感も湧いてこないでしょ。今回私達がバルト村で感じた事みたいにさ。



『もっと真剣に考えなさい。いくら何でも増やしすぎよ。

 神が勝手をしすぎれば簡単にバランスは崩れてしまうわ』


 そうだね。

バルト村の子達は基本的に使徒にはしないでおこうか。

後でそんな感じの話をミアちゃんと相談してみるよ。



『それで良いわ』


 あ、でも。

ミケちゃんとクララは例外ね。

もう約束もしちゃったし。



『その二人で本当に最後にしておきなさいよ』


 うん。ありがとう。へーちゃん。

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