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01-23.秘密

 取り敢えず、目的地の件は後回しにする事にした。

ミアちゃんには悪いけれど、チョコレートはそもそもこの世界に存在するかもわからないのだ。

そのせいか、どうにも真剣に考える気になれない。


 私は気分を変える為、スキル習得の方を頑張る事にした。



「フィオちゃん、また収納スキル見せて」


「はい、ホノカ様」


 早速、フィオちゃんの手品ショーが始まった。

フィオちゃんの小さな手の平の上には、様々な物が現れては消えていく。


 果物、ナイフ、コップ、水筒、ハンカチ、身分証、写真立て?、手帳、ペン、インク瓶、書類の束?、本、……etc


 たまに変な物も混ざっていたけれど、概ね生活必需品や、机の周りに置いてそうな物が収納されていた。

普段から収納スキルに収めていたのだろう。

整理整頓とかしないでも済むのは楽そうだ。


 いや、中身はどうでもいいのだ。

スキルを習得するのが最優先だ。


 うむむ。

何から手を付ければ良いの?

他のスキルを覚えた時はどうやってた?

あまり思い出したくはないけれど、そうも言ってられない。

収納スキルがあれば、フィオちゃんを安全に逃がせるかもしれない。

生きている存在を中に入れられるのかは、わからないけど。


 私は半ば自己暗示みたいにして、意識を塗り替えていく。

何度と無く繰り返した感覚を思い出していく。


 必要なのは、先ずは学ぼうとする意識だ。

未知を切り開き、知恵を得たい。そんな強い意思だ。


 私のスキル、【探究者】は、自身にとっての未知を知ろうとする事に、そして究める事に補正がかかる。

それは、本来なら不可能なスキル習得すら可能とする程に。


 普通の人間は、生まれ持ったスキルが全てだ。

それ以外を持つことなど不可能だ。

ごく一部の例外を除いて。


 【探究者】は私が欲したものへと導いてくれる。

なんだか本末転倒なスキルだ。

普通、探求って自分自身でやるもんではなかろうか。

スキル頼りで導かれるのはなんか違う気がする。


 しかも、自身の内面にしか作用しない。

チョコレートには導いてくれない。

こっちはスキルレベルが低いからなのかもしれないけど。


 スキルレベルなんて概念があるのかは知らないけど、スキルは熟練度によって効果が変わる場合がある。

レベルが上がったら、もっと簡単にスキルも得られるのかしら。


 とはいえ、既に【探究者】もそれなりに利用している。

私の持つスキルは膨大だ。

普通の人とは比べ物にならない。

まあ、どれもこれも戦闘特化なんだけど。


 鑑定とか収納とか念話とか欲しかった。

普段の生活で役立つのは精々【危機察知】とか【探知】くらいだ。


 ボースハイトの連中は、純粋な戦闘マシーンを欲した。

スキルをフル稼働させた私に敵う者など、この世界中を探してもそうそういないだろう。

そもそも、スキルに頼らなくてもそれなりに強いはずだ。

魔法も剣技も叩き込まれている。

魔物だっていっぱい倒した。

本当は何と戦わせたかったのだろう。

人間相手にここまでの力は必要ないだろうに。


 ダメだ、思考を戻そう。

【探究者】の熟練度が上がっているような気がしないのは、何か使い方が間違っているからだろうか。

もっと純粋に私自身の意思で何かを欲し、知ろうとする必要があるのだろうか。

スキルの名前からするなら、そんな印象を受ける。


 これも後回しだ。

先ずは収納スキルの事だ。

収納スキルを知る事で、私も使えるようになるはずだ。

いっそ、フィオちゃんに私を入れてもらおうかしら。

中に入ればなにかわかるかもしれない。

まあ、流石に怖くて無理だけど。

せめて、ミアちゃんが見ている前でやるべきだ。

出してもらえなかったら大問題だ。


 そういえば、フィオちゃんは他のスキルを使えるのだろうか。

鑑定とか使えないだろうか。



「フィオちゃん」


「なんですか?」


「他になにか使えるスキルはある?」


「ふっふっふ!

 よくぞ聞いてくれました!

 ありますよ!

 秘密のとっておきが!」


 何故か急にハイテンションになるフィオちゃん。



「教えてくれる?」


「ダメです!

 これだけは教えられません!

 例えホノカ様の願いでもです!

 秘密のとっておきの切り札ですから!」


「そっか。

 なら、鑑定とか使えない?」


「あれ?

 大して興味ありませんか?

 あいにくと鑑定は持っていませんが」


「そっか。

 なら良いや。

 収納スキルの事もっと教えて」


「ぶーぶー」


「どうしたの?」


「もっと私に興味持って下さい!

 私の秘密をもっと知りたがって下さい!」


 なんか面倒くさい事言い出した。



「でも話したくないんでしょ?

 無理やり聞き出すなんて、私の趣味じゃないわ」


「く~!

 ホノカ様お優しい!

 ミア様とは大違い!

 あの方なら、『勿体ぶって無いでさっさと話しなさい!でないと追い出すわよ!』

 なんて言うでしょうに!」


「ミアちゃんを揶揄するのは許さないよ」


「ごめんなさい……」


「結局何が言いたいの?

 私に聞いてほしいの?

 じゃあ、その隠してるスキル教えてくれる?」


「仕方ありませんね!

 敬愛するホノカ様がど~しても知りたいと仰るなら話すしかありませんよね!

 いや~本当は秘密なんだけどな~

 ホノカ様だけですよ~」


 別にどうしてもとか言ってない。

何でこの子、胡散臭いオッサンみたいな三文芝居を始めたのかしら。

そういうやりとりを見て、真似でもしてるつもりなのかな。

見た目は可愛くて幼気な少女だから違和感しかない。

無理してる感とも言えるけど。



「私の秘密の極秘の秘匿されたスキルの名は!」


 一々妙な間を取らないで欲しい。



「名は!【直感】です!」


「それ、私も持ってるよ」


「……え?」


「私も【直感】使えるよ。

 別に隠す程のやつじゃなくない?」


「いえいえいえ!

 【直感】はレアスキルですよ!

 収納スキルより珍しいくらいですよ!」


「そうなの?

 大して使ったことないんだけど。

 【危機感知】とか【探知】とかの方が有用じゃない?

 【直感】ってなんだか曖昧だし」


「もしかして、戦闘を前提に考えてます?」


「うん。そうだけど」


「違いますよ!【直感】は日常生活にこそ輝くのです!

 初対面の相手が信頼できる人物か確認したり、出された食事に毒が盛られていないか察したり、用途は無限大です!」


 それでフィオちゃんは私達に最初から好意的だったの?

秘密をペラペラ喋ったのも、【直感】で問題無いと判断したから?

それはそれでどうなのよ。

スキルに頼りすぎじゃないかしら。


 ところで食事に毒を盛られるような生活してたの?

その上で、見ず知らずの私達を信頼して、明るい気持ちになれているのなら、スキル頼りも悪いことばかりではないのかしら。


 なんだか、フィオちゃんの言動の違和感もここにあるのかもしれない。

もしかしたら、話をする度に逐一スキル使ってたりしないかしら。

ここで話しても問題ないか、スキルで確認してから話したりしてないかしら。

まあ、そんなわけないか。

今まで普通に失言もしてたし。



「私に好意的なのも【直感】が原因なの?」


「えへへ~

 それ聞いちゃいます~」


「いえ、別に答えなくても」


「ホノカ様に強い反応を示したのです!

 私の未来はこの方と共にあると!

 ホノカ様は私の運命の人なのかもしれません!」


「ごめんなさい」


「またフラレた!?」


「先約があるの」


「しかもガチっぽいやつです!」


「あなたの気持ちには答えられないわ」


「そこまで言ってませんよ!?」


「今回は縁が無かったという事で」


「あれ?追い出されそうになってます?

 家に帰れって言われてます?

 もう帰る場所なんて無いんです!

 側において下さい!」


「身の危険を感じるわ」


「もっとやばい人といつも一緒にいるじゃないですか!」


「あれでミアちゃんは初だから大丈夫よ」


「それはわかりますけど!」


「フィオちゃんは開き直ったらとことん突き進みそうだから」


「よくわかってもらえていて嬉しいです!」


「少し距離をおきましょう」


「大丈夫ですから!

 何もしませんから!」


「せめてミアちゃんが帰って来るまで、接触は遠慮してもらえるかしら」


「ホノカ様も大概ですね!

 ミア様の事大好きじゃないですか!

 操を捧げる気満々じゃないですか!

 なら応えてあげましょうよ!」


「やむを得ない事情があるのよ」


「まあ、なんとなくわかりますけど」


「それも【直感】のお陰?」


「いえ、お二人の普段の会話を聞いていればその程度は」


「良かった。

 フィオちゃんは何でもかんでも、スキル頼みなのかもとも心配だったから」


「それなら盗賊に捕まっていませんよ」


「そうかしら。

 【直感】ってそんな万能なものでもないと思うけど」


「使い方次第ですよ。

 それはそれとして、結局私のとっておきは、大した驚きにもならなかったのですね……」


「まあ、私にとっては特段珍しいものでもなかったから」


「いったいどんな魔窟から出てこられたのでしょう」


「魑魅魍魎が詰まっていたのは間違いないかも」


「あまり関わりたくは無いですね」


「絶対に関わってはダメよ。

 フィオちゃんなんて取って食われちゃうんだから」


「その時は、ホノカ様が助けて下さいね」


「嫌よ。

 私は二度と関わるつもり無いもの」


「そんなぁ」

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