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01-21.スキル

 翌朝、ミアちゃんは私達を宿に待たせて、一人でギルドに向かった。

今回は大人しく待つ事にした。



「フィオちゃん、収納スキルを見せてもらってもいいかしら」


「はい!もちろんです!」


 そう言うなり、フィオちゃんの手の平の上に果物が一つ現れた。



「まるで手品みたいね」


「種も仕掛けもございます」


 その言い回しってここにもあるの?



「どうやって取り出す物を選んでるの?」


「取り出したい物を思い浮かべます。

 ある程度自由に出す場所も選べますよ」


 私はフィオちゃんに手を引かれて、手の平を上に向ける。

すると、私の手の平の上にも果物が出現した。



「収納スキルでしまっている物ってどれくらい保つの?」


 少なくともこの果物が傷んでいるようには見えない。

いつ収納したものなのかしら。



「普通は一般的な保管庫と大差ありません。

 ですが、私のは結構保ちますよ。

 流石に時間停止とまでは言いませんが」


「それってミアちゃんには話した?」


「いえ、話してません」


 ミアちゃんは調理済みの食事は長くは保たないと言ったのだから、この情報を知らなかったのは間違いない。

フィオちゃんのは一般的な収納スキルとは異なるのだろう。


 ちょいちょい隠し事というか、情報を小出しにするのは素でやってるの?それともわざと?


 用心しているにしては、そもそも収納スキルの事はあっさり話してしまったし、こうして聞けば普通に答えてくれる。


 なんだかチグハグだ。

今も何かやましい事をしているという態度では無いし、悪びれる様子も無い。

普通の態度で普通に答えただけだ。


 フィオちゃんの事、本当に信じて良いのかしら。

まあ、私も人の事は言えないのだけど。

ミアちゃんにすら、いっぱい隠し事しているのだし。



「入れたことを忘れてしまったものってどうなるの?」


「何が入っているのか知りたいと思えば、頭の中に浮かんできます」


「容量は?」


「そこは個人差があるそうです。

 私のは結構広いので、家一軒くらいなら入ると思います」


「それは凄いわね。

 ちなみに、生き物は入れられるの?」


「入れたことは無いですね。

 なんだか怖いですから」


「それもそうね」


 今度魚か何かで試してみましょう。

それに、私の習得するものと、フィオちゃんのとでは違うかもしれないし。


 多分、スキルに個人差があるというのは間違いない。

私は既に数多のスキルを習得している。

当然、同じスキルを使っている相手を見た事もある。

それらと自分のものとで効果が異なるのも経験がある。


 単純な威力のように熟練度次第な部分もあれば、そもそも別物みたいに効果が異なる場合すらもある。


 例えば、隠密スキルとかだ。

音等を消して気配を隠すだけの場合もあれば、眼の前にいるのに認識出来ないという効果になる事もあるのだ。

その何れの場合であっても、名称は『隠密』だ。


 まあ、これももしかしたら名称を確認する鑑定スキルの熟練度次第という可能性もあるかもしれないけど。

熟練度が高ければ、より細分化されるのかもしれない。


 そういえば、鑑定の方はどうなのだろう。

人物鑑定とか行動記録とかも似たようなものな気もするけど、全部『鑑定』で統一されていたりするのだろうか。


 色々確認したいな。

早く鑑定スキルも習得できるといいのだけど。

鑑定スキルもボースハイトの連中は教えてくれなかった。

まあ、下手にそんなものを習得して隷属の首輪の対処方法とか調べられても困るのだろう。


 とはいえ、鑑定スキルはこの世界に来た最初の頃から、度々目にしていたスキルだ。

存在さえ知っていれば、自己修得も何れは可能だと思う。

まあ、未だに上手くいってないけど。

何が足りないのだろう。

モチベーションかな。

モチベーションはなんか違うか。

強制的に押し付けられたものだったし。


 ボースハイトに居た頃は、戦闘技術やスキルを文字通り叩き込まれた。

私の本来のスキルを知っている奴らは、私にそれが可能なのだと知っていた。

あの時くらいの追い詰められ方が必要なのだろうか。

新しいスキルを身につけるには、それくらい必死になるしかないのだろうか。



「どうかしましたか?」


 どうやら考え込み過ぎてしまったようだ。

黙り込んでしまった私に、フィオちゃんが少しだけ心配そうに見上げてくる。


「ううん、なんでもないわ。

 収納スキルどうやったら覚えられるかなって思って」


「……早く私を追い出したいですか?」


「違うわ、そうじゃない。

 そんなわけないでしょ。

 フィオちゃんの事をミアちゃんに頼んだのは私よ。

 勿論、収納スキルが目当てなわけでもないからね」


「はい……」


「ほら、笑って。

 そんな表情はフィオちゃんらしくないわ」


「はい!」


「何イチャついてんのよ。

 追いてくわよ」


「おかえり、ミアちゃん。

 首尾はどう?」


「問題ないわ。

 フィオ、これ被りなさい」


 ミアちゃんはフード付きのマントをフィオちゃんに放り投げた。

ついでに買ってきてくれたようだ。



「今の季節には暑そうです」


「あんた、私にだけ態度デカくない?」


「いえ、失礼しました。

 文句などありません。

 ありがとうございます」


「最初から素直にそう言いなさい」


「はい、ミア様」


「対等の関係になりたいのなら、過去を精算なさい。

 そうすれば考えないでもないわ」


「はい!いつか必ず!」


「ミアちゃんがデレた?」


「なにそれ?」


「ううん、なんでもない」


「ならさっさと行くわよ。

 時間が経てばその分生存に気付かれる可能性は上がるわ。

 元々、あの盗賊達とフィオの姉は繋がっているのだから」


「そうね、急ぎましょう」

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