05-31.海底お化け屋敷
「本当にあったわね。
正直疑いかけていたわ」
「そもそもギルドはどうやって知ったんだろう。
結構潜ったよね。ここまで」
潜水が得意ったって、限度があるでしょうに。
「もう!何で立ち止まってるの!
早く中入ろうよ!」
「待って下さい!フィナ!
手を離したら嫌です!置いてかないで下さい!」
フィオちゃん、金槌だったのね。
単純に怖いのもあるのかもだけど。
今はスーちゃんのお陰で溺れはしないけど、辺りはすっかり暗闇に包まれている。私とルフィナの灯す明かり位しか周囲を照らすものはない。
「これは……」
アイちゃんが辛うじて見える遺跡の外観を観察しながら、何かを考え込み始めた。
「メーちゃん、ここって魔物とかいるの?」
「ダメだよ!ホノ姉!
そういうの聞いちゃつまんないでしょ!」
「だそうです。
ホノカ様も折角ですから楽しんでみては如何ですか?」
そんな事言われてもなぁ……。
海底遺跡の中には何故か空気が存在していた。
正面扉を開いても海水が入っていかないのだ。不思議。
あとちょっと床も光ってる。不思議。
でもなんだろう。このなんとも言えないガッカリ感。
いや別に、水中戦がしたいわけじゃないけど。
尽く思ってたのと違うからかしら。
もちろん、これはこれで不思議なんだけどね。
何で未だに機能してるんだろうとか。
実は海底人でもいるのかしら?
ああ、だからか。
妙に生活感みたいな空気を感じるのだ。
それこそ、神秘性や不思議さが薄れてしまう程に。
勝手にお邪魔したらまずかったかしら?
とは言えそんな風に感じているのは私だけらしい。
皆は素直に遺跡探検みたいにしか思っていないようだ。
「流石に人数が多すぎたわね」
通路に対して確かに少々手狭だ。
何せ十一人もいるからね。
アルマとテラフ以外は揃ってるし。
「三組に別れましょう」
ミアちゃんの意見はあっさりと採用され、すぐに三つのチームが出来上がった。
ミアちゃんチーム。
ミアちゃん、私、ヴィー、キアラ。
ルフィナチーム。
ルフィナ、フィオちゃん、スーちゃん、ダフネ。
アイちゃんチーム。
アイちゃん、メーちゃん、リコリス。
「ボクはホノカと一緒が良いです」
「僕はアイちゃん様に付き従います」
「ダメよ。人数が偏りすぎてしまうわ。
それにアイは最近ずっとホノカを占有していたじゃない。
たまにはこっちにも譲りなさい」
「ならボクは帰りま……なんでさ……」
言い切る前にへーちゃんに止められたようだ。
「何で私までこいつらと一緒なのよ!?
スー!せめてあなた代わりなさい!」
「ダメよ。
ここは仮にも海底だもの。
水の専門家を子供達につけるのは当然でしょ」
ミアちゃんの言う事は尤もだけど、流石にリコリスをアイちゃん&メーちゃんに加えるのは可愛そうだ。
「ダフネ」
「かわる」
「良いの?」
「うん」
「メレク」
「すき」
ダフネも随分と気の多い事で。
でも最近私も放置気味だったからね。
帰ったらいっぱいキスしてあげよう。
誰がハーレムの主か思い出させておかないと。
「歓迎します、ダフネ」
ダフネを抱き上げる魔王様。
ここもか。私の知らないところでも着々と矢印が増えていってるのね。これはうかうかしてられないかも。
最初にルフィナチームが出発し、次にアイちゃんチーム、最後に私達ミアちゃんチームと続いた。
「久しぶりよね。
この四人だけって」
「そうだね。
想像していたのとは少し違うけど」
「もしかして私の事?
お邪魔しちゃったかしら?」
ミアちゃんと反対側の私の手を握った人間態ヴィーが、不満そうに問いかけてきた。
「そういう意味じゃなくてね。
問題はこの場所の方だよ」
「どういう意味かしら?」
「どうもこうも、何か妙な雰囲気の場所だよね。
遺跡って言うより、今尚誰か住んでそうっていうか」
「そう?
珍しいわね。
ホノカがそういう空気を察せるなんて。
でも勘違いではないかしら?
少なくとも私は気配を感じないわよ?」
「ミアちゃんがそう言うなら。まあ。
取り敢えず進んでみよっか。
奥に行けば何かわかるかもだし」
なんか遺跡探索って言うより、お化け屋敷探検みたいなノリになってきたけど。
戦力過剰だからね。緊張感なんて湧かないよね。
平和だなぁ~。




