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01-19.問題点

「明日からどうしようか」


「とりあえず王都に行くわ」


「王都はアメーリア商会本部の縄張りなのですが……」


「盗賊退治の報酬を受け取ってないもの」


「変装して冒険者ギルドに寄るくらいなら、気付かれないんじゃない?」


「町に入った時点でバレますね。

 門をくぐるには身分証明が必要ですから」


「何で一商会が王都の門兵と通じてるの?」


「そんなもんよ」


「私かミアちゃんのどちらかだけ王都に入る?

 もう一人は王都の外でフィオちゃんと待ってるとか」


「嫌よ。

 王都の出入りには時間がかかるのよ。

 一晩は出てこれないわ。

 そんなに長い時間、ホノカから目を離せないわよ」


「ミアちゃんが一緒に居たいだけでしょ。

 誤魔化すために私を子供扱いしないでよ」


「ホノカの世間知らずっぷりは子供みたいなものじゃない」


「うぐっ……

 なら、フィオちゃんも冒険者になる?

 新しい身分証を作ってしまいましょうよ」


「この町では無理よ。

 王都に行くか、そうでなければ引き返す必要があるわ。

 とはいえ、身分証も提示せずに入れる町で、冒険者登録が出来る所なんてそうそう無いけれど」


「身分証の提示は問答無用でダメなの?

 王都以外でも、直ぐに気づかれちゃうってこと?」


「一度生存を気付かれれば時間の問題よ。

 後から遡って記録を追われる可能性があるわ。

 今の内から痕跡を残すべきではないわね」


「なら、私達の住んでいた町まで戻る?

 あそこなら出入りに身分証必要ないよね?」


「嫌よ。

 なんでそこまでしなくちゃいけないのよ」


「なら王都に忍び込む?」


「ホノカ、あなたやっぱり経験あるんでしょ?」


「ノーコメント」


「ホノカ様、意外とやんちゃされているのですね」


「そんな事よりフィオちゃんは?

 王都に近くて冒険者登録が出来て、身分証無しで入れる町に心当たりとかない?」


「ありません。

 王都付近の小さな町の冒険者ギルドは、既に役目を終えつつありますから」


「理屈はわからないでもないんだけどさ、それだと王都まで行けないような小さな村の人達とかは困るんじゃないの?

 新人は路銀を稼ぎながら王都とかまで行くんでしょ?

 それとも、最初から王都なんか目指さず前線の方に向かっていくの?」


「最初から前線を目指す者もいないわけじゃないわ。

 けれど、若者は単純なのよ。

 どれだけ周りから実情を聞いていたって、素直に栄えていない土地に向かう者なんて大して多くないの。

 つまり、ギルドのシステムは破綻しつつあるのよ。

 これに限らずね」


「どういう事?」


「ここらの魔物は減る一方だもの。

 もう王都の近くに過ぎた力は必要ないの。

 盗賊やら、その他の治安維持には国の兵力で十分。

 そう考えているのよ、少なくともお偉い貴族様達はね」


「そうは言っても、実際には出動してくれないんでしょ?」



「ええ。そうよ。

 つまりは、誰も彼もが足の引っ張り合いをしているの。

 国の財務を司る者達はそうそう軍が動くのを許さない。

 軍事を司る者達はギルドの力を削いでしまいたい。

 そうして冷遇されたギルドは、力や権力を守るために金稼ぎに躍起になって開拓事業を最優先する」


「その結果がこの町のギルドよ。

 大して重要でもないけれど、国の決まりだから仕方なくギルドを残しているの。

 あからさまに手を抜いて、さして重要でもない人員を最低限配置するだけのハリボテをね。

 結果、王都の周辺に盗賊が湧くなんて本末転倒な自体に陥っているのよ」



「ババの押し付け合いでもしてるつもりなの?」


「ババ?」


「ごめん、えっと、この町に限らず王都の周辺の町だって、最低限の治安維持は必要なはずよね。

 けれど、そこに国は兵力を割いたりしないから、実質的にはギルドが代わりを果たしていたのよね。

 けれど、ギルドもやる気を失くしちゃったから、この町のように段々と防衛力を無くしていくって事なのね。

 私達が来るまで、誰も盗賊退治が出来なかったみたいに」


「ええ。そういう事よ」


「最初からこんな仕組みだったの?

 それともギルドって後から出来たの?」



「冒険者ギルドが産まれたのは建国後、それなりに時間が経ってからよ。

 最初に国ができて、国が領地を広げた。

 しばらくは国や各領の兵士達が国を守っていた。

 国が広がって兵士達の手が回らなくなった事で、民間の有志によって冒険者ギルドが産まれた」


「とはいえ、最初は単なる傭兵団のようなものだった。

 冒険者という呼び名は、他の傭兵達と区別させたくて名乗りだしたの。

 国中を回って荒事を解決していたからね。

 その傭兵団が大きくなり、ギルドとなった」


「いつからか、段々と兵士達の仕事を肩代わりしていった。

 最初は小さな集まりだったものが、段々と国中に広がっていったわ。

 そうして王都以外の殆どの防衛がギルドの役目となった。

 各地の領主貴族達も自領の防衛をギルド任せにし始めた」


「今では軍と言えば、王都や領主の町を守るのが精々よ。

 数はそれなりに揃えているらしいけれど、殆ど実戦経験の無いボンクラの集まり。

 実態は殆ど一般人と変わらないわ。

 当然よね。前線で魔物退治に明け暮れる冒険者達とは生活環境が違いすぎるもの」


「魔物は倒しきらずに、程々に残しておくべきだったのよ。

 どういうわけか、人間が強くなる為には魔物達が必要なのだもの。

 魔物も資源と同じよ。

 考え無しに狩り尽くしたから、この国の中心部は平和と引き換えに力を失ったの。

 だというのに、誰も動こうとしない。

 精々、時たま遠征して集団で狩りをする程度。

 そんな事で得られる力なんてたかが知れているわ」


「安穏と、そんな仮初の平和を享受し続けているの。

 いくら何でも平和ボケし過ぎよね。

 隣国から攻められたらどうするつもりかしら」



「冒険者ギルドって他国には無いの?」


「あるわよ。

 仕組みは全然違うみたいだけど。

 この国を反面教師にして上手くやってるみたい」


「魔物との共存を?」


「ええ。そういう事よ」


「随分と話が大きくなってきたわね」


「そうね。

 けれど問題は、今の話だけじゃないわ。

 王都には巨大で凶悪なスラム街があるわ。

 このスラムが根絶できないのも、この件が関わってるの」


「王都には今も変わらず、国中から仕事を求めて若者がやってくる。

 そいつらは、冒険者になろうって者だけでもないけれど、ある程度の旅に耐えられる程度の力はある。

 中途半端に力を持った無謀な若者達が、王都で碌な仕事にありつけず、さりとて今更地方に出向く気力も無く、盗賊や乞食になるのよ。

 スラム街はそんな奴らが集まってしまう。

 彼らが国に牙を剥けば、平和ボケした兵士達では守りきれないかもね」



「そもそも今の冒険者ギルドって国営なの?

 なんだか国の都合にも振り回されてるみたいだけど」


「実質的にはね。

 さっきも言った通り、元々はただの傭兵団だった。

 けれど、国中に広がる程の組織が、国の介入を免れるなんて不可能だもの」


「ホノカ様は貴族でいらしたのですか?」


「え?そんな事無いけど」


「フィオ、次に余計な事聞いたら放り出すわよ」


「すみません……」


「ああ!ごめんね、フィオちゃん!

 そうよね、私が余りにも世間知らずだから気になっちゃうわよね!」


「ホノカも、余計な事言うんじゃないわよ」


「うん、まあ、話す気は無いんだけどさ。

 でも、気にしないでね、フィオちゃん。

 こんな事で放りだしたりしないから」


「ありがとうございます、ホノカ様」


「勝手な事ばっか言ってんじゃないわよ。まったく」


「ミアちゃんもごめんね、気を使ってくれてありがとう」


「それがわかってんなら、無駄に反抗すんじゃないわよ」


「反抗だなんて言わないでよ。

 私達は対等のパートナーでしょ?」


「パートナー?」


「ごめん、間違えた、今の無し。

 いや、無しって言うか、ミアちゃんが考えてるような意味じゃなくてね」


「ダメよ。取り消させはしないわ。

 告白にしては味気なさ過ぎるけど、まあホノカがその気になってくれたのなら、良しとしましょう」


「だから違うってば、家族、相棒、それだけだよ。

 決して恋人とかじゃ無いんだからね」


「もういきなり伴侶になりたいだなんて。

 ホノカったら積極的ね。

 王都に着いたら指輪を買いに行きましょう」


「違うってば!」

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