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05-13.思い込みの罠

「それで、フィオちゃん。

 あなたは本当についてくるつもりなの?」


「もちろんです、ホノカ様。

 ようやくホノカ様が決心して下さったのです。

 この好機を逃すわけには参りません」


「そもそもフィオちゃんはそれで良いの?」


 フィオちゃんは父親の件で不貞や多重婚を嫌悪していたはずだ。

私とミアちゃんだけだからギリギリ許容できるのかと思っていたのに。



「私はホノカ様を信じています」


「……フィオちゃんは変わらないんだね」


「当然です」


「なら、フィオちゃん。

 一旦家に帰りなさい」


「何ゆえ!?」


「私はリリさんを裏切るつもりはないの。

 だから今はまだフィオちゃんには手を出せないよ」


「そんなぁ!?」


 さっきは後でねとか言っちゃったけど。

まあ、うん。冷静に考えたらマズイよね。

ただ旅に付いてくるだけならともかく。

せめて先に、リリさんと話をしないとだ。



「あ~あ。

 フィオちゃんが余計な事さえしなければな~。

 ハーレム状態じゃ無ければ、フィオちゃんと一緒に旅したかったのになぁ~」


 言いながらアイちゃんとダフネを両腕に抱きしめてみた。



「な!?」


「フィオちゃんだって嫌でしょ?

 私が他の子達とイチャイチャしてる側で指を咥えて見てるなんて」


「くっ!!」


 ふふ。葛藤してる♪

さあ、フィオちゃん。

今はお帰り。

何時か必ず迎えに行くから。


 お陰様で今の私にはやるべき事が盛り沢山なの。

先ずはハーレムを安定させるのが先決なのよ。

アイちゃんは相変わらずお人形さんだし。

ダフネは良い子だけどちゃんと理解しているかは疑問だし。

ミアちゃんとルフィナは色々整理が必要だろうし。


 それもこれも、全部フィオちゃんが悪いんだからね。

お陰でルフィナとダフネの問題は有耶無耶になったけどさ。



「…………嫌です」


「聞き分けて、フィオちゃん」


「嫌です!離れません!

 ちゃんと許可も貰ってきました!信じて下さい!」


「だからそういう話じゃないんだってば」


「いいえ!そういう話です!

 お姉ちゃんとの話はついていると言っているんです!

 私は何れホノカ様ミア様に嫁ぐ事を許されているんです!

 ですからどうか!お側に置いて下さいませ!!」


「……対価は?」


「は?」


「フィオちゃんは代わりに何を支払ったの?

 あのリリさんがすんなり許可するわけないじゃん。

 リリさんの頑固っぷりは私達だってよく知ってるんだよ?

 そこまでちゃんと話してくれないと信用できないよ」


「…………今はまだ話せません」


「どういう事?」


「話せません」


「じゃあ帰って」


「帰りません」


「アイちゃん、」


「お待ちを!!」


「話す気になった?」


「……お姉ちゃんに差し出すのは私自身です」


「どゆこと?」


 そゆこと?

もう美味しく頂かれちゃった後なの?

でもリリさんがいくらシスコンだからって、こんな短期間でフィオちゃん食べちゃおうとはならないでしょ?



「私が先んじてホノカ様の下に潜り込んだ後、お姉ちゃんを引き込む手筈でした……」


「……」


「……」


「フィオちゃん」


「あくまでお姉ちゃんの目的は私だけです。

 お姉ちゃんはホノカ様を当て馬にするつもりなのです。

 流石に妹に直接手を出すのは憚られるので、ホノカ様を介して私を愛するつもりなのです」


「……」


「……」


 この変態姉妹め……。

と言うか、リリさん開き直り過ぎでしょ?

憎さ余って可愛さ百倍なの?

もうそこまで進化しちゃってたの?

いくら何でも覚悟決まるの早すぎない?

いや前回会った時も危ない感じはしてたけどさ。



「それを聞いて、私が受け入れると思うの?」


「……」


 またこの子は……。

焦らず一度体勢を立て直してから来ればよかったのに。

本当にフィオちゃんは変わらないなぁ。



「リリさんのそのやり方、二人の嫌う父親と何が違うの?」


「……」


「リリさんはもう少し賢いと思ったんだけどなぁ。

 うん?そっか違うのか。そうじゃないのか。

 フィオちゃん。正直に答えて。

 真意の部分って、リリさんが明言した事じゃないよね?」


「……えっと、はい」


 つまりフィオちゃんはまた勝手に思い込んでるわけだ。

もしくはリリさんにそう思わされたか。


 かと言って、リリさんの目論見が他にあるようにも思えない。


 少なくとも、私達の下へリリさんを引き込むって条件で許可を貰ったのは事実なんだろうし。

全部を言葉にしていないなら、約束が成立しない。

フィオちゃんの事だから、勝手に成立したものと思い込んでしまっている可能性も無きにしもだけど。


 いやいや。

私まで思い込むのはよくないぞ。

フィオちゃんだから早とちりするはずなんてのは、私の思い込みとも言えるわけだ。


 全てフィオちゃんの言った通りなのかもしれない。



「アイちゃん。

 リリさん呼んできて。

 一度話をするべきだと思うの」


「お待ちを!!」


「なんでよ、フィオちゃん。

 何かやましい事でもあるの?」


「それは!……ダメなのです。

 悟られたらそこまでという約束なのです……。

 何も為せずに帰っても同様です……。

 その時はホノカ様を諦めると約束してしまったのです……」


「フィオちゃん……」


 なら何で言っちゃうのよ……。

あなたそんなんで商談とか出来るの?

ちょっと追い詰められたからってボロボロ喋っちゃって。


 さて。この状況はどうしたものかしら。

十中八九、リリさんの真の目的はその最後の約束だ。

フィオちゃんなら簡単にボロを出すと踏んでほくそ笑んでいた事だろう。

道理であっさりと送り出してきたわけだ。

というか、前々から話は付いていたのだろう。

フィオちゃんが手ぶらで帰って来るのを今か今かと待ち構えている事だろう。


 最初からフィオちゃんを手放すつもりなどなく、一人で愛でるつもりなのだ。


 ……面白くない。

これはちょっと面白くない。

要はこれ、私が侮られたって事だ。

私達ならフィオちゃんの秘密を暴いた上で送り返すと信じて罠を張ったのだ。

私達とフィオちゃんの約束を知っていて、横取りしようとしたのだ。


 むむむ。ダメだこれは。

昨日までの私ならリリさんの思惑通りに動いていただろう。

けどフィオちゃんはもう私のだ。

リリさんは私達の現状を読み違えた。

私達がわずか九歳のフィオちゃんにすぐに手を出すはずは無いと信じているのだ。

常識的な判断で、非常識な存在は測れない。

今の私は一味違うのだ。



「ならフィオちゃん。

 リリさんに伝言お願い。

 リリさんの事も歓迎するわって。

 何れ迎えに行くから準備をしておいてって。

 私達の現状も添えて伝えてきて。

 それから、フィオちゃんは返事だけ貰って帰ってきて」


「ホノカ様!感激です!!」


「アイちゃん。

 決してリリさん本人をこっちに連れてきちゃダメだよ。

 必ずリリさんとのやり取りはフィオちゃんを介してだよ。

 商人とまともにやり合っても勝てるわけ無いからね」


「ふふ。良いですね。

 まさかホノカがそのように好戦的になるとは。

 どのような勝負であろうと、勝つ意思は大切です。

 良いでしょう。ボクの事も好きに使いなさい。

 ホノカの容赦の無さを見せて下さい」


「そんな事はしないよ。

 私は本当にリリさんの事も歓迎するつもりだもの。

 後は全てリリさんの出方次第だよ。

 好意的な返事なら何もしない。

 何れリリさんの事も迎えに行ってあげる。

 けれどそうでないなら、フィオちゃんを賭けて戦う事も辞さないよ」


「ホノカ様!!」


 ふっふっふ。


 ふぅ……。


 どうしよう……。


 なんか勢いで言っちゃったけど、リリさんが本当に乗り気になっちゃったらどうしよう……。


 私もどうやら気持ちが不安定なようだ。

こんな挑発紛いの誘いにあっさり乗ってしまった。

リリさんにとっては、それも策の内かもしれないのに。


 ぐぬぬ……。

やらかしたかも……。


 やっぱり今からでも……もう行っちゃった……二人とも。



「ホノカ?」


 ダフネが私の葛藤に気付いたのか、心配そうに覗き込んできた。


 私は取り敢えずダフネを抱きしめた。

ああ。なんだか少し気持ちが落ち着いた気がする。


 さて、ミアちゃん探しに行くか。

こういう時はミアちゃんに頼る他あるまい。

それにミアちゃんの許可なしで進めていい話でもない。


 ミアちゃんには何れハーレムの主を代わってもらうんだ。

私は泣き虫ミアちゃんより、私を困らせる程調子に乗ってるミアちゃんの方が好きなんだ。

それにやっぱり、私には荷が重いもん。

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